月の堕ちる夜
Scene.090
月の堕ちる夜
ぶらり、と街を行く影法師が二つ。夏の夜の街。ねっとりと絡みつく大気。欝陶しそうに二人の男がシャツをパタパタ。アスファルトを擦るサンダルが砂を鳴らす。
「あちィーなあ……」
眠れぬ夜は月を眺めようか、と夜の街に咲かせた浪漫。しかし、暑さは相変わらず。二人は煙草を蒸して坂の中程。ふわり、と煙は悪戯に舞う。
「夏だからなー」
そうでした。頷く代わりに紫煙を吐いた。白い煙を纏う朧げな月の下。眼下に眺める眠れる街。点々と光を抱くそれは今宵の星空に似ている。冷たく月光は二人を照らした。
「満月か」
ぽつり、黒髪の男が呟く。
「落ちてきそうだな」
ぽとり、長くなった煙草の灰が落ちる。二つの影法師。見上げた月は臥待ち月。
これにて、了。
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