4
◆
戦闘準備は整った。
街の外壁をAランク冒険者が囲み、その遥か周りを黒い鎖が囲む。
その外にただひとり、ルー・ヴォールクは佇む。
見つめるは沈みゆく太陽。
太陽は沈み、昇るもの。
天龍が其処から現れるなどという確証は無い。
それでも、ルー・ヴォールクには確信があった。己の内に潜む魔狼が囁くのだ。
今やこの魔狼の姿になっても、所有権はルー・ヴォールクにあった。内に潜む魔狼は、ただ己を通して世界を眺めるだけである。
誰かの近付く足音に、ルー・ヴォールクは後ろを振り返る。
「……セルパンさん。来てくれたんですね。それに、皆さんも」
振り返った先にいたのは、未来視を持つ男を始めとした五人のSランク冒険者だった。
未来を見る男、セルパンが小さく微笑む。
「どうやら君の中にいる魔狼は、君より私へ未来を見せる方が楽らしいな。三日前から慌てて全員を集めて回ったよ」
他のSランク冒険者四名は、セルパンが冗談っぽく笑いながら発言したことに対し驚く。
それはまるで、最強の男と呼ばれ続けていた彼が、新たな最強の男の登場によって、ようやく肩の荷が降りたとでも言うかのような、そんな雰囲気すら感じさせた。
「今度は天龍だけじゃないらしいな。だが、こちらだって魔狼……君一人では無い。君が全てを背負う必要などない。天龍以外は我々に全て任せるが良い」
ルー・ヴォールクはセルパンの目を見返し、力強く頷く。
「頼みます」
やがて日が暮れる。
太陽が地平線に沈み、辺りが暗くなる。
けれどもそれは数瞬のこと。
太陽が沈んだ先、そこから黄金が輝く。
天龍。
身体を包むように交差させた巨大な翼。
それを大きく広げ、天へと羽ばたく。
純白の巨躯。
黄金が象る円環。
それらを見ても、もう震える事はない。
今の彼には守るべき大切な人がいる。
ルー・ヴォールク。魔狼は、天に吼えた。
■
罪を犯した。
私は愛した。貴方に愛されたいと願って。
私は欲した。貴方の全てを。
私は憂いた。貴方を思いながら。
私は飾った。貴方に私だけを見ていて欲しくて。
幾度死のうとも罪は消えない。
私が犯した罪も、貴方が犯した罪も。
けれど。
けれど、貴方だけは救ってみせる。私は今でもずっと、貴方を愛しているから。貴方に、愛されたいから。
その為に、私は貴方を殺します。
貴方の罪は。
貴方に背負わせてしまった罪は、私が背負います。
だから。
だから、もう――――。
□解放
罪は罪。罪には罰を。永劫の蛇は、月と太陽を見て嗤う。
◆
魔狼が天龍に向かって駆ける。だが、待ち受ける天龍はまだ動かない。
天龍が背負う日輪が、徐々に暗く染まっていく。
黄金から灰へ、そして黒へ。
円環が蠢く。円は千切れ、再び小さな輪を形どる。
作られた輪は四つ。それらが黒白の輝きを発すると、輪の中央より異形の使徒が、瘴気を発しながら這い出て来た。
四体。
個々の形は違えども、放つ威圧はどれもが既知のそれを遥かに凌いだ。
かつての最強の男、セルパンが呟く。
「奈落の民でも引き摺り出したか」
古き言い伝え。
地の底には八体の悪魔が罪を抱えて眠ると言われる。
出てきた異形の使徒たちが言い伝えにある悪魔かはさておき、現れた四体は確かめるまでもなく、いずれもがSランク級の怪物だった。
さしものSランク冒険者達も息を呑む。
「……魔狼が見せた未来を信じるしかあるまい。皆、私が話した通り頼むぞ。そうすれば命は繋がるだろう」
セルパンの声に、ルー・ヴォールクを除いた現存するSランク冒険者はそれぞれ手に武器を構えた。
衝突した魔狼と天龍を無視し、Sランク冒険者へと迫る怪物に、彼らもまた駆け出し、悪魔と対峙した。
◆
街の中は平和だった。
