第7話 買い物女子会
「うーみーだー!」
テンションの上がったあたしは至極当たり前のことを口に出す。
そもそも毎日海の見える部屋に住んでいる身でありながらなぜテンションが上がっているのか?
そりゃぁ見るだけの海と泳ぐ海と堤防では同じ海だけど違う海だからだ。
「明日の買い物?」
土曜日、アジゴさんに誘われてあたしは車のエンジンをかけた。
「そ、明日が釣りデビューでしょ?色々と必要なものがあるから買いに行きましょ」
確かに竿の一本も持ってないあたしだ、釣りを始めるにあたって何を買えばいいかわからないので買い物に付き合ってくれるのはすごくありがたい。
ちなみにBIGさんは現場、リョーシさんは休みのはずが内見が一軒入ったとのことで急遽出社していった。
「そもそもあいつらと買い物に行っても必要なものは買えないわよ」
アジゴさんの言葉に違和感を覚える、たしかアジゴさんは初心者であの二人は結構な経験者のはず、初心者目線で必要なものを教えてくれるのかな?
「とりあえずポイントでよかですか?そういえば周船寺方面にタックルベリーっていう中古釣具屋さんありましたね」
あたしが訊くとアジゴさんは。
「シオメちゃん、予算に余裕ある?」
と聞いてきた。
「えっと...正直引っ越し費用で結構使ってしまったけん安く済ませたかとですよね...」
あたしが正直に答えるとアジゴさんは。
「だと思った、じゃあまずダイレックス行きましょ」
と、いきなりディスカウントストアーの名前を出したのだった。
「はい、好きな柄選んで」
そう言われて連れてこられたのは衣料品コーナー、目の前には各種冷感シャツがぶら下がっている。
「えっと...冷感シャツなら何着か持っとるですけど?」
いきなり釣りと関係ないところに連れてこられて困惑するあたし。
「半袖でしょ?それ」
そういわれると半袖やノースリーブしかもっていない。
「真夏の堤防舐めてると痛い目みるよ、長袖ハイネックのやつ1着買いなさい」
なるほど、日焼け止めか!
「ばってん、海水浴用のラッシュガードも持っとるですし大丈夫やなかですか?」
そう言うとアジゴさんは。
「あれは波打ち際とか砂浜で着るもんよ、堤防って何で出来てる?」
コンクリートだ!炎天下のコンクリートか...確かに暑そう。
「値段見てみなさい、どうせ汚れるし最初はこれで充分よ」
値段...1780円!安い!
「余裕があるなら釣具屋とかで可愛くてちょっといいやつ買ってもいいんだけど最初はそれにしときなさい!さっさと決めてコスメコーナーで日焼け止め見るわよ!」
言われてみてみるけど腕が迷彩色のコンビニでBIGさんや洋一さんみたいな現場の人が着ているようなデザインしかない...。
あたしは少しでも可愛くと思い白ベースのほうを選んでアジゴさんの後を追った。
「まぁこんなもんね」
あの後冷感シャツと日焼け止めをかったあたしたちは古着やの西海岸で良さげなキャップを買って帰路に就いた。
「でも本当に竿とか買わなくてよかったんですか?餌とかも」
買い物と聞いててっきり釣り具を買うと思っていたあたしは少し肩透かしを食らった気分だった。
「いーのいーの、サビキの道具なんかハウスに腐るほどあるしエサも常に冷凍庫に入ってるから」
なるほど、流石は釣りハウスといったところかな?
「それにいきなり道具買って合わなかったら悲しいでしょ?最初は色々借りて使いやすい長さとかどの釣りするかとか決めてから買えばいいのよ」
なるほど、そういうやり方もあるのか...と考えながら運転していると。
「シオメちゃんさ、ほとんど初心者のあたしと買い物で不安だったでしょ?」
と、アジゴさんが聞いてきた。
「そ、そそそ、そんなことなかですよ?」
心を読まれたみたいで動揺するあたし。
「気にしないでいいって、そもそも釣り具買うならリョーシかあのバカ連れてきてるって」
ふふっとアジゴさんが笑う、本当美人だなぁこの人。
「でもあいつらじゃ日焼けとか女の子の準備に疎いでしょ?だからあたしがついてきたって訳」
女性ならではの気遣いだったのね...すごくありがたい。
「というか聞いてよシオメちゃん!あのバカ初めて釣りに連れて行ってくれた時にこういう注意事項何もなしであたし真っ黒に日焼けしちゃったんだから!リョーシのやつも優男みたいな面してこういうところ気が利かないし...」
アジゴさんの愚痴はハウスにつくまで延々と続くのだった。
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