出会い。の前に爆裂!

<用語説明>

ズェピア王国…世界の中心を担う国。様々な文化の食事が楽しめられることで有名。魔王が倒されても国の治安度については場所によって違い、とても平和なところもあるが、吐き気がするほど悪い所もある。


ワルキューレ騎士団…魔王連合の残党に対抗するため設立された騎士団の一つ。団員がほぼ女性で占められており、騎士団の中で最も先に魔法と剣術を混同した戦闘スタイルが取り入れられている。イザベラ姫が団長、フレヤ騎士が副団長を務める。


キングダムコーラ…近年王国で流行っているジュース。とある物好きの冒険者が赤黒色のスライムと出会した際、スライムの涙を飲んだら案外美味かったことから、スライムの涙を元に生産されるようになった。尚、このことがきっかけでスライムが保護されるようになった。


バウンディドッグ…この世界のわんこ。かわいい。


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「おーアメリア。やっと始動やね」

 ワルキューレ騎士団活動初日。一先ず先に来ていた一個上先輩騎士であるエヴァさんに出会った。彼女はイザベラ姫(以降『バカ姫』)の紹介で、剣術と魔術の訓練でお世話になった。

 正直下ネタばっか言ってるバカ姫より、エヴァさんの方がまともに女性騎士している。

「エヴァさんと仕事できる日が来れて光栄です。今日からよろしくお願いします」

「何硬くなってんの。ウチとアメリアの歳そんな変わんないやん?」

「私は例え1歳差があっても、年上にはちゃんと敬った方が個人的に落ち着くので(バカ姫は除く)」

「相変わらず真面目やな〜わしゃわしゃ」

 エヴァさんが慣れた手つきで私の耳を触ってきた。どうして毎日誰かしらにケモ耳を触りまくられるのだろうか。別にこっちは少し気持ちは良いから悪くないが。いやダメだわ普通に。何言ってんだ私。初日から既にここのマスコットに置き換わってる気がする。騎士として来た筈なのにおかしいぞ?

「ようやっと、アメリアと相方組める時が来るとはなぁ」

「いや、私訳あって無理なんです。バカ姫が別の子と組むよう頼まれちゃって」

「さよか。あと息をするかのように姫をバカ呼ばわりせなんだ?」


 エヴァさんが一瞬困惑してると、横から副団長が顔を出しにきた。

「アメリア君は確か、元魔王の子と組む話だよ」

「フレヤさん。おはようございます」

 この騎士団では、主にバカ姫とフレヤ副団長が牽引してる。全ての騎士の中でも上位の存在であり、この2人がいたからこそワルキューレ騎士団が成り立っている。

「マジで!? 魔王の子って、なんか凄いこと言ってまへん!?」

「アメリア君はいつもおてんば姫に振り回されてるな! あっはっは!」

「バカ姫の奇行には慣れてるんで」

「ほなウチのバディどないするんでっか? このままじゃぼっちになりまっせ」

 バカ姫曰く、「女騎士が『くっ! 殺せ!』みたいになる状況って確かに(自主規制)ピーーー!するけど、倫理的にまずいから必ず2人1組必須ね」とのことで、1人1人の安全の為にバディ制度が設けられた。その方がいかなる状況にも対応でき、危険な状態になることが少なくなる。無論1人の状態だと活動することはできない。


「大丈夫だよ。イザベラからエヴァ君にも指名が入ってる。名前はアリア。種族はエルフで、貴族の生まれだが実力は伊達じゃない。頼んでくれるか?」

「エリート組…若干苦手やけど、まぁきばってみます!」

 副団長から『アリア』と言う子の居場所を聞くと、エヴァさんは「ほな! また後で!」と言い残し、颯爽と詰所を駆け抜けた。

 しかし、私がこれから組むバディが来ない。もう待ち合わせ時間を過ぎている。大分裕福な暮らしをしていたから、時間調整に慣れてないのか……?




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「早速遅れたニャャャ!!!」

 この国に来てから6年。そして世界をめちゃくちゃにしたクソパパが倒されてから1年。あたし、イブはついに憧れの騎士になることができた。この時の為に、魔法と剣術についてはイザベラお姉ちゃんと勇者様から色々教わった。だからこのお仕事を全うできる自信はある。(でも遅刻しちゃったけど)

 いろんな人が支えてくれたんだ。就任初日、最高のスタートダッシュをむかえてやる!





 がんばれあたし! フレフレあたし! そうやって自分を鼓舞し続け、今日から働く場所に向かおうとする途中、道に1匹のバウンディドッグが飛び込んできた。

「あれ? なんでこんなところにわんわんが?」

 その子の体をよく見ると、10箇所程斬りつけられてるのが確認できた。イザベラお姉ちゃんの話だとバウンディドッグのような平和的な生き物への傷害は禁止されてる筈じゃ……?


