気まぐれショートショート

緋色の恋

メッチャぬるい人類

 ある日、突如地球に宇宙船が降り立った。各国のリーダーは緊急集会を開き、この宇宙船の対処について話し合った。会議の結果、交渉に長けた国のエリートを向かわせ、地球来訪の目的を聞くことで話がまとまる。


宇宙船の近くまで送られたエリートは、宇宙船に話しかける。

「ようこそおいでくださいました。遠路はるばるお疲れでしょう。人類を代表してA国の私が皆さまを歓迎いたします。どうぞ、ご満足いくまで地球を堪能してください」


呼びかけに反応して、宇宙船の扉が開く。すると中から人型ロボットが10体ほど現れる。そしてロボットは流暢な言葉を話した。

「我々は、皆様のお役に立つために参りました。ご命令をどうぞ。」


どうやら、宇宙船に乗っていたのはロボットだけで人類が期待していた宇宙人は見られなかった。


各国のトップ達は、ロボットの目的に対して懐疑的ではあったが、B国のリーダーが試験的に使用してみたいを言い、ロボットを持ち帰った。


B国のリーダーは持ち帰ったロボットを部下に家庭で使用して欲しいと依頼して、様子を見ることにした。1週間後、部下たちにロボットの様子を伺うと、反応は予想以上だった。

部下たちが言うには、ロボットは頼まれたことは何でもできると言うのだ。家事、買い物は完璧にこなし、また、部下の1人は自分の仕事を頼んだところ、自分がやる何倍もの速さで自分以上の成果を上げたと言うのだ。


B国リーダーは考えた。この完璧なロボットがあれば、国民の生活をより豊かにできる、と。ロボットたちに、自分と同じロボットを作ってほしいと依頼すると早速ロボットは動き出す。

一方、B国でロボットの量産をしている中、世界のあらゆる国に前回と同様の宇宙船が降り立ち、ロボットが何体も地球に送られてきていた。

B国の情報を仕入れた各国のリーダーは、性能を確認したのち、B国と同様に量産へ取り掛かる。と言っても、いくら解析してもロボットの技術が分からなかったので、ロボット自身で量産させていた。


 あっという間に、国民一人一人にロボットが行き渡り、人類は忙しかった生活から解放された。家族との時間を最優先し、生活のすべてはロボットが支えるのが当たり前になっていた。

好きな時間に起きて、好きな人と好きなことをして、好きな時間に寝る。

地球はまさに楽園と言うべき場所になっていた。


 そのような生活が何百年と続いたある日、ロボットたちが一斉に動かなくなった。困った人々はロボットを直そうと試みたが、全く直る見込みがない。平和ボケした人類はこの事態に対応するだけの知識もなく、また自力で生活するだけの能力も持たなかったため、直ぐに絶滅した。


人類の絶滅後、1つの宇宙船が降り立った。宇宙船の中からは、何本もの触手がうねうねと動く、醜い姿をした宇宙人が2体現れた。

「ほらね。地球の侵略なんて簡単だろ?」

「ああ。この方法なら、星を傷つけることなく綺麗な状態で手に入るから高値で売れるしな」

「じゃあ、次の星に向けてまたロボットを送ろうか」






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