これは魔王討伐を終えたあとの、とある勇者ととある少女の物語~思い出巡りの旅~
勇者。
それは神に選ばれ、魔王を倒すことが定められているもの。
神からの祝福を受けたそんな存在。
勇者は、この度、魔王を倒すことに成功した。それも、ほんのわずかな期間で。
歴代最高の勇者と呼ばれる存在。
それが、今代の勇者———エセルト。
家名が存在しないのは、彼が平民の出だからである。
歴代の勇者は、魔王討伐を完遂出来た際に神から褒美を受け取っていたという。それは、富だったり、名誉だったり、理想の美女だったり、神は勇者の願いを叶えてきた。
しかし————、今代の勇者が、何を望み、何を手に入れたのかは勇者自身しか把握していないことだった。
さて、そんなこの世界を救った勇者は、妻である少女と共に旅をしている。
「ねぇ、エセルト、懐かしいわね」
赤髪の少女――シャーリーは崖から見下ろした景色をその視界に収めながら、そんな言葉を紡ぐ。
その隣には当たり前のようにたった三か月で魔王を倒した歴代最強の勇者――エセルトがいる。美しい黒髪黒目の少年は、少女の隣で柔らかい笑みを溢している。
その何処までも優しく、幸せそうな笑みは、昔のエセルトを知る人たちからしてみれば驚きに値することであった。
何故ならシャーリーと結婚する前までのエセルトという少年は、一言でいうなれば無という言葉が良く似合う少年でした。
誰にも興味を示すことがなく、何をするにも笑うこともなく――ただ、勇者としての使命を全うしようとしていた……。そんな、決して寡黙で冷徹な少年だったのです。
だけど勇者は、妻になった少女と過ごす中でその表情を柔らかくしていった。今までの人形のようだった姿からは想像できないほどに、年頃の少年らしく変化していったのです。
今まで少女が勇者に薬を持ったのではないか、少女は勇者に相応しくないなどと口さがなく言っていた人々も、そんな勇者の変化に”勇者は愛を知り、人の心を知った”などと口にするようになっていた。
――勇者の少女に対する愛情が、周りが思っているよりもずっと深く、ずっと執念深いことは当人である二人しか知らない。
今、二人が来ている場所は何度目かの人生の中で訪れた場所であった。何度目かの人生……というのは、エセルトがシャーリーを生かすためだけに数えきれないほどの人生をやり直したそのうちの何処かの人生ということである。
魔王討伐に置いて愛しい少女が死ぬことが認められなかったエセルトは、神にやり直しを望み、何度も何度も少女が生き残るために繰り返した。——そしてようやく愛しい少女が隣に笑う未来をつかみ取ったのが今回なのだ。
この場所は一回目の時や、これまでの複数回の繰り返しの中で訪れた場所だ。後半のエセルトはすっかり魔王退治に慣れ切ってしまっていて、この場所を訪れることもなかったが、繰り返したエセルトにとっても、思い出したシャーリーにとってもこの場所は大切な場所である。
服屋さんで働いていたシャーリーの雇用契約期間が終わり、少年と少女はこれまでの繰り返しの中の大切な思い出の場所を巡る旅に出ていた。
同じ村出身とはいえ、全く持ってかかわりのなかったエセルトとシャーリーが結婚をしたということで周囲は騒がしかったのだ。その事へのわずらわしさや、折角二人で共に居れる未来をつかみ取ったのだから思い出を巡りたいと思い、彼らは街を後にした。
エセルトのことを引き留めようとする王侯貴族は多かったが、エセルトにとってみれば勇者という地位はどうでもいいものだった。ただシャーリーがいれば他のものはいらない、寧ろ繰り返しの中でシャーリーを何度も殺す要因になった連中と関わりたくないとさえ思っていたのだ。
そのためさっさとエセルトとシャーリーは街を出て、ふらふらと色々な場所を巡っている。
「いい天気ね。お昼寝でもしたい気分だわ」
「昼寝するか?」
「でも危険じゃない?」
「……大丈夫。ちゃんと魔物などが入ってこないようにしておくから」
