すごい…すごすぎる…。
『アレ』のからくりが読者にとっては、ん?とちょっと引っかかるくらいに仕込まれていてその情報の開示の仕方やコントロールとか構成の仕方がおっっそろしく巧みで、それが作品の落とし方をものすごく凄烈な印象に仕立てている。もんのすごい技巧のある作品です。
『アレ』の作品って基本的にわたしは物語の中に作者さん自身の意図を感じてしまってどちらかというと苦手な方なんですけどこの作品は本当に自然に間合いに踏み込まれてすっと入ってくる感じがすごいです。
それはこの作品が読者の意識にものすごく丁寧に真摯に気を配って書かれている作品だからだと思います。
一人暮らしの社会人女性が、『公』と『私』の棲み分け使い分けに思い悩むお話。
具体的には身だしなみのお話。もともと個人的には何もしないで出かけても平気なところ、でも職場ではさすがにと気を遣って身だしなみを整える、その手間を「まだやってんの」と友人から言われて悩んでみたり、と、大体そんな筋のお話です。
自分でレビュー書いておいて言うことではないのですが、正直書けることがありません。とりあえず読んでみて短いから! と、それが精一杯というかたぶん最適解です。つまりはネタバレしないようにということでもあるのですが、でも余計な先入観や予備知識がない状態で読むのが、きっと一番面白い作品じゃないかと思うので。
というわけでせめて一太刀、非常にざっくりふんわりした感想だけ置いておきたいのですが、非常に丁寧に描かれた作品です。特に情報の出し引きというか、伝えるべき内容を伝えたり隠したりするその仕込みのようなもの。自然にするする読ませたり逆に「ん?」と引っかかる感じを与えてみたりと、その辺りの工夫が細やかで、それらがコンパクトな物語の中で綺麗に作用していく、美しい構成の物語でした。
主人公がぽっちゃりなところが好きです。どの程度ぽっちゃりなのかついつい想像してしまうところも含めて、なんとなくほっこりする設定でした。