第43話 リスター王とルーネ王妃

 ジェイク達一行はサルンティス王国の牢屋にぶち込まれた。

 彼等は別に捕まる必要がなかった。あそこで抵抗しても戦えるだけの実力はあった。

 そんな事をする為にここに来たのではない。

 謎のモンスターと暗躍する魔王に砂地獄の果ての3つの謎を追及する為にジェイク達はここにやってきたのだから。



 ジェイクは地面に胡坐をかいて座っていた。

 面白い事に皆が同じ牢屋に閉じ込められている。

 沢山の牢屋があるにはあるが、沢山の人々が捕まっている。


 今このサルンティス王国は危機に直面しているのに、捕まえまくっているのはどういう事なのだろうか?


 しかもごく普通の少年や、真面目そうな女性。にこにことしている人々。

 謎がさらに謎を生む。

 あのお婆さんに至っては害はないだろうし。まさか万引きとかをしたのだろうか?

 色々な可能性はあるけど、大抵は数割程度だし。


 ここの牢屋には沢山居過ぎる。ごく普通の人が。

 


 その為ジェイクは地面の冷たい石床に座って考えている。


 ネイリとレイデンはこちらを眺めているのだと視線を感じる。

 ミナラクとリックイは腕相撲をしている。


 本当にミナラクとリックイは気楽なものでいい、こういう時こそ気楽に考えて。



 何も結論が出ないまま考えていると、1人の男性と兵士達4名がやってきた。


「オレはゴードン将軍というものだ。お主達の事情を知りたいとリスター王が耳を傾けるそうだ」


 

 今までジェイクは胡坐をかいて座っていた。

 そのままジャンプすると立ち上がる。


「ぜひ話がしたいであります」


「よろしい、では全員出てこい」


 ゴードン将軍は4名の兵士にこちらを包囲させると、5人のメンバーは窮屈に感じながらも歩き出した。



 王城の曲がりくねった廊下という廊下を通る。

 地下牢がどこにあるか分からないが、ネイリ学長はちゃんと記憶しているようだ。


 玉座は1階にあり。大きな部屋に辿り着く。 

 巨大な門があり、ゆっくりと開かれる。


 するとそこには王様の4名の配下と妃がいた。

 もちろんリスター王と呼ばれた男性も座っている。

 顔は真っ黒の黒人であった、異不動堂としており逆らったら恐ろしい事になりそうだ。


「貴殿らはなぜ砂地獄の聖域からやってきた」


「サルンティス王国に向かっていたのですが。地面が割れて、落下しました。砂地獄の死体がありましたが、大きな空洞を歩き地下通路になり辿り着いた先があの豪華な扉でした。それを開くとこのサルンティス王国と繋がっていたのです」


「なるほど、やはり砂地獄の巣が崩壊を始めているようだ。君達の話は本当のようだ。金目当てなら砂地獄の死体を持って帰るからな、見た所お主達から砂地獄のオーラを感じないのでな、だから言っただろうゴードン、早計に処刑すべきではないと」


 

