第9話 戦いと祝い事

 恭介君のいじめが発覚してからという物、私達夫婦は学校側と連携しどうにかして安全な環境を作ろうと毎日考えていた。特に恭一郎さんは教師という事もあり、毎日恭介君の通う小学校に仕事帰りに立ち寄っては、毎日教師たちに抗議をしているらしくて帰ってくる度に難しい顔をする様になった。

「帰ったぞ。」

「お帰りなさい、恭一郎さん。今日はもう夕飯出来ているから時間出来たら食べてください!それから私も恭介君の事について色々考えた事があって、もし良かったら話を聞いて貰えませんか?」

「構わん。」

「学校側に講義をするのも良いかと思うのですが、やはり一番効果があるのではと思うのは本人たちに問い質す事だと思います。この際親を通してでも構わないと思ったのですがそれでは効果が無いと思いまして、やはりここはどうしてこうなったのかをいじめた本人から言わせるのが効果覿面なのではと思ったのですが、恭一郎さんは如何ですか?」

「その方が確かに妥当かもな。だがそうなると俺が休暇を取らないと小学校には行けないが、恭介の為なら休まざるを得ないな。丁度この時期は試験明けという事もあり採点で忙しいが、俺はもう既に終わらせてあるから有給は取れる。それに・・・問い質す事自体は俺は普段から生徒に対して日常と化しているから、得意分野ではあるからな。」

「ありがとうございます!私も行けたら良いのですが恭介君のケアをしないといけないので今回は恭一郎さんにお任せしますが、くれぐれも相手は小学生なのであまりそこまで怖い事しないで上げてくださいね?」

「俺もそこは重々承知の上だ。早速明日にでも事情を聴きたいから今から小学校に連絡を取る。結衣、申し訳ないが藤城学園に連絡をして俺が休む事を伝えて欲しい。」

「分かりました!」

スマホを取り出し連絡を取ろうとした矢先、いつの間にか私の近くに恭介君が居て私の事をじっと見ていた。

「恭介君?」

「お母さんとお兄ちゃんを巻き込んじゃってごめんね?僕が情けないからこんな事になっちゃって、お兄ちゃんもお休みを取らないといけないんだよね・・・。」

「そんな事無いよ!私達は恭介君の為に動いているからそんな事気にしないで、恭介君はこれからも登校出来る様になるまで私と一緒に居ようね。」

そう話した後私は直ぐに藤城学園に連絡を取った。すると電話に出たのは予想外の人物だった。

『はい、藤城学園教師の如月です。』

『あ、もしもし。私そちらでお世話になっている真山恭一郎の妻の者ですが・・・。』

『あー、お世話になってます!・・・って真山の妻って事はもしかして佐々木結衣?』

『そうですけど・・・。もしかして如月君!?』

『そうだよ!久し振りだな!まさかこんな形で話す事になるとは思わなかったけど、相変わらず元気そうで何よりだ。ところで何か用があって連絡してきたんだろ?』

『連絡なんだけど真山先生が明日だけ有休をとりたいって言ってたから、真山先生の学年の先生方に伝えて欲しいな。』

『あの数学教師が有給なんて珍しい物もあるんだな。分かった、伝えとく。俺なら今教育実習期間でいつでもいるから遊びに来いよ!じゃあまたな。』

『うん!』

少しだけかつての仲間とお話しする事が出来た。まさか如月君が教育実習生として藤城学園に居る事は知らなかったし、普段からのあの態度で教育実習が出来る様になるなんて意外だったなー。

「連絡取れました。恭一郎さんの方は大丈夫ですか?」

「こっちも連絡は取れた。有休も取れた事だし明日は俺は早速小学校に行って、今回のいじめの件について話をしてくる。」


 そしてその日の夕食後の事だった。いつも通り家事をしながら恭介君の面倒を見ていると、急に吐き気がしてその場にうずくまってしまった。

「結衣、大丈夫か!?立てるか?」

「はい、すみません。ちょっとトイレに行ってきます・・・。」

案の定トイレに行くと吐いてしまった・・・。まさか妊娠?確かに恭一郎さんとはそういう事はしたけど、もしもそうだとしてもこんなに早く反応が出る物だっけ?取り敢えず妊娠検査薬で確かめないと・・・。

10分後、やはり妊娠している事が確定した私は恭一郎さんに伝える事に。でもやっぱりこういう時ってどうなんだろう。ましてや今は恭介君の事で精一杯なのに、今ここで報告したら恭一郎さん喜んでくれるのかな?

「ただいま戻りました・・・。」

「大丈夫か?」

「はい、何とか。・・・恭一郎さん、恭介君。実はちょっとこのタイミングで報告したい事があるので聞いて貰えませんか?」

「俺はもう大体予想が付いているが恭介もきっと聞きたい事だろうから、今この場で話しても俺は受け入れる。」

「・・・妊娠しました。」

「にんしん?」

「子供が出来たっていう事だ。つまり恭介に下の子が出来る。これは喜ばしい事だから、こういう時は喜ぶものだぞ。」

「・・・僕に弟か妹が出来るの!?」

「そういう事だ。嬉しい事だろう?恭介はお兄ちゃんになるんだ。」

「うん!お母さん、妊娠してくれてありがとう!」

「恭介君・・・!」

「結衣、俺との間に子供を身籠ってくれてありがとう。これからも恭介と同じくらいの愛情をお腹の子にも捧げていくし、結衣にも捧げていく。俺も父親としての自覚をもっと高めないといけないから、少し忙しくなるかもしれないが俺はこの事は決して嫌だとは思っていないし嬉しい事だと思っている。改めて妊娠おめでとう。そしてこれからもよろしく頼む。」

「恭一郎さん・・・!」

「結衣の友達にも連絡をしてこなくて良いのか?」

「茜に連絡してきます!」

こうしてリビングを去り寝室で茜に電話を掛けた。

『もしもし、茜?今ちょっとだけ良いかな?』

『結衣!どうしたの?』

『実は今日ね、妊娠が発覚したの!』

『ほんとに!?おめでとう!・・・真山先生にはもう報告済み?』

『うん、喜んでくれた。それに恭一郎さんの弟君の恭介君も、最初は困惑していたけどちゃんとお祝いしてくれた。』

『恭介君っていう子も一緒に居るんだ?でも二人からしたらお腹の子は初めての子供になるんだから、今からがとっても楽しみだね!』

『そうだね。それにもしかしたら茜との子供さんとも同級生になるかもしれないし、そう考えたらもっと楽しみが増えるね。』

『うんうん!・・・あっ、郁人さんが呼んでるから電話切るね。今日は報告してくれてありがとう!またいつか会おうね。』

こうして電話が切れた。茜も喜んでくれたしこのままの流れだと若桜先生にもお話が行きそうだな。いつかまた皆で飲み会なんて出来たらどんなに楽しいんだろうな。

「妊婦になった以上は結衣に無理はさせられない。恭介の事は俺に任せて、これからは無理のない範囲で家事をして欲しい。プレッシャーやストレスになる様な事があるとあまり身体に良くないし、お腹の子にも良くないからな。」

「はい。」

「お母さん、僕も何かお手伝い出来る事あれば言ってね!」

「恭介君ありがとう。でも今は大丈夫だからね。」

こうして私は妊婦になりこれからの生活にはいつも以上に気を付けないといけなくなったので、恭一郎さんと恭介君には迷惑かかってしまう。なのでせめて家事でも頑張って無理のない範囲で活動しなきゃ!

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真山恭一郎の結婚生活 月猫 @tukineko-neko

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