第3話 牙をむく炎

「説明してる暇……はないか。リナ、ええか?とりあえず合図したら追手さんめがけて一発ドツく構えしてんか」


「つまり殴りかかれってかいうのか?たしかにそうすりゃ精密な照準もクソもないけど……そんな距離まで近づけさせるのは危なくねえか?」


「大丈夫、タイミングはこっちで見る。構えだけでええから。ここは一発、正拳突きでたのむ」


「わ、わかった……!」


すると、サトネは2号機のコンソールから1号機のシステムチェック画面をひらき、なにやら遠隔操作をはじめた。


その間にも国連軍車の激しい追跡は距離を詰め、弾幕は濃くなっていく。


「ちっ、なんか追手の奴ら増えてねえか!?」


国連軍の車両が2輌、3輌と続々追いついてくるようだ。


「よし、こんなもんか。リナ、準備はええか?」


サトネは1号機のダメージコントロールシステムから右肘関節の項目にアクセスし、サーボモーターユニットをロックする項目に手をかけた。


「あ、あぁ。でもまだ距離はだいぶあるぞ……?」


国連軍車両は後方50m程だろうか、そのくらいの距離に迫ってはいた。しかし、いくら巨大ロボットとはいえ直接格闘攻撃が届く距離ではない。


「かまへん、いくで正拳突き。せーの3、2、1……」


「ちょっと!」


しかし、そんな心配を他所にサトネは有無を言わさずカウントダウンに入った。


「ええい、ままよ!」


こういう強引なシーンで、サトネが間違った判断をしたことがあっただろうか。よく思い出すと微妙にあったかも知れない。だが今は彼を信じるしかない。


リナは覚悟を決めた。

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