ノーウッドの精神異常者
Scene.091
ノーウッドの精神異常者
「精神病院で死んだ。自殺だった」
「何の話?」
ティーサーバーを洗っている最中、水音に耐え切れず、彼は語り出した。
「ある弁護士の物語」
“駆け出し”だった。信念に燃えていた。弱者の救済のために戦う、それが理想的な弁護士の姿だ。しかし、彼は殺人罪で起訴された。身に覚えがなかった。高潔な自分が、それとは真逆の行為に至るなんて考えられなかった。だが、彼は、日曜日のショッピングモールで、まだ幼い男の子の脳ミソを垂直二連式の十二ゲージの散弾銃で吹き飛ばしたという。被害者は六人、まさに悲劇だ。
「それで?」
「彼は戦ったよ、自分を弁護することでね。“当時、被告人は精神に異常があり、責任能力はなかった”と」
そして、証言は認められ、彼は精神病院に“収監”される。
彼は弁護士として一人の被告人を救った。
これにて、了。
摂氏300℃ イオリミヤコ @wise13
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