あの日見た君はいつかの誰かと同じだった

くんた

第1話

 僕はあの日、いつものように学校へ向かっていた。その時突然に雨が降ってきた。何も考えず駆け込んだその店には君がいた。僕は何故か悲しくなって下唇を噛んで目を見開いた。それが君に分からないように、静かに、必死で。

 雨が止んで君は外の世界へ飛び出した。その時の後ろ姿に既視感を覚えた。それがなぜかは分からない。ただポニーテールを揺らす君に見惚れていた。

 学校までの道で僕は何度も君の姿を確認した。靴を履き替えるときすっと頭の中に15年前の映像が流れた。15年前の今日はそうあの日。僕が人を拒絶することを覚えたあの日だ。それまでの僕は誰とでも仲良くできる明るい子供だった。と祖母から聞いた。僕はまだ幼かったから、お母さんが出て行ったのはいつものように仕事に行くためだと思っていた。僕が最後に見た母は髪を縛った、かっこいい後ろ姿だった。

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