メテオラ 魔法の宝玉

雨世界

1 もし、願いが叶うとしたら、君はなにを願う?

 メテオラ 魔法の宝玉


 登場人物


 メテオラ 魔法使いの男の子


 メイ 天才魔法使い 美しい女性 お姉ちゃん


 ウロボロス 赤い蛇 永遠を生きる孤独な蛇


 プロローグ


 もし、願いが叶うとしたら、君はなにを願う?


 魔法使いという種族について


 その一、魔法使いは空を飛んで一生を終える種族である。

 その二、魔法使いの魔法とは空を自由に飛ぶことである。

 その三、魔法使いはその生涯をかけて自身の魔法使いの研究をする。

 その四、魔法使いは森とともに生き、森ととにも死する種族である。

 その五、魔法使いが死ぬと、その魂は根元の海と呼ばれる場所に還っていく。

 その六、魔法使いは魔法樹という大樹を信仰する。

 その七、魔法使いは他種族と交流を持ってはならない。


 本編


 やがて世界は一つになる。


 ……お願い。私に構わないで。もう私のことを、世界のどこにも探さないで。


 私の夢はこの世界から消えること。メテオラくん。私のお願い、聞いてくれる? その魔法の宝玉を使って、私のことを消滅させてくれる?


 それが私の願いなの。私はもう眠りたいの。だからお願い。メテオラくん。あなたの手で。私を、……。


 私を、この永遠の孤独から救い出して。


 ……誰? 君はいったい誰なの?


 メテオラは夢の中で問いかける。

 知らない声。メテオラと同じくらいの年頃の女の子だと思える、幼い声。

 

 私。……私の名前は……。


 君の名前は……?


 そこでメテオラの意識は、目覚める。


 不思議な声は消えてしまった。

 

 長い夜と、……淡い夢と一緒に。


「……君は、誰なの?」

 いつもの自分のベットの中で目覚めたメテオラは、朝日の中で問いかける。夢の中のように。自分の誰の手も握っていない右の手のひらを見つめながら。


 問題児の天才魔法使い


 どの世界にも、天才と呼ばれる人はいる。


 メテオラの暮らしている魔法の森にも、一人の天才と呼ばれる魔法使いがいた。その人の名前は……、メイと言った。


 誰もが認める天才魔法使い、メイ。


 暴走。加速。爆発。火薬庫。珍しい赤色の魔法使いの帽子とローブをつけた、通称、『赤色の魔法使い』。森のトラブルメイカー。あるいは、ルール破り、とも呼ばれる、自身の魔法の研究のためなら、どんな規則でも破ってしまう、森で一番の問題児。(天才とは永遠の子供のことだ)


 そんな天才魔法使いの女性。


 メイの生涯をかけた魔法使いの研究のテーマは、……『不老不死』、あるいは『永遠の命』の獲得だった。


「……メテオラくん。起きてる? 起きて、メテオラくん」


 体をゆっくりと揺さぶられて、深い眠りの中から、メテオラが目をさますと、そこには大きな胸があった。

 しかもその大きな胸はメテオラの顔にぎゅっと押し付けられている。

 その顔に押し付けられる大きな胸の感触は、今までメテオラが感じたことのない、今まで感じたことのない、新しい誰かの胸の感覚だった。

 ……マグお姉ちゃんじゃない? それに、ほかの誰の胸の感触でもない。……えっと、それじゃあ、今、僕を起こしているのはいったい誰なんだろう?


 そんな疑問を持ちながら、メテオラが息をするために、「起きてます。苦しいです。胸をどけてください」というと、その大きな胸はゆっくりとメテオラの顔から離れていった。


 メテオラが目を開けて、自分のベットの横に立っている人物の顔を見る。


 その人物とメテオラが出会うのは、今日初めてのことだったのだけど、メテオラにはその魔法使いの顔に確かに見覚えがあった。


 魔法新聞、パンプキンの表紙をよく飾っている人物だ。


 その人物の名前を、メイと言った。


 天才魔法使いメイ。


 もし、彼女の選んだ魔法使いの研究が『不老不死』の研究でなかったら、おそらく、もう一人の天才魔法使い、ソマリお兄ちゃんではなくて、メイさんが次の大魔法使いになっていたであろう、と言われるくらいに、すごい才能を持った魔法使いだった。

 ずっと、北にあった魔法学校で、それからこの魔法の森に空渡りをして魔法使いたちがやってきたあともずっと、ソマリお兄ちゃんのライバルとして存在してきた、魔法使い。

 天才魔法使い、メイ。


 そんな天才魔法使いメイさんが、なぜか今日、眠っていたメテオラの部屋の中にいた。


「……メイさん? どうしてメイさんが僕の部屋にいるんですか?」


 まだ眠たい目をこすりながらメテオラは言う。


「さすが私。初めてあったのに、メテオラくんはちゃんと私のことを知ってくれているんだね」

 ふふっと嬉しそうに笑ってメイさんは言う。


「よし。じゃあ、話は早い。早速出発するよ」

 メテオラに手を差し出しながら、メイさんはにっこりと笑って言う。


「……? 出発するって、どこにですか?」

 メテオラは言う。


「それはもちろん、『この魔法の森の外』にだよ」


 魔法の森の外に森の魔法使いが出て行くことは、絶対の禁忌である。その禁忌をさも、当然のように破ると、天才魔法使い、メイは言う。

 

 そんなとても美しい姿をした、とても目立つ珍しい赤色の魔法使いのとんがり帽子とローブを身につけているメイさんのことを見て、メテオラは、もうなにも言葉を言えなくなった。

 そんなメテオラを見て、天才魔法使いは、くすくすと、まるでいたずらが大成功した子供のように、楽しそうな顔をして笑った。

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