「あの〜そこの嬢ちゃん。悪いけどその犬、俺らのとこに返してくんね?」

 如何にも柄の悪そうな冒険者のパーティーが、こちらに向かって来た。すると、バウンティドッグがガタガタと震えてんのに気づいた。この切り傷はこの人たちがやったのか?

「なんなんですか? あなた達……」

「何ちょっと睨んでんの?勘違いしないでくれよ〜俺らはただ犬と戯れただけなんだよ」

 この人たちはそう言ってるが、咄嗟にこの子に傷をつけたナイフを隠した事に、あたしが気づかない訳がなかった。

「全然そうは見えにゃいです。ストレス発散かにゃんだか知らないけど、この子をいじめようとするのはやめてください!」

「にゃ? 所々にゃついてんのウケるんだけど。クッハッハッ!」

「ちょっと脅かしてみ」

「いいねぇ……おらよっ!!」

「!!?」

 文字通り、あたしの目の前でナイフを突きつけた。あたしがもっと前に進んでいたら確実に怪我していた。危ないじゃないか。

「別に犬と遊んでただけ良いだろうがよ!!! 人様には危害加えてないだけ良いだろ!!! でしゃばんなよ角女!」

 一瞬この人が何を言ってるのか。何故逆ギレしてるのかが分からなかった。あたしは普通に注意しただけだ。小さい頃大人から学ばなかったのだろうが、自分が今何やってるかわかったらすぐ謝るべきだ。悪いのはそっちの方じゃないの?

「なんか黙りこんだし、萎えた。別の奴探してそれで遊ばね?」

 この人たちに反省の色が見えてない。あまりにも信じられない。これじゃあ言葉だけで解決できないじゃないか。この時はどうすれば良いんだっけ。どうすればこの人たちを反省させるべきだろうか。

「ちょっと! 待って!」

「ああもう、うるせえな!!!」

 堪忍袋の緒が切れたリーダー格の人がナイフを片手に襲いかかって来た。


 その時、考える間もなくあたしは、ただ体が勝手に動いていた。

「はっ!? 離せや!こんの」








魔力、反転


火・爆裂魔法______



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 中々来ないので、私はフレヤさんと雑談をしていた。

「まだバカ姫の侍女をやってた頃なんですけどね。魔王の統治国から逃げて来た魔族の子供の世話を、(強引に)頼まれたことあるんですよ」

「うんうん」

「魔族の人って、生まれた時から魔力高いじゃないですか。魔法のコントロールに慣れてない子に振り回されまくって、もうてんやわんやでしたよ。それ以降魔族の子供にちょっぴり苦手になっちゃって」

「色々振り回されてばかりの人生だったんだね」

「はい。今もバカ姫に振り回されるだけで精一杯なのに、これから魔王の娘に振り回されると思うと、腹が痛くなるんです」

「大丈夫。大抵小説では爆裂魔法みたいの使えて、明るくてわがままな子が定番だけれど、そんなお約束みたいな子じゃないと思うよ。現実的に考えて博識だったり、礼儀正しいかもしれないし」

「そうですよね。そんなテンプレの塊みたいな子、この世にいないですよね!」

「そうそう! じゃなかったら今頃どこかでドガーン! って鳴ってるよ! そんな子いる訳」


ドゴオオオオオオオオンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!


「……なんか聞こえましたね」

「…聞こえたね」

 北北東から耳が裂ける程の轟音が鳴り響いた。窓のほうを覗くと、郊外の方から天まで届く程の煙が高々に昇っていくのが見える。突然の事に私たちが唖然としていると、同僚の騎士が息を切らしながらこちらに向かって来た。

「副団長! 緊急事態です!」

「どう見てもそうだね。うん、一応聞いてあげる。どうした」

「ワルキューレ騎士団の1人が、郊外で冒険者グループと衝突して、そしたらその騎士が爆裂魔法を使用して…!」

「その子の特徴は?」

「マゼンタ色の髪に角付き、トパーズの瞳。種族は魔族です!」

「あーうんわかった。ありがとう」

 

 数秒程黙りこけると、哀れむような視線が私の方に向いてきた。副団長が発するセリフはもう察知がつく。

「ここは私たちが迎えにいこうか」

「……はい」



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イザベラ姫「あっ イブに加減の仕方教えんの忘れてた⭐︎」

 



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Vivid Partner ーケモ耳騎士である私はある日、魔王の娘とバディを組むことになったのだがー アホ田丸 @FFF_Val

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