 ジェイクは唖然とした。

 あのゴードン将軍と呼ばれたおっさんはジェイク達を処刑しようとしていたらしい。

 そこまで馬鹿だったとは、心の中で突っ込まざる負えない。



「ですがリスター王よ、こやつらどことなく普通じゃないですよ」

「それだけで殺したら、戦争を何回繰り返せばよい」

「その為にこの将軍がいるのです」

「お前はバカなのか、1人の将軍がいるだけで全てを守れないではないか、責を負うのはこの僕だぞ、お前はバカで沢山の命を何度捨てる」


 ジェイクが手を上げると。


「なんだね?」


「牢屋にいた人々なんですけど、何をしたのですか?」


 するとリスター王は真っ赤になった。



「こんなゴードン将軍、お前は何をしているか理解しているのか、怪しいからと言って捕まえる馬鹿がいるか」


 リスター王の雷はゴードン将軍に落下した。

 ゴードン将軍はびくびくしていたが。

 将軍は落ち込んでしまって、もじもじとしていた。



「このゴードンはあなた様に将軍にさせてもらい、少しでも為になる事をしたくて」

「黙れゴードン、お前は今日で将軍職から解き放つ」

「そ、そんな、それだけは」

「うるさい、お前のせいで民が死んでは意味がないではないか、国とは民がいて初めて成り立つものだ。それが分からぬのか」


 ゴードン将軍は下を向いて独り言をぶつぶつ言いながら、大きな門から出て行った。

 それを追いかけるものはいなかった。



「まぁまぁ、落ち着いてリスター」


 ルーネ王妃が怒り狂っているリスターを宥めている。

 どうやらこの国は王様自体が腐っている訳ではないようだ。

 という事は民はどういう気持ちなのだろうか、最悪はゴードン将軍の勘違いで悪い印象を持たれている可能性だ。


「して、そなたらはなぜこのサルンティス王国にやって着たのだ?」


「はい、冒険者ギルドの依頼を受けてやってきました。連絡はこちらの冒険者ギルドに伝わっていると思われますが」

「そうだな、了解した。たった5名で炎の魔王、水の魔王、虫の魔王、動物の魔王を倒すとは並外れた力だな、君達はわざと捕まったな?」

「え」


「それは申し訳ない事をした。危なくゴードン将軍が切れたお主達に逆に処刑される所だったようだ」

「そんな事はしませんよ、ですが川に落とす事くらいはします」


「かっかっか、その通り、あおゴードンはどうしてああなってしまったのだ」

「恐らくゴードンはリスター王とこの国を大事に思っているのでしょう、不器用なのでしょうね」


「なるほどな、ただのバカだと思っていたが、考えようによっては違うか、確かに僕が彼を起用したのは命がけでモンスターと戦っていた。その後ろには沢山の民がいたのだから、あの気持ちを思い出して欲しいものだ」

「きっと思い出しますよ、それではサルンティス王国の冒険者ギルドへ報告へ参ってきます」

「済まないな、とんでもない茶番に巻き込んでしまった」


「それでも、いい勉強になりましたよ、信頼が間違った咆哮に向かえばああなると」

「そうだな」



 ジェイク一行は頭を下げて立ち去ることにした。


「してギビン商人よ儲け話はなんなのだ?」


 頭の中にギビン商人が記憶に宿るほど。

 心に残った。


 道案内してくれた兵士がいた。

 彼は城の外まで案内してくれた。

 どうやらサルンティス王国では階層を作る城はつくられないようだ。

 1階層だけの平野で王国が成り立っているのだろう。


 辺りを見回すと草は枯れ果てており、砂漠ではないが荒野のような地形となっている。

 ネイリが地図を使ってナビゲーションをしてくれる。

 皆はネイリに追いつけるように早歩きなっている。

 今は午後の3時頃になろうとしている。



 ひたすら歩き続けていながら、沢山の人々でグチャグチャになっていた。

 よく見ると怪我人ばかりであった。

 やはり未知のモンスターとの戦闘は彼等をここまで苦しめたようだ。


 

「これは早く解決しないと不味いな」

「あたいは今変な臭いを嗅いでいる。まるで化物のような、焦げた臭いだ」

「ああ、それなら俺様もだ」

「僕もだよ」

「そうかな変な臭いしないけどな」


 ネイリ、リックイ、レイデン、ミナラクが呟きあう。

 確かにジェイクの鼻にも気味の悪い臭いがまとわりつく。


「これは人を焼いてるのです。こちらへ来てください、冒険者ギルドはこちらです。ギルドマスターが待ちかねています。魔王を連戦で討伐せしものと」


 1人の熊の獣人の女性だった。

 熊の獣人にしては小柄ではあったが。


 

 ジェイク達は彼女に連れられて冒険者ギルドに入る事になった。

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時間経過でスキルポイントが上昇するチート冒険者~スキルコンプリートを目指せ~ MIZAWA @MIZAWA

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