最終話 どうしても、生きたくない
Aくんはすっきりと、はっきりとした口調で、でも、死んだ表情をしたまま言葉を口にした。数秒の沈黙の後、Bくんは、「俺も、そうしたい」と、そう言った。
その後、それに向けた計画を練った。決行は平日の朝、通勤通学の時間である朝8時になり、あとは場所を決めるだけとなった。
その日は解散し、肝心の場所は、お互いが下見したうえで、電話で決めることにした。条件は、「十分な高さがあり、上に登ることができること」「2人が知っている場所であること」「人目に付くところであること」の3つである。つまり、当日は飛び降り自殺という計画だ。
3日後、両者は電話で意見を交換し合った。その結果、場所は、2人が昔住んでいたマンションの屋上に決まった。決行日は次の月曜日にした。
それから決行日まで、2人は準備を始めた。まず、荷物をある程度まとめ、高校を退学し、残りの貯金で食べたいものを食べた。決行日前日の夜は、2人でステーキを食べに行った。最後の食事であることを噛みしめながら食べ、そして、夜が明けた。
決行日当日の朝、2人はマンションの前で待ち合わせしていた。服装はそれぞれの高校の制服だ。そのマンションには、Bくんの叔母が住んでいるため、すんなり入れた。Bくんは叔母に、今日、Aくんと死ぬことを予め相談してある。最初は反対されたが、Bくんの顔を見ているうちに、断れなくなった。叔母は2人を抱きしめた後に、「辛かったんだから、ゆっくり休んでおくれ。」と言った。2人は泣きながら「ありがとう」と、お礼を言い、屋上に向かった。
午前7時55分、マンションの外には、何も知らない人たちや、Aくんを寄ってたかっていじめた人、Bくんの知り合いなどが、これから2人が飛び降りることも知らずに平気で歩いている。2人はそんな光景を見ても何も思わないが、AくんはBくんに、BくんはAくんに、「ありがとう、これからも一緒だよ」と言い、手を繋ぎ、大空を羽ばたいた。その時の顔は、何ヶ月ぶりの笑顔だったという。
数日後、2人の葬式を終え、Aくんの遺品整理をしていた親戚の人は、Aくんの遺書を見つけた。そこには、今までの苦労、気持ち、葛藤、恐怖、絶望など、今までの全てが書いてあった。手紙の最後の一文はこう書いてあった。
「ごめんなさい。せっかく引き取ってくれたのに。でも、こんなに自分が責められる世界なら、どうしても、生きたくないんだ。」
どうしても、生きたくない ぼーがす @Bogus
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