外壁の周りをぐるりと囲む鎖がとぐろを巻き、魔物が近付けばまるで鎖は生きているかの様に魔物を感知して襲う。
漏れた魔物はAランク冒険者が危なげ無く処理した。
街は平和であったが、それでも人々の不安は消えない。
遥か遠くで戦っているはずの天龍と魔狼。
その余波だけで何度、地面が揺れ動いた事だろうか。遠くの地は既に地形が変わってしまっていた。
そして、新たに現れた異形の四体。
その存在が何よりも市民達を不安に駆り立てた。
悪魔。
それはまさに恐怖そのもの。
絶望であり、悪の権化。
彼らに比すれば、この世の悪、罪とはなんと軽いものだろうか。悪魔、その存在そのものが罪であるかの様に。
天地を揺るがす天龍とは違い、悪魔らは一切音を生じさせなかった。
地を踏みしめ歩けども、砂の擦れる音も、地を蹴る音も、空気の動きさえも無く。口を開け放たれた咆哮は振動がなく、それなのに絶望的な程の威圧感を孕む。まるでそれら四体は、この世の理から隔絶されているかのようだった。
歴戦のSランク冒険者も、その異様さには僅かに驚きを見せていた。
それでも未来視の男、セルパンが魔狼より教えられたという“手順”によって、着実に悪魔の命を削っていく。
両者共に、無傷とはいかない。
互いが互いの命を、少しづつ奪ってゆく。
守られる街の人々は、彼らの無事を祈る事しか出来なかった。
◆
魔狼と天龍が衝突する。
二体の怪物同士の衝突は、その余波のみで地形を変えてしまった。風圧のみで固い大地を削り、其処此処に巨大な、大地の窪みを造り上げる。
空にあった僅かばかりの雲は、同じく余波で吹き飛び、無色の空が姿を現す。
地平線の向こうから太陽が登り、空を赤く染め上げて黄金に輝く。反対側の地平線からは月が昇る。月は空を青く染め、白銀の光で大地を照らす。
世界の法則が崩れ去る。
それでも、両者は止まらない。
■
懐かしい夢を見た。
此処ではない場所に座り、微笑み合うふたりの男女。在りし日の私と君だ。
幸せなその夢は、暗く染まり、途切れた。
――私の声はもう届いていないのでしょう。
いいや、届いていた。君の声も、君の思いも、君の苦しみも。
届いていなかったのは、届けられなかったのは、私の方だった。
君は私の罪を全て背負うつもりのようだが、そうはさせない。君に、罪は背負わせない。
君を愛しているから。
君が私を愛してくれているより、私の方がより君を愛しているから。
だから君に罪は背負わせない。
全ての罪は私が背負い、在るべき場所へと還す。
そして、私たちにこんな罰を与えた彼と、君を騙し、悲しませたあれは絶対に許さない。
それらを止めることの出来なかった、私自身も……。
これで何度目だ。
私は、私は――――。
依代よ、傲れ。君にはそれだけの力がある。
依代よ、喰らえ。欲するものは奪い、掴み取れ。
依代よ、棄てよ。この世の規律など守るに値しない。
依代よ。怒るがいい。君にこの様な宿命を背負わせた、私を。
依代ルー・ヴォールク。私の最後の因子よ。どうか頼む。彼女を救ってやってくれ。無限の牢獄に閉ざされた彼女を。私の最愛を――。
□繋ぎ紡ぐ糸は永遠の鎖
◆
その日、世界の割れる音が響いた。
余りに呆気なく。余りに容易く、異物は世界へと紛れ込む。
世界に空いた穴が四つ。
穴の向こうには黒白の光が漂い、瘴気がこちらの世界へと溢れ出す。それは天龍が繋いだ先と同じ世界。
這い出てくる四体の異形。
それは罪の象徴。
それは悪の権化。
それは理の外側。
この世界に其れ等がもたらすは絶望。
八つ獄の民が全て揃う。
S級冒険者を囲むと、音の無い雄叫びをあげた。
◆
“セルパン”という人物は、造り物だった。
