おだまき

@HasumiChouji

おだまき

 2001ねん9がつ11にち。

 あめりかでてろがおきるかわりに、とうきょうでおおきなじしんがおこり、たくさんのひとがいきかえりました。

 2011ねんにひがしにほんだいしんさいが、おきなかったじてんできづいているべきでしたが……。

 でも、まだ、なぞはのこっています。

 きえてしまったひとたちは、このじしんでいきかえったひとたちよりもなんけたもおおいのです。

 それに、きえてしまったひとたちは、にほんやとうきょうだけでなく、せかいじゅうにいます。

 なぜ、このれきしでは、かこにたくさんのひとがしんでいるのか?

 ぼくのじゅみょうは、あと4〜5ねん。

 みらいほどには、むずかしいことはわからなくなっている。


 非現実的な方法だが、現実的な解決策はこれしか無い。

 そう思って、俺は「復古派」の政党に投票した。

 選挙結果は「復古派」の圧勝。

 日本以外でも、同じような状況らしい。

 そして、世界中のほぼ全ての国が協力して「復古装置」を生み出した。

 「復古装置」の開発によって膨大な資源と予算が使われ、環境問題は更に悪化し……「復古装置」の開発を全てに優先させた結果、いくつかの小国は消えてなくなり、日本やアメリカや中国でも景気が悪い地域は丸ごと滅び去った。そして……人類滅亡へのタイムリミットは早まったが……だが、「復古装置」が起動すれば、全ては逆転する筈だった。

 ……そして、その通りになった。

 復古装置は全人類の脳を……恒久的かつほんの少しだけ作り変え……人類の進むべき道は、100年足らずの「未来」ではなく、無限とも思える「過去」になった。


 22世紀を待たずして、地球は人類の生存に適さない惑星に成り果てる。

 環境問題を研究している多くの科学者が、そう警告していたが、まだ70年以上の時が有るにも関わらず、解決方法など無かった。

 ただ、1つ、脳科学と物理学の共同研究が導き出した、とんでもない方法を除いては……。


 時間は存在するが、時間には「流れる方向」など無く、人間が「過去」から「未来」へ時間が流れているように感じているのは、便宜上のものに過ぎず、全人類に時の流れを「未来から過去へ」流れるように感じさせる方法は有る。

 それが、「復古装置」の理論を打ち立てた科学者達の主張だった。

 何を言ってるかほぼ理解出来なかったが、要は「時の流れを逆転させる事で、人類を滅亡から救える」と云う事らしい。

 つまり、100年足らずの「未来」は過ぎ去った「過去」になり、人類誕生以来数万年の「過去」が人類にとっての長い「未来」になるだろう。


 環境問題を何とかして解決するより、「復古装置」を使って時を逆転させ、人類を救う方が成功確率が高い。

 「復古装置」の理論と計画が発表されてから、ほんの1年で、そう考える人達が多数派になった。どこの国でもだ。

 そして、選挙の度に「『復古装置』による人類滅亡阻止」を唱える「復古派」と言われる政治家や政党が圧勝した。これまた、どこの国でもだ。

 そして、202X年、人類は滅亡を回避した。いや、「時は過去から未来へ流れる」と云う観点からしたら、人類滅亡は決定的になった。とは言っても、俺達が22世紀まで生きたとしても、今の俺達には人類滅亡の時を認識出来なくなっているが。


 そして、2011年。

 俺は若返り中学生になった。要は「生意気ざかり」「反抗期」「思春期」。

 だから、「復古派」の政党に投票した時の「現実的な大人」のつもりだったアラサーの俺が見て見ぬフリをした事に気付いてしまった。

 クソ、復古派の政治家のほとんどには、まだ、40〜50年かそれ以上の寿命が残っているが、俺には、あと十数年の寿命しか残されてないじゃね〜かっ!!


 当の復古派の政治家達は、輝ける「過去」への展望を語っていた。

 どうやら「復古装置」の理論を作った科学者達の説明では、歴史の大きな流れは変えられないが、細部は変ってしまう……または変えられるらしかった。

 アメリカの政治家は……イラク・アフガン戦争の失敗や、ベトナム戦争の敗北は避けられないにせよ、犠牲者は減らせる筈だ、と。

 中国の政治家は、文革の犠牲者が減る「過去」を夢見ていた。

 そして、日本の政治家は、南京大虐殺その他の戦争犯罪が無い「過去」を……。

 だが、少しづつ、おかしい事が起きていた。

 元の歴史では、この時期には既に死んでいた人達が出現し、逆にまだ生きていた筈の人達が消えた。

 歴史は細部しか変わらないと言うが、その「細部の変化」は人類にとっては決定的な「何か」じゃないのか?

 人々がそう気付き始めた頃、3月11日を迎え……日本時間で14時46分になっても、東日本大震災は起きなかった。

 いや……気付いている人達も居た。

 あの震災で破壊された筈の原発は……廃墟になったままだったが、破壊のされ方が震災による破壊とは違っていたのだ。

 後になって……いや前になって公表された情報では、調査の結果「上空からの何者かの攻撃により破壊された」「破壊された時期は元の歴史での東日本大震災より少なくとも10年前」と云う結論が出されていたらしい。

 それだけではない。

 世界各地の都市・軍事施設・重要なインフラ設備が次々と廃墟に変っていった。

 世界の人口は、元の歴史よりも数割減少していった。

 どうやら、歴史の「細部」が元の歴史とは変ってしまったらしい。

 だが、その「小さな変化」によって、この歴史では、過去に何か全世界規模で多くの人命が失われる事態が起きた……または起きるらしい。


 1999年7月、スマートフォンはとっくに消え、コンピュータの処理能力は、かつて……または未来に比べて大幅に落ち、そのOSやアプリから様々な機能が無くなりました(と言うか、多くのOSやアプリが消えました)。携帯電話やインターネットは普及していますが、まだ……もしくはこれからは、少なからぬ人が、そんなモノを使わなくても、日常生活に支障は出ないでしょう。

 そして、元の歴史では出現しなかった「恐怖の大王」が降臨し、数多の人命を奪いました……もしくは生き返らせました。

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