『カエルのガイヤルド』

ネコ エレクトゥス

第1話

 ついさっき、買い物帰り、夜道を自転車で走らせていたら何か轢きそうになった。カエルだった。カエルといってもケロケロ鳴くあの子たちではなく、ゲコゲコ鳴くあの野郎、つまりヒキガエルだった。いにしえの魔女がそいつを潰して毒薬を作ったというあいつ、春先になるといつも車に轢かれているあいつだった(それにしてもあいつらは車に轢かれるためだけに生まれてくるのだろうか)。

 僕の住んでる東京の郊外でも前はヒキガエルの鳴き声をたまに聞いたのだが、住む場所がなくなってきているせいと、そして当然車に轢かれているせいでなかなか見かけることがなくなった。東京の郊外ではあいつらは絶滅危惧種になりかけている。捕まえて安全な場所に逃がしてやった。

 ところでヒキガエルがコロナウィルスの保菌者であるかどうかは知るすべもない。


 イギリスのバロック時代、シェイクスピアの時代の歌曲の小品に『カエルのガイヤルド』という曲がある(小品といってもバロック時代の曲なのでいくらでも複雑にできるらしいが)。実は僕はそんな曲のギターの弾き手である(簡単な方の)。

これがシンプルな中にも情緒があるぜひとも聞いてほしい曲で、この曲のエッセンスはそっくりそのままビートルズなどにも流れ込んでいるので、気に入ってくれる方もいるんじゃないかと思う。ただ悲しいことにそんな音楽も絶滅危惧種化しかけている。カエルの声が聞こえなくなるのとどちらが先か。


 僕らは今混乱の時代に生きていますが、そんな中でもいつか音楽を分かち合える日が来たら嬉しいですね。その時は絶滅危惧種化した音楽の音色を楽しんでください。それまでは絶滅危惧種化したあの野郎、ヒキガエルにも頑張って生きててもらいましょう。僕も車に轢かれないようにします。

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『カエルのガイヤルド』 ネコ エレクトゥス @katsumikun

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