猫と遊ぶ日

雨世界

1 しんどいよ。生きることは、本当にしんどい。

 猫と遊ぶ日


 プロローグ


 ねえ、私と一緒に遊ぼうよ。


 本編


 しんどいよ。生きることは、本当にしんどい。 


 その日、私は久しぶりに(すごく疲れていたので)、一日中、なんにもしないでただ猫と遊ぶことにした。

 なんにもしないで、ただただ猫とだけ、遊ぶことにしたのだ。


 ほかのことはどうしても(洗濯とか、掃除とか、食事の準備とか、お散歩とか、音楽を聞くとか、本を読むとか、しなくちゃいけないことや、したいことはたくさんあったのだけど)する気になれなかった。(そんな、一日中、ぼんやりとしている日もたまにはあるのだ。たまには)


 猫は「にゃー」と鳴いて、私に甘えてきた。(本当にかわいいやつだ、と思った)


 白い毛並みをした、青色の目をした綺麗な猫。


 私の暮らしている小さな部屋には、不釣り合いにも思えるくらいに、(まるで生きている宝石のようだった)綺麗な猫。

 

 その猫は、もうずっと前に、あなたと一緒に選んで、ちょっとだけ奮発をして、(自分たちへのご褒美として)猫専門のペットショップで購入した、猫だった。


 名前は、雪、と名付けた。(本当に真っ白な猫だったからだ)


 そう名付けたのは、私ではなくあなただった。


「雪、おいで」


 そう言うと、猫の雪はいつまでも、ベットの上でごろごろとしている私のところにやってきた。

 そして私の差し出した手のひらを顔のほっぺたのところでごろごろとして、それから私の人差し指の先を、赤い舌を出して、ちょっとだけ甘えるようにして、ちろちろと舐めた。


 それから雪は私の顔の横あたりで丸くなって目を閉じると、その場所ですー、すーと寝息を立てながら眠り始めてしまった。


 時刻はお昼の十二時ちょうどだった。


 私はそんな雪を見てくすっと笑うと、それから、少しお腹が減ったので、ようやく、「うーん」と言いながら大きく背伸びをして、まだ眠たい目をこすりながら、ベットの中からもそもそと抜け出した。


 明るい太陽の日差しがカーテンの隙間から部屋のフローリングの床の上に差し込んでいる。


 そんな風景を見て、今日はいい休日だな、とにっこりと笑って私は思った。


 お昼ご飯は、うどんにした。(ちょうど、実家から送られてきたうどんがあったからだ。子供のころ、私はうどんが大好きだったから、両親は今も私がうどんが大好きだと思っているのだ。……まあ、今も大好きなのだけど)


 久しぶりに食べたけど、うどんはすっごく美味しかった。(料理の準備がちょっとめんどくさかったけど)


 私はコーヒーを淹れて、それを牛乳で半分に割って、ミルクコーヒーにして飲んだ。

 それから私は、猫の雪と遊ぶために猫の遊び道具を持って(長い猫じゃらしみたいなふにゃふにゃ曲がる棒や、カラフルなボールなどだ)私のベットの上にある枕の横で眠っている雪に「雪、起きて。一緒に遊ぼうよ」と言った。


 でも、猫の雪はなかなか起きてくれなかった。


 きっと雪は、私とずっと一日中、遊んだりしたくないのだと思った。(そう思うと、なんだかすごく悲しくなった)


「雪、私のこと、好き? ……それとも、嫌い?」

 私は、ベットの上にまた横になって、猫の雪にそう言った。


 雪はその目を軽く開けて、青色の目を私に向けると「にゃー」と小さな声で返事をしてくれた。


 猫の言葉は私にはわからないので、私は雪が『好きだよ』と私に言ってくれたのだと思うことにした。(すると、すっごく元気が出てきた)


「ありがとう。雪。私もあなたのことが大好きだよ」


 にっこりと笑って、私は言った。


 それから私は、また目をつぶって眠ってしまった猫の雪の隣に真っ白な毛布にくるまって(まるでもう一匹の猫の雪みたいに、あるいは昆虫の真っ白な繭のように、もしくは、柔らかいたまごのように)もう少しの時間、眠ることにした。


 その眠りの中で、私は、……久しぶりにあなたの夢を見た。


 猫と遊ぶ日 終わり

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