第28話 一区切り、そして次へ
時刻は4時半 少し薄暗くなってきた。
そろそろ誘うか…
「那月」
「ん?なんですか?」
「観覧車乗りにいかない?」
俺は、今日の目的でもあった観覧車に、那月を誘った。
「いいに決まってるじゃないですか」
決まってはいないと思うが……
那月は笑顔で了承した。
「それではお次のお客様どうぞー」
案内のお姉さんが言う。
俺達の番が来て、俺と那月は観覧車へと乗り込んだ。
「今日、楽しかったか?」
「楽しかったですよ……もちろん」
登りはじめた観覧車から、景色を見ながら那月が答える。
まだ、目を合わせていない。
時間は有限だ。この観覧車はとても大きいが、
とはいえ話せることは限られている。
「最近、元気なかったよな」
ピクッ
とても小さい、細やかな反応を示す。
何か返事が来る前に、次の言葉を並べる。
「なにが、あったんだ?」
もうすぐ半分まで登るころだ。
那月はまだ外を見ている
「……言う必要が…どこにありますか?」
「まぁ、そうだよな。じゃあ………」
口の中が乾いている
少しだけ間を開けてから、続きを言う
「じゃあ、俺と、付き合って欲しい。
那月のことが、本気で好きだ」
那月は外を向いたまま、呟く。
「じゃあって…なんですか。もぅ、自信ありすぎじゃ……ないですか?」
「ハハッ、確かに。でも自信はないけど、今かなって思ったから」
「そう……ですか」
もうすぐ頂上だ。
「返事は、もらえるか?」
「………そんなの、」
やっと那月は目を合わせてくれた。
「そんなの、オッケーに決まってるじゃないですか」
頂上に着いた瞬間だったと思う。
目尻に少し涙を浮かべ、しかしとびっきりの笑顔で、
那月は俺の望んだ返事をくれた。
俺もついつい涙が出そうになるが、我慢して
「それはよかった」
精一杯、その一言だけ言うことができた。
「それじゃあ、なにがあったか聞いてもいいか?」
「先輩のバカ。もう少し、余韻に浸らせてくれてもいいじゃないですか。
帰ったらいくらでも答えますよ。」
今日は、俺の人生の大きな分岐点だ。
そして、新たなスタートラインでもある。
引っ越してきた後輩は学校1の人気者だった 烏瓜蜜柑 @tgmajw
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