人々を騙すための演者であり、寡黙、冷静、未来視、Sランク、最強の男、全てが全て、作りものであった。遥かな高みから人々を見下す存在が、愚かな人間を観察し、戯れの為に創り上げた操り人形。
全ての人々が憧れ、称え、時には畏怖する。その事が其れにとって、何よりの悦楽であり、それを満たす為だけの存在。
この世は己の手のひらの上、全てが思いのまま。それにとってその事実は揺るぎようのない物で、揺るがない筈だった。
それが今――。
◆
「魔狼ッ! この私を騙したかッ!」
セルパンが叫ぶ。その顔に浮かぶのは誰も見たことの無い、怒りの形相。騙すのは其れの区分、領域。そう思っていた彼にとって、己が騙されたという事実は、到底許されざる事だった。
セルパンが叫ぶ間に、他のSランク冒険者は塵を払うかのように葬り去られた。
八体の異形がセルパンを取り囲む。
「なんだその目はッ。この私を憐れむつもりか。この私をッ――」
セルパンの身体が深緑へと染まっていく。
肌には鱗の様なものが覆い始め、その目の内にある瞳孔は縦長へ。
「見下すなッ!」
膨張するセルパンの気配。
だが。
悪魔はそれを許さない。
見えない何かがセルパンの体を地べたへと圧し潰す。
セルパンは歯を噛み締め、圧力に抗いながら声を上げた。
「ぐぅ……っそったれがぁ……っ! ヴィペェーールッ!! 手を貸せ! コイツらを一掃するぞッ!」
その声は、同胞への呼び掛け――。
◆
街の中。
空の穴から新たに現れた四体の異形の姿に、街中は騒然としていた。
戦いの様子は街を囲む鎖の隙間から覗くことしか出来ずとも、それらが先の四体と同等の存在だと、その場の全員に理解ができた。
五対四、それで均衡していた。それが五対八となれば? 馬鹿にでも結果は想像出来る。
そんな絶望的な状況の中、ひとりの女冒険者が不意に眉を潜めた。
「……無理よ。だから言ったじゃない。油断はするなって」
ポツリと呟いた。
隣にいた小さな友人が「どうかした?」と反応をする。
「何でもないわ」
新婚であるその友人にそう返すと、「そ」とだけ返ってきた。
女冒険者は空を見上げる。
「……また今度、頑張りましょう」
◆
ルー・ヴォールクの視界に、八体の異形に取り囲まれたセルパンの姿が映った。だが助けに向かう余裕など無い。天龍の猛襲はどれか一発でも当たれば、致命は避けられないものばかり。
――構うな。
胸のうちで魔狼が囁く。話せたのか。そう思う間にも魔狼は言葉を続ける。
――罪の番人はあの男しか狙わない。君の愛する者の心配も必要ない。保証する。だから今は彼女――天龍を討ち倒す事に集中してくれ。
ルー・ヴォールクは頷く。
はたしてその行為が伝わるのかは不明だったが、魔狼は「頼む。それからすまなかった」とだけ言い残し、それ以降、魔狼の声が聞こえる事はなかった。
何の確証もない魔狼の言葉は、しかし、不思議とすんなりと受け入れられた。
ルー・ヴォールクの身体に力が湧いてくる。
愛する者の無事を確信出来たからなのか、それとも魔狼に頼まれたからなのか。いずれにせよ、天龍を倒さねば終わらない。
ルー・ヴォールクは一度地に足を付け、天を見上げて咆哮をあげた。
◆
最初に対峙した時は数日を掛けていた戦い。それが一日で終わろうとしている。されど戦いが緩くなるわけではない。数日掛けて消費するはずだった熱量が、この一日に濃縮された。
空間が歪む。
戦いの余波だけで魔物は容易く吹き飛んでいき、街すら吹き飛んでしまってもおかしく無い衝撃が、絶え間なく周囲一帯を襲っていた。
街が未だに無事であるのは、幸か不幸か、八体の異形が居たお陰であった。
