第8話 ビギナーズラック!?

 駐車場に車を止めてコールマンの真っ赤な可愛いワゴンに道具を放り込んで歩く事5分少々。

 前にはワゴンを引っ張るBIGさんと横を歩くアジゴさん。

 アジゴさんは流石にアパレル関係、長袖冷感シャツの上に真っ白なフリル多めのレース地のトップス、ボトムスはスキニーなズボンで纏められていてつば広ハットを被っているのでお嬢様の避暑みたいな感じだ。

 それに対してBIGさんはタンクトップに短パン、2人とも足元はサンダルだけどワゴンの中に釣り用の靴は別に入れてあるらしい。

 あたしの格好は冷感シャツに薄手のパーカー、暑いのでホットパンツにしようかと思ったけど日焼けや釣り針の危険を諭されてスキニージーンズだ。

「とうとう釣りデビューだね、今のお気持ちは?」

 横を歩くリョーシさんが戯けた感じで聞いてきた。

「なんかドキドキしよりますけど楽しみですよ!」

 そんなリョーシさんは釣具メーカー?の名前が入った服一式でピシッっと決めているんだけどなんかスマートな印象、かっこいいけどツヤこいてる感じだしもっとこうワイルドだったら好みなのになー。

「あたし芥屋って海水浴か遊覧船に乗るとこと思っとったです」

 あたしがそう言うとリョーシさんは。

「ははっ!確かに釣りしない人にはそうかもね、釣り場は遊覧船乗り場の先だよ」

 そう言って乗り場に入っていく、そこにはトイレもあって便利な感じ。

 乗り場を過ぎるとそこは堤防、今日の目的地、芥屋漁港だ。

 と、リョーシさんがタタっと駆けてワゴンのところに行く。

 何かな?と思ったら段差があるみたいでワゴンの後ろを持つとBIGさんと息を合わせてヒョイっと持ち上げて段差の下に下ろす。

 あれ?釣具って意外と軽いのかな?

 そう思いながら堤防の先端へ、漁港内の部分は釣り禁止って書いてあるみたい。

 そしてあたしは。

「うーみーだー!」

 と叫んだわけである。

 堤防からまっすぐ見えるビーチにはコロナの影響があるとはいえ人が多く後ろを見れば有名な芥屋の大門へ続く海岸線が見える。

 ロケーション最高だしテンションが上がっても仕方ないよね?

 そう思いながらみんなを見たら若干距離を取られていた...アレ?

「よし!じゃあ準備するぞ!」

 BIGさんの掛け声でワゴンから荷物を下ろし始める。

 今日の釣りはアジのサビキ釣り、サビキっていうのがなんなのかよくわからないけどサビキ釣り。

「はいこれ、堤防竿ね」

 そう言われて渡されたのは若干渋い感じの赤い竿、朱色っぽい感じかな?

 一緒に渡されたリールをセットして竿についてる輪っか...ガイドっていうらしい。

 そこに糸を通していく。

 リールの使い方は昨日の夜教えて貰っているから完璧だ!こうやって大きな輪っかを起こすと糸が出るようになってる!あたし完璧!

「おーいシオメちゃん、糸がベイルの真ん中から出とるけんそれじゃ巻けんぞ」

 あ、本当だ。

「あっはっは、初めてだからしょうがないよね」

 そう言いながらリョーシさんが糸を戻して正しいとこを通してあたしがやっていたところまでセットしてくれた、手早い。

 うーん、流れで全部やってくれるんじゃなくて手間食うとこだけささっと手伝ってくれるとは憎いあんちくしょうめ。

 面倒な準備もこうも気遣われたら楽しくなっちゃうじゃんか!

 そうこうしながら糸を通した竿を伸ばし...伸ばし...まだ伸びるの!?

 伸ばしたら軽く2mを超える長さに!竿って長いんだなぁ...。

「まぁ初心者だったら2.4mぐらいがちょうどいいわよね」

 何かよくわかんないけどちょうどいいらしい、アジゴさんが言うからそうなんでしょう。

 そして糸の先になんかフックみたいなの結ぶんだよね?

 と思っていたら。

「今日は投げサビキにするからスナップの前にこれを通してね」

 といいながらなんかゴムを糸に通し始めるリョーシさん、家庭科の糸通しみたいで面白いな。

 ゴムのあとはビーズみたいな丸いのを通してからわっかから大きめのスナップが付いたのをとおしてまたビーズとゴムを入れる。

 そしてスナップ、この結び方は昨日聞いて練習したもんね!

 輪っかに糸を通して~スナップをくるくるくるっとまわして~端っこを根っこの輪になった部分に通したら...引っ張る!

 透明な釣り糸がキュウゥっと玉になってがっちりつながる。

 あとは余分な糸をカットして...出来た!

「おー、やるじゃんシオメ」

 と、アジゴさんにもお褒めいただいたのでスナップにカゴをつける。

 リョーシさんが言うにはこれは投げかごとか遠投かごといってウキで吊るときに丁度良くエサを撒いてくれるらしい、実感ないけど。

 その下に針、これをサビキっていうらしいですよ奥さん!そのしたにナスみたいな重りをつけて...完成!投げサビキ仕掛け!

 って振り向いたら全員終わって投げてんじゃん!素早っ!

 サクッとアジを釣ったリョーシさんがクーラーにアジを放り込んで来てくれる。

 何このでっかい歯磨き粉みたいなの?え?これエサなの?

「これはアミ姫って言ってサビキ用のアミ...餌をチューブに入れて使いやすくしたものなんだ、アミって手につくと生臭くなるんだけどこれはブルーベリーの匂いがつけてあるから割と気にならないよ、勿論ついたら洗った方がいいけど」

 ふむふむ、姫っていい響きね、まぁ初心者で何も知らないあたしは今姫プレイで接待されてるからお似合いかな?

「それからコレがサビキ用のウキね、さっき通したリングのスナップにつけて」

 言われた通りにしてカゴにアミ姫も入れた。

「よし、じゃあ投げてみようか?」

 そう言われてあたしは準備する、来る途中さんざん説明してもらったから多分完璧だと思うんだよね?

 まず糸を人差し指にかけて~ベイル?を起こして~後ろを確認して~前に振りながら指を離す!決まった!完璧!

「おいあぶなかぞ!」

 余韻に浸っていたあたしの目の前を重り、サビキ、カゴの順に通っていき堤防沿いにドプンと入るとプカっとウキが浮いた。

「クックック」

 アジゴさんは笑いをこらえている。

「すげえことばするなぁ」

 BIGさんは笑いながら言う。

「指を離すのが早すぎたんだね、ほとんど真上に飛んじゃって落ちてきたんだよ、ぷっ!怪我がなくてよかった」

 あーん!つやこいてすまーしとるリョーシさんにまで笑われたぁ!

「ごめんごめん、初めてで後ろに飛ばしたり横に飛ばしたりする人はいるけど丁度足元に落とす人なんて初めてだからさ、おっと余分な糸を巻いて投げなおそうか?」

 そう言われて糸を巻いていると急にウキがズボっと水に入り込んだ!

「え?なんこれなんこれ?」

「大丈夫、ゆっくり巻いてみて」

 そう言われて巻くけどなんかすごい力で引っ張られる!

「お、アジじゃなさそうやね」

 BIGさんがそう言って網を持ってきてくれる、タモって言うらしい。

『ここで一旦CMでーす』って休ませてほしいよ!タモさんだったら!

 そんな悪戦苦闘しながらなんかリールはジージー言って糸が出るし巻いては出るを繰り返したら...水面になんかのぼーっとした魚が浮かんできた。

「よしっ!」

 という掛け声とともにBIGさんが掬ってくれたのは...40センチはある魚だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ツリーハウスへようこそ よっち @yotti4431

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