魔王を倒したとはいえ、魔物が世の中に存在しないわけではない。魔王が存在し続ければ、魔物は力をつけ、どんどん数を増やす。また魔王は魔物を統一する力を持つため、魔王というものは顕現したら勇者が倒さなければいけないが、世の中には魔物は生息している。
エセルトとシャーリーは平然とこの場所でのんびりとしているが、本来ならばこの崖の上は魔物が溢れる危険な場所でもあった。
勇者であるエセルトと、記憶を思い出したシャーリーからしてみればそこまで危険な場所でもないが。
エセルトの言葉にシャーリーは花が咲いたような笑みを浮かべて、「ふふ、じゃあ眠るわ。膝貸しなさい、エセルト!!」と言葉を放ち、エセルトの返事も聞かずに、足を延ばして座っているエセルトの膝に頭を乗せる。そしてものの数分で寝息を立て始めるのであった。
エセルトは気持ちよさそうに眠り始めた愛しい少女の頭に手を伸ばし、軽く撫でる。エセルトの事を信頼しきっていて、幸せそうに眠るシャーリーを見ると幸福感と、緊張が芽生える。
……エセルトはシャーリーと、体の関係を結んだものの、この繰り返した長い時間の中で一度も自分から手出しが出来なかったほどヘタレなので、何だか無償にドキドキしていたりもするのだ。
シャーリーの寝顔をエセルトは見つめる。愛しい少女の寝顔だからこそ、幾らでも見ていられる。いや、寝顔だけではなくシャーリーの事だったらエセルトは幾らでも飽きもせずに見つめられるだろう。
シャーリーの寝顔を見据えながら、エセルトは思う。
自分がこんな風にシャーリーと共に幸せになれる、なんて思ってもいなかったと。こんな風に幸せを感じられるのはシャーリーのおかげだと……。
*
エセルトという少年は、それはもうシャーリーという少女の事が好きである。大好きである。
誰も勇者という立場であるエセルトに対して、「何処か好きなの?」などといった野暮なことを聞くこともなく、表情豊かになったとはいえ、どれだけシャーリーの事を好きかを敢えて周りに話すような性格でもないので露見はしていないが、それはもう大好きである。
シャーリーという少女を諦めきれないからと、数えきれないほど繰り返した人生。その中で他の誰かに目移りすることなく、ただシャーリーだけを見つめて、執念でシャーリーの生きる道をつかみ取ったような少年だ。その事実は当人たちしか知らないが、知るものがいたら人によってはドン引きかもしれないほどの執着心だ。
ちなみにシャーリーも把握はしていないが、この勇者、繰り返した人生の中でシャーリーとの思い出やシャーリーの記憶だけはきっちり全て覚えている。他のどうでもいいと思った事は記憶の彼方に行っていることも多いが、シャーリーのことだけは聞かれれば悩む素振りもなく答えられるぐらいである。
この崖は、最初の人生でただの村人であったエセルトとシャーリーが仲間たちと共に魔物退治を行い、休憩をした場所だ。
星空の下で、シャーリーと話した記憶をエセルトはすぐに思い起こすことが出来る。
『エセルト、魔物って怖いわね』
エセルトが心配だから、白魔法の適性があるからと魔王討伐の旅についてきた少女は、魔物の脅威を実感して震えていた。
エセルトだって突然勇者として旅立つ事になり、恐怖心も芽生えていた。だけど、大切で愛しい少女が目の前で震えているのだから自分がしっかりしなければとエセルトは思っていた。
『ああ。怖いな。でも俺とシャーリーならきっとどうにでも出来る』
『……その自信は何処からくるのよ?』
『事実だから』
エセルトは、他の勇者パーティーのメンバーなんてどうでもよかった。ただ、シャーリーがいてくれるだけで不思議と力がわいてくるのは事実だった。寧ろシャーリーのために、魔王を倒そう。シャーリーがいるから頑張ろうと思っていたのだ。
恥ずかしくてそんなことは本人に言うことはなかったけれど。
『そうね! 私とエセルトが揃ったら無敵だもの!』
エセルトの言葉にシャーリーは気持ちを持ち直してそんな風に笑った。
そして次の瞬間にはエセルトの手を引いて、ごろんと草むらの上に横たわった。
シャーリーと至近距離で寝転がった当時のエセルトは、年頃の少年なこともあり、思わずばっと離れようとする。だけど、シャーリーに手を掴まれて起き上がることは出来ない。無理やり立ち上がることは出来たかもしれないが、大事なシャーリーの手を振り払うことなど出来なかった。
そしてされるがままに寝転がり、「見てっ」というシャーリーの言葉に従って、空を見る。
そこに広がるのは満天の星空だ。
キラキラと光る夜空の風景。それを見て「綺麗ね!!」と笑顔を浮かべるシャーリー。それに同意するようにエセルトは頷く。
『ねぇ、エセルト。また此処に来ようよ』
『此処に?』
『ええ。またエセルトと此処に来て、こうして夜空を見上げられたらって思うの。その時は魔王を退治した後だろうけど、絶対に二人とも無事で、此処に来ようよ。約束よ!』
今にして思えば、それはシャーリーの願掛けのようなものだったのだろう。魔王退治がちゃんと成功するかどうかわからず、シャーリーは心のどこかで不安がっていたから。だからこそ、絶対に此処に戻ってこようと約束をしたのだ。
その約束を叶えようね、また見ようね、という願掛け。
最初の魔王退治の旅でのエセルトは、シャーリーがいなくなる未来なんて考えてもいなくて「ああ」と何も考えずに頷いていたのだ。
それは今まで叶わなかった約束。
一番最初の人生で約束を交わし、繰り返してきた人生の中で、魔王退治後に此処にくるのは今回が初めてだ。
エセルトはシャーリーの寝顔を見つめながら、ああ、やっとだと胸の奥からじんわりと何かがあふれ出るのが分かる。
やっと、シャーリーが隣にいて此処にこれた。やっと、シャーリーの事を死なせずに此処までこれた。
そんな思いでいっぱいで、シャーリーが隣にいてくれる軌跡に、幸せに胸が熱くなる。
ポタリと、何かが落ちた。
昔の記憶を思い出し、感慨深い気持ちになったからかエセルトの瞳からは涙がこぼれていた。
――嬉しい時だって、人は泣けるのだ。
そんな当たり前の感情を、エセルトはまた思い出した。シャーリーと結ばれ、シャーリーと共に居られて、一度目の時の自分が顔を出しているのが分かる。
数えきれないほど過ごした人生は、シャーリーを生き延びさせるためのものだった。その中で精神は擦り切れ、息はしていてもエセルトはちゃんと生きているとは言えないほど無感情で生きていた。でも、今のエセルトはちゃんと生きている。
「エセルト……? 泣いているの?」
気づけば、膝枕をして眠っていたシャーリーは目を開けていた。そして目の赤いエセルトを見て心配そうな顔をしている。
「どうしたの? 何かあった? 怖い事でもあった?」
勇者であるエセルトに、そんな言葉をかけられる少女などシャーリーぐらいだろう。
そのシャーリーの物言いにエセルトは思わず笑う。
「いや。嬉しいんだよ。シャーリーとこうしてまた此処に来れたことが。約束しただろ。魔王退治をしたらまた来ようって」
そんなエセルトの言葉にシャーリーは少しだけ考えるような仕草をして、思いいたったのか「よく覚えてるわね」と起き上がりながら言う。
「シャーリーの言葉なら何でも覚えてる」
「あはは、何よそれ。でもそうね……、私もまた此処にエセルトと一緒にいられて嬉しいわ」
シャーリーは信じていなさそうな言葉を告げて、エセルトをじっと見つめる。
「エセルト」
そしてその名を呼んで、気づけばエセルトの唇をシャーリーが塞いでいた。……普通逆ではないかと思われるかもしれないが、この二人は今の所こんな調子である。
エセルトはシャーリーに自分から口づけをしたりすることが最近はあるものの、シャーリーが満足するほどグイグイこないので、シャーリーから行動を起こすことも多いのだ。
口づけをして幸せそうに笑う二人は、夜になるまで崖で思い出話に花を咲かせるのだった。
*
あはははは。勇者も彼女も幸せそうで何よりだよね。