二体の化け物と街の間に佇む、八体の異形。セルパンの亡骸を放置し、天龍と魔狼の戦いを傍観する彼らが、街に迫る余波を全て払い落としていた。
片手間に空間の歪みの修復すらもする八体の異形に見守られ、化け物同士の戦いは、終わった。
◆
天龍の亡骸が、光の粒子となって散っていく。桜の花びらが散るように、優しく風に運ばれ、遠く拡がって行った。
光の粒子が大地に吸い込まれると、緑の芽が顔を出し、花びらが咲く。大地は整えられていき、樹木が伸びる。天龍の亡骸を中心に、広く小高い山が出来上がり、緑豊かな森林が生まれた。
狼はその山頂で天を仰ぐ。隣合っていた月と太陽が、世界の法則に戻るため、離れていく。月は天高くで佇み、太陽は沈んでいった。
淡い青色の光を放つ月光が、狼を照らす。
狼はふと街のある方へ身体を向ける。
八体の異形は来たときと同じように、世界へ穴を空け、去っていった。
その向こう。
魔狼の作りあげた黒鎖の壁は、天龍の亡骸と同じ様に光となって散り、街へ降り注ぎ、傷付いたものを癒やしていく。
異形に葬られた筈の四人のSランク冒険者が、光に包まれ、街の中央で蘇る。
人々が喜びに湧く中、そこに未来視を持つ男の姿は無かった。
山の中に出来た小さな泉。
狼は水面に姿を映す。
一時の間、水面を見つめ続けると、すっと目を伏せ、一人の女性を思い浮かべた。
小さな鳴き声をひとつ。
開いた瞳に強い決意の光が生まれる。
それから少しおいて。
狼は街に向かって大きく吠えた。
■
黒い鎖が消えて、光が街に降ってきた。
揺れが収まって、きっと戦いが終わったのだと思う。
「終ったのか?」
誰かが呟く。
街の外側にいるAランク冒険者が、街の方に向かって何かを叫んでいる。
「魔狼が勝った! 魔狼が、天龍を討伐したぞ!」
みんなが理解をする為の一拍を置いて、街に歓声が溢れた。空気が震えている。
わたしも叫んで喜びたかったけど、そういうのに慣れていなかったから、小さく拳を握って小声で喜んだ。
みんな数年続いた戦争でも終ったかの様な喜びようで、更に、死んだはずのSランク冒険者が光に包まれて蘇ったのを見た街人の歓声は、まるで怒号のような勢いとなって空気を震わせた。
わたしは直ぐにルーの姿を見たくなって、走って街の外へと向かった。
ルーにお疲れ様と言いたくて。ルーに私が凄く心配していたと言うことを伝えたくて。ルーにもう一度しっかりと、二人の子供が出来た事を伝えたくて。名前だって、一緒に考えないと。
少しでも早く伝えたくて、私は街の外へと出た。
ルーが戦っていた方角、そこにはまるで戦いなど無かったかのような、見事な自然が溢れていた。
外にいた冒険者の話し声から、あの自然が天龍の亡骸から生まれたのだと分かった。
ルーはまだ、あの山の中にいるのだろうか。
姿が見えない。
少し待ってる間、以前のルーの話を思い出した。
怪我をしてるのかもしれない。
行かなくちゃ。
わたしが足を前に進めた、その時。
狼の鳴き声が空気を震わせた。
ルーの声だ。何故かそう確信出来た。
生きてる。そう分かって嬉しい筈なのに、わたしの胸のうちに、何か言いようのない不安が生まれた。
「ルー?」
ポツリと、彼の名前を零す。
おかしい。
彼が生きていて嬉しい筈なのに、先程の鳴き声を聞いた後、何故か不安が溢れてきて止まらない。
名前を呼ばなきゃ、彼が離れていくような、そんな気がした。
「ルゥーッ!」
わたしは柄にもなく、力一杯に叫んだ。
山は遠くにある。わたしみたいな小さな人間が幾ら大声を出したところで、向こうには届かないだろう。
そう分かっているのに、わたしは彼の名前を叫び、そして走った。
大丈夫、生きてる。ルーは生きてる。
「リュコス!」
わたしの名前を呼ぶ声。
でもルーの声じゃない。
わたしはその声の主に肩を掴まれて、走るのを止められた。
「何やってるの!」
何度も相談に乗ってくれた友人だった。
彼女が珍しく少し怒っている。
「“二人”で彼を待つんでしょ! あなたの身体に何かあったらどうするの!」
そう言われ、わたしは友人を見上げた。そして。……何も喋れなかった。ただ、説明のしようのない不安が襲ってきて、それを上手く伝えられる言葉が無かった。
「あなたは街の中で安静にしてなさい。私が行くから」
「でも……」
「別に、新婚の夫に手を出したりしないわよ」
いや、そういう事じゃなく。
友人も冗談を言ったのだろう、ふっと力を抜いて笑みを浮かべた。わたしも釣られるように少し身体の力を抜く。
少しだけ、不安な気持ちが安らいだ。
「良いから任せなさい。私の方があなたより速いしね。その代わり、デザート、また奢って貰うわよ」
わたしは友人の目を見返し、こくりと頷いた。
友人が走り出そうとする。
その時。
また、狼の鳴き声がした。
「待って……!」
わたしは友人を止めた。
「やっぱり、街で待つ。ヴィペールも、行かなくていい」
「どうしたの?」
「ルーは無事、だから」
そして、たぶん――――行っても見つからないから。
何故か、そんな予感がした。今、ルーを探しに山へ向かったところで、ルーは見つからない。ルーが見つからないように隠れる。きっと。
でも、ルーは絶対に帰ってくる。
これは確信出来た。
だって、ルーはわたしと約束したから。
絶対に帰ってくるって。
何より、ルーはわたしの夫だから。
だからわたしは、寂しがり屋の狼が早く帰ってくる様に、部屋を暖かくして。冷たいものが駄目な狼の為に、温かい料理を準備して待っている。
きっとそれで良いんだ。
だって、狼は家族を大切にする生き物だから。
絶対に帰ってくる。
だから。
「ずっと待ってるからね。……でも、早く帰って来てよ」
わたしは狼がいるであろう山を見て、そう呟いた。
狼の鳴き声が、再度、遠くの山に響いた。
■■完■■
■反転
――刻む針は
◆接続
――来たる
□解放
――
■■□■■
□□戻□□
【太陽と月の恋物語 古き蛇は偽りを抱く】
遠き日、雲の上、八つ獄の民ありて。
涙枯れ、骸は起き、いつかを夢見る。
世の果て、山河断たれ、腐敗す、人の世。
礼は至り、終わりは始まりと交わる。
神々の時代に生きしふたりの恋は泡沫へと散る。
死は滅び、生は静かに潜み、輪廻は世界に縛られた。
戻る刻、還る場所、全ては夢幻の旅路。
「やあ御三方。初めまして。お久し振り。覚えてる? 思い出せていないかな? 一先ず。約束を破るのはいけない事だと、それをよくよく覚えていてくれ。僕たちがいる此処は楽園だ。楽園は終わらないし、終わらせてもならない。永遠であるべき場所。けれども申し訳ない。まだ、不完全なんだ。それは謝ろう。ただ、それを含めて理解して欲しい。ん? いきなり何の話だって? その内に分かるさ。取り敢えずは、過ぎ去った未来の話、とだけ言っておこうか。いずれ理解する。気付く筈だ。君たちの誰かが覚えていて、変えてくれる。だから、それまではどうぞ。変わらない歯車の中で自由に生きてくれ給え。それもまた、ひとつの幸福なのかもしれないからね。――――さあ、前振りはこれでお終いだ。まずは……そう。お互いの自己紹介から始めようか。初めてのあの頃のようにね」
■■繋□□
夫は独り狼 黒沢夕 @you_kurosawa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます