第3話 相対主義
ソフィストと言われている人のまわりに人が群がっている。
クピーが、目を輝かせながら言う。
「ソフィストよ!真理の探求よりも、相手を論破することに生きがいを感じる奴らね!」
僕はクピーに尋ねる。
「ソフィストってなに?」
「ソフィストは、この時代に相手を論破する術を政治家達に教えていた人のことを言うわ。喋り方の先生ね」
「そんな仕事が昔はあったんだね」
クピーは僕の回答には答えず、興奮した様子で話を続ける。
「ソフィストの周りにいるのは、政治家達ね」
「なんか俺たちイケてるグループみたいなオーラ出してて尺に触るわ」
「あらそう?私は好きよ。というか私はなんでも好き」
そう言って手でハートマーク作ってる。
何なんだ。この妖精は……この妖精についていって大丈夫なのか……
「真ん中にいるのはソフィストのプロタゴラスね」
集団の真ん中にいるプロダゴラスは哲学者に向かって話す。
「何の話をしているかはわからないけど、人それぞれじゃね?」
周りの取り巻きも一緒になって話す。
「先生のおっしゃるとおり」
「人それぞれじゃね?」「人それぞれじゃね?」
「僕は僕」「君は君」「なんでもあり」
みんなダンスをしながら歌ってる。なかなか楽しそうだ。
なにかしらないけどすごく満足している様子だ。
そして、なぜだか、哲学者達は悔しそうにしている。
僕はクピーに話しかける
「なんで哲学者達は言い返さないんだろう」
「哲学者も自分の理論が論破されるのを恐れているのね。プロタゴラスは論破の天才なのよ。彼の講義はすごい人気で、その講義料は軍艦が買えるほどだったと言われているわ」
「1回の講義で、軍艦が買える……とんでもないお金持ちってことだね」
「そうよ!口が達者でお金を持っている。魅力的よね~」
それは心のなかで思っても口に出さないほうがいい
でも、いちいち突っ込むのはやめとこ……僕は質問を続ける
「でも、なんでプロタゴラスは軍艦が買えるほど人気になったの?」
「いいところに気がついたわね!それは彼の提唱する相対主義が論破するのに最適だったためよ」
「相対主義?」
「相対主義は、物事は人が判断するから、人によって物の見方が違ってもいいじゃんって考えよ」
「う~ん。さっぱりわからん」
「続けるわね。例えば、1つの絵を見てもそれを素晴らしいと思う人もいるし、下手な絵だと言う人もいる。両方とも、本人からしたら正しいわ。だから、素晴らしいと思うのも、下手な絵だというのも両方真実でしょ」
「確かにそうだけど……」
「ソフィストのプロタゴラスと哲学者が話しそうよ。ソフィスト vs 哲学者、楽しみね。プロタゴラスがどのように相対主義を使うのかが見ものね!」
「クピーは争いを止める気ないね」
プロタゴラスが哲学者達に話しかける。
「なんの話をしているんですか?」
哲学者達は身構えている。
そりゃ論破たのしーって言っている奴とは、言い合いたくない。
デモクリトスが自信満々で出てくる。
ああー兄弟に養ってもらってるデモクリトスが出てきた。お前で大丈夫か。
でも、デモクリトスは万物の起源は原子という正しい答えをもってる哲学者だ。
がんばれデモクリトス!
「世界がなにで出来ているのか。万物の起源について話しているんだ」
プロタゴラスがニヤニヤしながら質問をする。
「なるほど。それで結論は出たのですか」
「いや、水とか空気とか数とか、色々な意見が出てますが、私は原子だと考えている。その理由は……」
プロタゴラスが話を遮る
「なるほど。みんなそれぞれ違う意見があるんですね。でも、根本の話していいですか?そんな自然を作る万物の起源の話自体やめませんか?哲学者のあなた達がそれを重要だと思っても、みんなは重要だと思っていない。むしろ、迷惑だと思ってる。そんな自然のことを考えるより、政治家さん達が考えている法律や規則のほうがみんな重要だと思っている。みんなそうですよね!」
「プロタゴラスの言う通り。プロタゴラス最高!」
「でも僕たちはあなた達のことも認めますよ。だって、人それぞれだからね!」
「人それぞれ」「人それぞれ」
「僕は僕」「君は君」「なんでもあり」
村人がデモクリトスの周りでダンスをしながら歌ってる。
デモクリトスは言い返せない……
クピーはいう。
「プロタゴラスの勝ちね。哲学者達は、自然をつくる万物の起源が重要だと思っていて、村人達は重要だと思っていない。どっちもそれぞれの人からしたら真実。相対主義の考えね」
「それだったら、どっちも正しいんだから、勝負は引き分けじゃないの?」
僕なクピーに質問する。
「そうね。でも、この時代はみんなで物事を決めるという文化だったから、多数決で物事は決まっていたの。村人達の賛同を得られているのは、プロタゴラス。デモクリトスはそれを感じ取って黙ってしまったのよ」
「なるほど。多数決で決まっていたんだ。でも今の日本も、みんなで選んだ政治家が国を動かしているという点では同じだね」
「ちょっと待った!その勝負。私に預けてもらおうか!」
小汚いおっさんが出てきた。おっさんばっかりでむさ苦しいわ。
「とうとう来たわね。哲学の祖と呼ばれるソクラテスの登場よ!私ソクラテスだ~いすき」
哲学が必要なクマ ペンギン @penguin_family
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。哲学が必要なクマの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます