氷の都トロイカ。冷気を纏う都市のヴェールは幾重にも巻き付いて離れない。
耽美と狂気が脳に巣喰い、今日も人々は屍者を越えて地に睡る。
幻像は万象を装飾し、暴力は背反する安寧と手を取って共に沈む。
脳漿と錆びた鉄の芳香が充ちるダンスホールで踊る道化。
薫り高い火薬は鼻を突き、煌びやかな刃の輝きは人を嗤う。
甘い甘い午後の一時、桃源の虚像が手招きする。
午睡から醒めた屍者は喉を震わせ歩み寄る。
頽廃と腐敗の美徳こそ至上に謳う。
慈愛と永遠は柔らかな眼差しを以て降り注ぐ。
さぁ主よ、今こそ我を導き給え。
荊と杭が祝福の讃美歌を。偶像の棺は此処に在り。
宿痾の幻燈が君を待つ。