こんな幸せな二人を見れると、僕も嬉しい。ずっと僕も勇者と彼女の人生を見つめてきたから。
勇者はどんどん、精神をすり減らしていって、徐々に感情がそがれて行った。けれど、今の勇者は勇者になった当初の頃の勇者に近づいてきている。
僕はそのことが嬉しい。
まるで魔王を倒す機械のように、ただ魔王を倒して彼女をよみがえらせるというのを繰り返していた勇者を見るのは楽しいんだよね。
……まぁ、彼女はともかく勇者は僕がこれだけ覗いているの知ったら怒りそうだけど。どうせ、僕が見ていることなんて分からないだろうし……。
そんなことを考えながら、勇者と少女を見守り続けた神は、今もなお勇者と彼女の事を見守っている。
二人の幸せな光景を見ると、神は思わず笑みを溢してしまうのだ。
*
思い出巡りの旅は、もちろん崖だけではない。
それからも勇者と彼女の思い出巡りの旅は続く。ただ勇者や彼女にとって思い出の場所や思い出の人というものが、今回の人生でも確実に存在しているわけではない。ただでさえ今回は生まれた時からエセルトは人生をやり直した。その影響もあり、色んなものが変化している。
そもそも、前の人生では親しくしていても、今回は一切かかわりがなかった人もいるのだ。
そういうわけで突然勇者と少女の来訪を受けた者はそれはもう驚いたものだ。勇者と少女は自分が勇者とその伴侶であるということを進んで口にしたわけではない。だけど分かる人には勇者とその伴侶だと分かるし、そもそもそういう存在であると分からなかったとしても勇者と少女の纏う雰囲気は普通とは異なるものである。
「ここはかわらないわ」
「そうだな」
「色々違うはずだけど、変わらないものがあるのは嬉しいわ」
とある酒場でエセルトとシャーリーはそんな会話を交わしていた。店主や常連からすれば、その会話の意味は分からなかっただろうが、この酒場はエセルトとシャーリーが魔王退治のために情報収集をした場所だ。
「ご注文の品になります!」
そう言って料理をエセルトとシャーリーの前におく茶色の髪の少女またエセルトとシャーリーにとってはかかわりのあった少女である。
――勇者様とシャーリーちゃんは仲良しなんだね。大丈夫だよ、勇者様はシャーリーのこと、大切にしてるんだから。
この街を訪れ、王女様達に心ない言葉をかけられ落ち込んでいたシャーリーを慰めてくれた人だ。無邪気な笑顔と共に告げられた言葉にシャーリーは心が楽になったのを覚えている。
けど、今世ではシャーリーは少女と話したこともなければ、この街に訪れたことも初めてだった。
だけど――、例えば向こうがそういうやり直しの記憶を一切覚えていなかったとしてもシャーリーが心を軽くしてもらった事実はかわらない。
なければ、作ればいいのだ。
「――美味しいわ。この料理は誰が作ったの?」
シャーリーは少女と絆を結びたいと話しかけた。
――例えば、エセルトとシャーリーが結婚したことで口さがない事を言う人がいたとして。
――例えば、自分たちが大切にしている人や場所が全て今世ではそんな思い出がなかったとして。
ならば、本当にしてしまえばいい。今世でも繰り返した人生の中で思い出と残っていることを実際にやって、今まで絆を結んでいた人と仲良くなればいい。
前向きなシャーリーはそう思った。勇者であるエセルトとその伴侶であるシャーリー。その二人が関わることでもしかしたらその人の人生は変わってしまうかもしれない。歩んできた人生が違えば、過去に救われたとはいっても、目の前の人は前とは違う人である事には変わらない。それでも、シャーリーは助けられた人には声をかけたいし、絆を結びたいと思った。
魔王討伐を終え、世界が平和になったからこその願い。
その願いをエセルトは尊重した。
そしてエセルトもまたシャーリーを救うまでは周りに関心を持たずに過ごしていたが、今はシャーリー以外の親しかった人たちに気をかけるぐらいの余裕は出来ている。
柔らかく笑うエセルトに、シャーリーは安心する。
