第17話
「それであの殺人事件が起こっていたと……」
「そう。鬼はもともと闘争本能の固まりだ。それは子供でも変わらない。だから狂った状態のこの子に会った人間は全て殺されたんだ。人一人殺すことによってようやく落ち着き、正気に返って鬼の世界へ戻ってくるんだ。それで今、この騒ぎになっている。騒ぎが大きくなれば、私たち鬼にとっても都合がよくない。だからこの子を探していたんだ。それにしてもおまえは本当に不思議だな。狂ったこの子に会っても殺されなかった。それにおまえが今目の前にいるために、まだ人を殺していないこの子が、こんなにも落ち着いている。この子に心底好かれたようだな」
「……」
「この子は適当に道を作って、いつもこのあたりに道ができていたようだな」
「その子をどうするんだ」
「もちろん連れて帰る。そして今後二度とこんなことが起きないようにする。満月の殺人も今日で終わりだ」
すると鬼が片手を小さくふり始めた。
するとそこに直径一メートルくらいの丸く黒い空間が現れた。
「これが道だ」
そういうと鬼は、わが子をそこに押し込んだ。
女の子は消えていなくなった。
鬼が言った。
「娘にこれほどまでに気に入られる人間に会えてよかった。私ももう帰らせてもらう。おっとその前に」
鬼はその両手で雨宮の頭を左右からつかんだ。
「!」
雨宮はあまりの激痛に動けず、声も出なかった。
「さっき言っただろう。満月の殺人も今日で最後だと。残念ながらおまえは死んでもらう。鬼を見たなんて騒がれたら面倒だからな。娘のお気に入りだが、そんなことは関係ない。昔から人間は言うだろう。卑劣な人間のことを鬼みたいだと。それは正しいのさ。それが鬼なのさ」
鬼は両手に力をこめた。
雨宮の頭は完全につぶされてしまった。
返り血を浴びて血だらけになった唇をなめながら、鬼が次元の道に入った。
そしてその道が消えた。
終
ルナティック ツヨシ @kunkunkonkon
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