第4話 傷ついた世界
そして、リナは遠方の後続車両にめがけて正拳突きを放つポーズを取った。
「はい、ロケットパーンチ……ポチっとな」
覇気なく必殺技名を吐き捨てたサトネは、何かしらのコンソールのボタンを押した。するとフィールドブレイズ1号機の右腕から破裂音が轟き、二の腕より先が射出されたのである。その様は、まさに往年のスーパーロボットの必殺技であるロケットパンチたるものであった。
「!?」
そのパンチを放ったリナ自身も驚いてはいたが、誰よりも驚いていたのは後続車のドライバーであろう。突然の予期せぬ飛来物。というより、前方車からの積み荷の落とし物。なんとか避けようと咄嗟にハンドルを切るも、勢い余って横転。更に後方を走行していた追手を巻き込む形で全車クラッシュという、なんともな結末となった。
「よーし、成功成功」
「……何がどうなったんだ、これ?」
さも当然の結果と言わんばかりのサトネに、リナはこれまた当然の問いを口にした。
「正拳突きのポーズで右腕が伸び切った瞬間に、関節パーツの固定具を遠隔で外しただけや。どうせ右肘から先は交換せなあかん程のダメージやったしな」
右腕のダメージと聞いて、リナには思い当たるフシがあった。工場での襲撃時、国連軍兵が放ったロケット弾を右腕のみにシールドで弾いていた。おそらく、その時に関節にダメージが入ったのだろう。
「……なるほど。さっすが、アタシのサトネだ、まいったよ」
後方では横転した国連軍の車輌に後続車が追突。爆発音とともに立ち上る炎と黒煙が見えた。他の追跡車は急ブレーキをかけて停止したようで、さらなる追手の姿は見えなかった。
「とりあえずは……安心かね?」
「あぁ、そうだな」
その様子を、フィールドブレイズ1号機のモニター越しに確認したリナは、ほっと息をついた。サトネもようやく緊張の糸を解いているようだった。
「けど、まだ安心できない。次のトンネルまで急ごう」
「了解。もっとスピードを上げるで」
トレーラーは再び加速し、次の目的地に向けて突き進んだ。リナとサトネは心の中でお互いを信じ、これからの戦いに備えながら進み続けた。追手が再び現れるのは時間の問題だったが、二人の絆と決意は固かった。
夢次元機アルマエレンシア 里奈加ひびき @hibiki_linasha
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