春、桜の木の下で

さかな

第1話 春

 春、それは始まりの季節である。 

今日、4月1日僕は京都市にある桜野ヶ丘高校に入学した。    

僕の名前は真田俊、どこにでもいるしがない高校生である。そして 

「おーいしゅーん」 

こいつが米原凛、そして  

「おはよう俊」 

こっちが幼なじみの河原圭斗、凛とは中学から、圭斗とは幼稚園からの馴染みだ。 

「おはよう凛、圭斗」 

そう二人に挨拶した時に道の脇にある桜の木の下に人がいるのに気がついた。 

長く澄んだ黒髪に聖母マリアを連想させるほどの優しい瞳、10秒ほど見入ってしまった。 

「誰?あの可愛い子」 

そう凛が尋ねたが当然僕らが知るはずもなく、一旦その場を後にして入学式へと向かった。 

 

 入学式が終わり、クラス発表があった。僕らは皆1年2組で同じクラスだった。今日の予定は後HLでお終いだ、そう思って2組の教室に向かっているとまたあの子に出会った。 

「すいません、これ落としましたよ」 

そう声をかけられた。

「すいません、ありがとうございます」 

ハンカチを落としたのを拾って渡してくれたのだ。そして可愛いなや名前何て言うのだろうと考えているとかってに 

「名前なんですか?」 

と尋ねてしまった。

彼女はひょんな顔をしながら答えてくれた。 

「宮花鈴音です。宮大工の宮に花に鈴の音と書きます」 

僕は慌てて 

「真田俊といいます」  

すると宮花さんは 

「よろしくね真田くん」 

と言ってその場を去って行った。 

「やるじゃねーか!俊見直したぜ!」 

圭斗が言ってきた。 

「からかうなよ。別にそんなんじゃねーし」  

「何ばかなことやってんのHLに遅れるわよ」 

凛があきれたように言った。 

  

HL

「知ってる人全然いないよな」

や 

「どこ中?」 

などまだクラスに初々しさがあった。そう感傷に浸っていると先生がやってきて 

「皆んな、席に座れ。ホームルームを始める」

その一言でみんなが前を向いた。 

「まず最初に先生の名前は山代透だ。1年間2組の担任となった!よろしくな!」

「次に皆んなの自己紹介をしてもらう。じゃあまず1番から」 

「はい1番の」 

と自己紹介が続く中、宮花さんの番が来た。

「16番、宮花鈴音です。雀西女学院から来ました。1年間よろしくお願いします」

宮花さん同じクラスだったんだとおどろいていると自分の番が来た。

「はい30番、真田俊です。桜ノ第一から来ました。1年間よろしくお願いします」 

自己紹介が終わると教科書が配られ、あとは帰るだけだった。 

「俊、凛帰るぞ」 

と圭斗が言ってきた。そして廊下に出ると圭斗が小さな紙を渡してきた。 

「なんだ?これは」 

そう尋ねると圭斗は 

「鈴音ちゃんの連絡先だよ」 

と言った。 

「鈴音ちゃんの友達らしき人からもらったんだ。俊欲しくても自分からいえないだろ?だからもらってきてやったのさ!」  

余計なお世話だと言いつつも内心はすごく嬉しかった。

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