第14話納豆2
「…まさかーこんなに大ブームになるとはなー」
「…くそッ!次は絶対に負けんぞ!」
○
それはある日の事だった。今日の食事当番はベルゼ、大豆を調理していた際に彼はつい分量を間違えて多く茹ですぎてしまった。
「…あっちゃー…しまったな、まあいいかとりあえずこのタッパーの中に入れておこう…」
捨てるのもなんだか勿体なく感じ、あとで食べようととりあえず近くのタッパーに入れておいたが完全にそのことを忘れてしまったベルゼ。そして次の日、何か変な匂いがするとタッパーの中をのぞいて見た彼が見たのは完全に腐りきっていた大豆の姿だった。
「…こりゃ捨てるしかねえか…ん?でもこの匂い…ファントラスの内臓を発酵した匂いにしてるような…」
それは異世界で魔人たちに人気だった発行食品、独特の癖があるが何度も食べるたびに病み付きになってくる魔人料理。どこかその匂いに似ているものを感じたベルゼは腐った豆を一つまみ口の中に入れてみた。
「…ッ!これはっ…ゲロ臭え!でも…可能性があるっ!気がする!」
食感はぐちゃぐちゃ、匂いもきついがどこか可能性を感じたベルゼはその研究意欲に火が付き6回にわたる腹痛を引き起こしながらも、何かに取りつかれたように1か月にわたり大豆の発酵を研究し続けた。
「…出来た!出来たぞ!俺様はこれを納豆と名付ける!」
「…お前さん最近なんか台所でこそこそやってるみたいだが何をやってるんだ?」
ついにその研究成果が実を結び自分が納得する者が出来たと歓喜に満ちた時、ノックが何やら不審なものを見るような目で近づいて来た。
「おお!ノックか!見ろ!これを!天才の俺様は新しい料理を作り出したぞ!」
「うえーなんだそれ完全に腐って―――うぐっ」
「がっはは!見た目はな!いいから食べてみろって!」
「おろろろろろろろろろ」
もちろん無理やり口に納豆を入れられたノックは朝食と昼食を吐き出す事になったのだが…
「いや!これ癖になってくるから!癖になるから!」
と言うベルゼに毎日のように納豆を食べさせられついには―――
「…意外と…美味いかもしれないなーこれ…」
ベルゼと共に納豆教に入門することになるのであった。最古の納豆教ここに爆誕である。
そしてテンションが上がった2人が次に目指したのは納豆の販売、どこの国にもゲテモノ好きはいるようで買い取ってくれる人は少ないが一定の数がいた。特に中でもなぜか妙に日本人の口に合ったようでよく観光に来た日本人が買ってくれるようになっていた。
しかし、ベルゼ達の計算外だったのがこの納豆と日本の醤油の親和性が良かったことだった。その素晴らしさに気づいた日本人は独自に納豆を作り出すことに成功し、納豆と醤油をセットで売り出した。少数量売れればいいと考えていたベルゼとノックはその大量販売による価格の安さとマーケティング力に完全に負け、ついには納豆市場から撤退してしまうことになった。
そしてその後ベルゼはその悔しさをはらすように新しい商品開発に力を入れていた。
「おいノック!次はこのタピオカって言うドリンクで天下を取ってやるぞ!」
「…そんなカエルの卵みたいなの本当に美味いのかー?」
「魔人たちの間でもバブルフロッグの卵を飲む風習はあった!必ずヒットするはずだ!」
タピオカがヒットし、再びそれが日本人に真似されるのは少し未来の話。
○
そして、その頃アトランティス大陸では―――
「…慣れてくると意外とこの納豆も美味しいわね…」
「だから言ったじゃない」
また一人納豆の深みにハマる女性がいた。
オパーツ!~異世界の工芸品~ 向井一将 @mukaiishoo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。オパーツ!~異世界の工芸品~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます