愛してる、と口にするとき、それはしばしば恋人や家族に向けられています。現実、小説、漫画や映画で、そのようなシチュエーションをたくさん見かけます。ですが本来、愛というものを考えた時、私たちは誰でも愛していいはずで、何でも愛していいはずです。そんな、柔らかな「愛している」の関係性が、とても優しく、寂しいタッチで描かれているように思います。
ふれることも、抱きしめることも手を伸ばすこともできない。先行きのない、プラトニックな恋人同士の別れの場面が、やわらかく切ない言葉でつづられてゆきます。約束のない別れは、ひたすらに、痛い。これを「終わった恋」と言い切れる人は、幸せでしょう。昔の恋の傷はいまも、あの時と同じ形で残っています。読後。恋情が、とまりません。
これは喪失の物語。人と同時に世界を失う物語。そして題名には「今はまだ」とついています。未来を見たとき、この作品は道半ば。余白は読者に委ねられています。