転生したと思ったら、勇者の力を手に入れました!?

コガイ

第1話 自己紹介もできずに死にました。これが死亡RTA!? 多分これが一番早いと思います

 僕の名前は……って


「危なーーい!!」


 そして、僕は死んだ。

 最後に感じたのは衝撃。痛みも何もない。ただ、人の声が聞こえたような……






「ほうほう、女の子を庇って死ぬとは、お主なかなか良い心を持っているようじゃな。

 お前に力を与えて、異世界で第二の人生を送らせてやろう」


 え!? たくましい白髭を蓄えたおじいちゃん誰!? っていうかなんで雲の上に……


「まあ、説明は面倒……もといあまりしてはならぬのじゃ。

 ではの、次世代の勇者よ……」


 ちょ、ちょっと待ってよーー!!!




 僕の中で何かが駆け巡る。

 それは一人の人生だった。一瞬だったような一生だったような。

 生まれて、友達ができて、遊んで、特訓して、強くなって、そして誰かを倒す。

 それはまるで、僕の一部となるように、僕へと入ってくる。





 気がつくと、僕の目の前は青い空でいっぱいだった。気持ちいい風が頬を撫で、体は草原のベッドで横になっていた。


「あれ、僕は車に轢かれて死んだんじゃ?」


 僕は体を起こして、体をペタペタ触る。

 何にも変なところは……ない。けど、なんでだろう?服がちょっと変わってる……それになんだか筋肉がついたみたい……?


「助けてーー!」


 え? 遠くで少女らしき声が聞こえる!

 どうやら、何かあったみたいだ!


「誰か知らないけど、今行くぞ!」


 叫び声が聞こえた方向に走る。

 そうすると、遠くの方で煙とそれが登っているところに村があった。

 にしても、結構軽快に走れるなあ。足もすごく速くなってるし、視界がグングン後ろに流れて行く。


「誰かーー!」


 っと、そんな事は置いといて。

 村に近づくとそこには水色の髪が綺麗な女の子が、見たこともない全身緑色の怪物に襲われてる!


「今僕が……って武器も何にも持ってないよ!」


 思い出したよ! 助けに来ても助ける手段がなかったよ!学校のモップとか、あれば良かったけど……


「ゲヘヘ! 死ねぇい!」

「キャアアアア!」


 まずい! 女の子が殺される


「ええい! こうなったらやってやれ!」


 なんとか女の子を助けるためだ! ダメ元だ!

 僕は無我夢中で腕を振ってみた!

 ……すると、


「ぎゃあああ!!」


 緑の怪物は真っ二つになっていた。


「……あれ? 痛くない……?」


 殺されると思っていた女の子は不思議そうに周りを見渡す。

 不思議なのは僕も同じだ。右腕を振っただけで怪物が真っ二つに……


「あれ? なんで僕こんな物持ってるんだ?」


 気がついたら、僕の右手は僕の身長よりも大きい剣を持っていた。

 しかもこの剣なんだかとっても……


「とってもカッコいい!」


 すごい、すごい! おっきいし、なんだか赤い宝石みたいなのがついてる!

 それにこの宝石なんだか、綺麗だなあ。


「貴方が……助けてくれたんですか……?」


 と、すっかりこの女の子のことを忘れてた。


「ああ、そうだよ。悲鳴が聞こえてきたからね」

「あ、ありがとうございます……ってそんな場合じゃないんです! 

 まだ村のみんなが襲われてて! それで……!」

「わ、分かった!分かったからそんな服を掴んで体を揺らさないで〜〜!」

「ご、ごめんなさい!」


 女の子の拘束から解放されたけど、まだ頭がクラクラする……


「そ、それで助けてもらった身でこんな事をいうのもおこがましいんですけど……村の人たちも助けてください!」

「うう、オッケイだよ……」

「返答速いですね!? しかも頭フラフラしながら!? 大丈夫ですか!」

「大丈夫……大丈夫。ふう、やっと落ち着いてきた。

 安心してね。僕が必ず助けるから!そうと決まれば早速……で、どっちに向かえばいいんだ?」

「いや、分からないんですか!」


 僕のおっちょこちょいに、女の子はどこかの劇団ばりにずっこける。


「あっちです! あっち!」

「よしあっちだな!」


 女の子の指差すほうに走っていく。

 そういえば、そっちの方向に何か感じるな。こう、気配というか力というか。今まで感じた事なかったから、ちょっと違和感がある。

 そして、ずっと走っていくとそこには、


「くっ……これまでか!」


 何人かの鎧を纏った戦士らしきおっちゃんたちがいた。

 しかも、絶対絶命のピンチのようで、さっきと同じような緑の怪物が襲っていた。しかも、その数がめちゃくちゃ多くて、二十匹ぐらいもいた。


「グハハ! 貴様達は死ぬ運命にあるのだ!」

「そうはさせるか!」


 今おっちゃんたちが襲われたら危険だという事で、僕はあえて大声で名乗りを上げる。

 これで怪物達の意識を僕に集めさせる。


「なんだあ? ずいぶんチビでヒョロっちい奴が来たなぁ〜」

「チビ……? 僕をチビって言ったな!!」


 それは僕にとって聞き捨てならない言葉だ!!


「死ねぇ!!」


 僕は一瞬にして怪物達の横を通り過ぎる。


「ああ? なんだ、チビって逃げたのか! ガハハハ!」

「なんだよ! ただの腑抜けだったか! ギャハハハ!」


 怪物達は何が起こっているのか分からないようで、呑気に高笑いしている。

 けど、そう。あえて言葉を借りるなら。


「君たちはもう死んでいる」

「へ?」


 その瞬間、怪物達全員は真っ二つになり、そこから血が吹き出てくる。

 この技は斬られたことすら相手に悟らせない。名付けて、


「これが瞬殺剣だ!」


 まあ、名前は今つけただけだし、ただの即興技なんだけどね。


「な、なんだ? 助かったのか?」

「あの子供が怪物達を倒したのか?」

「だったら、あの子は救世主だ!」


 戦っていた村人や、襲われていた人たちが僕の元へと集まり、感謝をしたり、英雄みたいだと言ってくれる。


「い、いやあ何だか照れるなあ」


 何だかそんな事を言われるとちょっと照れてしまい、なんとなく頭の後ろをポリポリとかいてしまう。

 けれども、


「な、なんだあれ!」

「あ、あいつは……に、逃げろー!」


 村人達は絶望の顔で逃げていく。

 しかも、さっきよりも何か恐ろしいものがあったかのように。

 一体なんだろう? まさか俺って事は……


「ギャオオオ!!」

「って、うわああ!」


 なんか叫び声が聞こえたと思ったら、後ろから炎が!


「熱い! 熱い! ……あれ、熱くない」


 確かに炎に襲われたと思ったんだけど……


「ってそんな場合じゃない!あれは……」


 僕は後ろを振り向く。そこには……


「ギャオオオ!!」

「ド、ドラゴンだ!」


 十メートルもある巨大なドラゴン! 黒い鱗に包まれた体に、悪魔のような大きな翼、そして、頭についた何本ものツノ! それは俺にとって


「カッコいい! すげぇカッコいい!」

「グギャア!」


 なんて言ってる場合じゃなかった!


「うわあ!」


 ドラゴンは前足を使って僕に攻撃し、吹っ飛ばしてきた!

 そのせいで、後ろにものすごく吹っ飛んでしまった。


「うう、痛く……ない。やっぱりそうか!」


 ここで、やっと僕は気づく。

 この体が目覚める前とは違うことに!


「よっし。ドラゴン! お前の攻撃なんか怖くないぞ!」


 僕は体が軽くなっている事を利用して、ドラゴンまで一気に近づく。


「食らえ!」


 そして、ドラゴンの頭にこの剣を突き刺す!


「って、硬い!?」


 ……事はなかった。


「ギャオオオ!」

「うわっ!」


 ドラゴンは反撃と言わんばかりに頭を振り、頭突きをぶつけてくる。


「くそー、剣が鱗に弾かれるんじゃ、攻撃が効かないもの同然じゃないか。しかもあの鱗、全身にくまなくついてるし……」


 こんなの勝ち目がない……?


「あの剣、それにあの金髪……まさか、あの人は」


 と、村人の一人が何かに気づいたような素振りをする。


! 貴方ならあの伝説の魔法を使えるはずです!」

「え!? 魔法!?」


 そんなの初耳だよ!


「……けど、他に手もないし、やってみるか」


 僕は体の……こう力を貯めるようなポーズをしてみる。

 剣を両手に持って、顔の前で構える。そして、なんとか『魔法が使えるようになれ!』と強く念じてみる。

 そうすると、


「みんな見て! 空が……!」


 村人の声につられて、僕も空をみる。

 そこにはなんと黒い雷雲が僕の頭上に集まってきていた。

 しかも、体の中で魔力らしき何かが渦巻いているのも感じる。


「これが……僕の力……!」


 そして、これから何をやればドラゴンを倒せるのも頭が理解していく!


「カミナリよ! 僕に、魔を払う力を!」


 構えていた剣を天に突き刺すように力強く掲げる。

 すると、空を包む雷雲から剣に雷が打たれる。


「きゃああ!」

「そんな! あの子に雷が!」


 村人達は僕が、雷に打たれ丸こげになったと思っているだろう。けれども違う。


「あ、あれは!」


 僕が持つ剣。いいや、全身が雷の力が宿り、ドラゴンを倒すための準備が整う。


「ドラゴン! これで決める!」


 大きく宣言をして、僕の体は大きく跳躍する。まるで空へと届きそうなほど高く。

 今からこの一振りで、全てがひっくり返る。その名は……


「ボルテックス・ブレイク!!!」


 僕の声が轟くと同時に、剣がドラゴンへと振り下ろされる。

 剣の斬撃だけじゃなく、それが包む雷もドラゴンを襲う。鱗を貫き、その身を焼き切る。全身に電気が伝わり、無事である部分は無いはずだ。けれど、


「グギャアア!」

「まだ動けるの!?」


 ドラゴンはまだ動けるようで、最後の力を振り絞り、僕に噛みつこうとする。


「けど、こっちだって!」


 僕にもまだ隠し玉はある!


「雷雲よ!」


 僕は雷ではなく、それを生み出す雷雲で攻撃する。しかも、ただ当てるわけではなく、


「生き物は内側が一番弱いんだ!」


 噛みつこうとするドラゴンの口の中へと、放つ。


「グガッ……!?」


 それには流石にドラゴンも不意を突かれたのか、変な声を出す。けど、その声は雷雲によって塞がれる。


「これで、最後!

 ディスチャージ・クラウド!」


 技名を叫ぶとともに、ドラゴンの内側から電気が放電されていく。

 それは太陽さえも眩む光で、巨大なドラゴンでさえも、余裕で包まれるような雷であった。


——グゴ……よくぞ、我を倒してくれた。礼を言うぞ。


 そんな中で、僕の頭に声がが響く。しかも、それはドラゴンの声だと言うことが、何故か分かった。


——礼だ。我の力、汝に貸そうではないか。


 そして、雷に焼かれたドラゴンの体は光となり、僕の中へと入っていく。

 こんな感覚、どこかで感じたような……


「……ああ、そうか。君、本当は優しい奴だったんだな」


 ドラゴンを体に取り込んだことで、彼の記憶が受け継がれる。

 この世界の秩序のために生まれ落ちたこと。悪になりたくてなったわけではないこと。そして……


「大丈夫、僕が守るから」


 だからこそ、僕は宣言する。この世界を、人間を守っていくと。





 よければ、作者のページからツクモ!という作品も読んでください。


 

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