……最も今までとっつきにくかった勇者が柔らかくなったと、変な勘違いをするものはいるかもしれないのでそのあたりは気を付けなければならないと思っているが。
エセルトとシャーリーは幼馴染で、昔から仲良くしていて、思いあっている。
そんな二人にとっての真実は、周りにとっては嘘であり、周りは一切記憶にない記憶だ。
けど、それを本当にしてしまおう……と、二人は思い出を作り、思う存分仲良し具合を周りに見せる。
「ねぇ、エセルト。あんたまたモテモテになってるわよ?」
「……どうでもいい。シャーリーも、さっきの男、見てた」
「あはは。エセルト不機嫌そうだったもんね。でも安心しなさい。私はエセルトの傍を離れる気はないんだから。あんたが嫌っていってもエセルトを一人になんかしないんだから」
「ああ。俺も……、シャーリーを手放さない。いや、いやだっていっても手放せない」
――もっと我儘になりなさい、と前にシャーリーはエセルトに言った。もっと欲を出して、我儘になってほしいと。そして欲を出したエセルトが見せるのは独占欲だ。
前よりも感情を外に出すようになったエセルトは、よく嫉妬をするようになった。そしてシャーリーとあれをしたいとか、これを食べたいとかそういう言葉も口にするようになった。
それは周りからしてみれば、面倒な男に見えるかもしれない。
けど、シャーリーはエセルトがちゃんとそういう我儘を言うようになったことが嬉しかった。自分が好きだという思いを抱えているように、エセルトも同じ気持ちを抱えてくれていること――、たったそれだけでシャーリーは胸がいっぱいになるのだ。
「ふふ、いいわよ。その独占欲、上等よ! 私もエセルトが誰かに取られるんじゃないかって心配だもの」
「そんなこと、ありえない」
「即答してくれて嬉しいわ。ねぇ、エセルト、思い出を見て回ったあとはどうする? まだまだ先の話だけど、定住するにしても何処がいいとかある? 生まれ育った村だと目立ってしまうし、どうせならエセルトと新天地で思い出を作るのもありかなと思うのだけど」
「そうだな。煩わしいものが少ない方がいい」
「そうね。なら一度も行った事ない場所とかいいかもね。色んな所にいってお気に入りの場所探しましょうよ。私は自然が豊かな場所がいいわね。エセルトと一緒にお店でもやるのもいいかもしれないわ。それとも狩りとかで生計を立てるとかもありよね」
「シャーリーと一緒ならどれでもいい」
「もー、そればっかりね、エセルトは」
シャーリーは仕方がないなとあきれたように告げれながらも、嬉しそうに笑うのだ。
勇者と少女は二人で未来についての話をする。今まで出来なかった、将来についての話。その話が出来るだけでも二人は嬉しくて、幸せだった。
*
うわ、勇者凄いだらしない顔をしている……。本当にこんなの見てるって知られたら怒られそう。
でも神の仕事って結構色々大変だからね。こうしてたまに気晴らしをするのは大事だからね。
これからあの二人がどんなふうに人生を歩んでいくだろうかとそれを見るのが僕は楽しみなんだよ。
これからも、二人が幸せでありますように。
僕が願うだけでは効力なんてないけれど、それだけを願わせてもらおう。折角手に入れた幸せなんだから、幸福を願うのは当然だよね。
神が一人を贔屓するなんてしてはいけないっていう人はいるかもしれないけど、神にも感情はあるからね。僕は思う存分、二人が幸せになりますようにって気に掛けるよ。
神は、笑う。
幸せになりますように、とただ願い、二人の様子を見つめるのだ。
―――――これは魔王討伐を終えたあとの、とある勇者ととある少女の物語~思い出巡りの旅~
(何度も繰り返し続けた勇者と少女は思い出をまた塗り替えていく。そして勇者と少女で未来の話をして、幸せそうに微笑むのだ。)
これは魔王討伐を終えたあとの、とある勇者ととある少女の物語 池中 織奈 @orinaikenaka
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