冷やしたスイカどこいった?

しょもぺ

第1話 牛乳を飲むと仙人と呼ばれる女が中学の時にいたよ

ぼくの名前は、『論田ルキア』 (ロンダ ルキア)


お察しのとおりキラキラネームの代表格だ。


小学校5年生。成績、中の下。 好きな女の子はまだいない。


そんなボクが、今年の夏に起こった不思議な出来事を話したいと思う。



朝起きて……と、いっても時計の針は午前10時30分を過ぎていた。

セミのうるさい鳴き声と、ムシムシと暑い部屋の空気が寝苦しくなって目が覚める。


寝室から出ると、なにひとつ音のしない静まり返った居間へと向かう。

両親は共働きなので、すでに家にはいない。テーブルの上には、菓子パンと300円が置かれている。これで朝飯と昼飯を食えということだ。


ボクは寝癖のついた頭をボリボリと掻くと、菓子パンの袋を開けてちぎって口に押し込む。いいかげん朝から甘いパンはくどくて好きではないが、腹が減れば何でもおいしく感じてしまう。パサパサとしたパンが口の中でざわつくので、牛乳かお茶を取り出そうと冷蔵庫を開ける。


冷蔵庫の観音開きの扉を開けると、その中央にスイカらしき物体があった。

納豆とか豆腐とかヨーグルトとかが横に並べられていて、スイカはその奥にあった。


ボクは、横の扉の牛乳に目が行ったので、「あぁ、スイカがあるなぁ~」ぐらいにしか感じなかった。だって、スイカってあまり好きじゃない。

ほんのりした甘さに水っぽい酸味があって、どっちつかずの味だからだ。


ボクは牛乳をラッパ飲みして、お決まりの口から垂れた牛乳を手でぬぐった。

そして、牛乳をまた元の場所に仕舞う。ボクはどちらかというと、キッチリした性格のようで、ひとつひとつ片付けないと気がすまない。

それに、親はどちらかというとだらしない性格で、マヨネーズのフタをしてなかったり、ハミガキのフタをしなかったりと、見ていて気分が悪くなる。


そんな親のことを考えながら、少し溜息交じりにふぅと息を吐く。


(…………???)


なにか。何かがおかしいと、ボクの脳に命令がくだる。

今、冷蔵庫を開けて牛乳を取り出し、そしてそれを仕舞う。

その些細な行動の中に、何か違和感を感じた。


ボクはもういちど冷蔵庫を開けた。

そして、さっきスイカだと思って、あまり気にも留めなかった物体を、もう一度よく見てみる。


それは、スイカではなく、人間の生首であった。

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