三話 妙だ…
ドッガーン!
「なっ、何!?」
「すごい音がしたな、東の方か?」
カーマが指を差した。
「カナ達かも。とりあえずそっちに向かおう」
スタスタ…
「ヘルスリセット!」
回復魔法を唱え続ける声が聞こえてきた。
「あ、アリナさんだ」
「アリナ、どうしたの?って!」
「カナ!?大丈夫か!?カナ!」
「う、うーん」
カナが目を覚ました。
「どうしたの?凄い音したけど…ってか、カナ、どうしちゃったのよ!」
ソニア達も合流した。
「突然、ここには出現しないはずのゴブリンが二体も現れてそれを討伐していたら突然、体調が悪化して…」
「私…気を失っていたんですか?」
「カナさん、誰かにうなされていたように見えました。来るなって誰かに訴えていた感じで…」
「その後、いつの間にかゴブリンを討伐していたと…」
「妙ね…アリナはカナちゃんから何か感じた?」
アオイが聞く。
「分からないけど、何かしら禍々しいオーラのようなものは感じたわ」
「…!?」
ソニアが顔を青ざめて何かを察した。
「どうしたソニア。顔色が悪いぞ。オイラがいないところで、何か変なものでも食べたか?」
「も、もしかして…」
「心当たりがあるのか?」
「…でも、話すとカナに支障が出るかもしれないから今は話せないわ」
「とにかく、まずは帰宅しよう。悪化したら大変だ」
「体調が悪くなったら、オイラの特製料理でも食べて元気出せよ。兄貴たちもどうだ?」
「うむ、どうしようか…」
「ヒーラーのアリナがいた方が心強いとは思うけど…どうする、シン」
「…なら、俺たちは帰って、アリナを後日迎えに行くとしよう」
「えー、カナが心配じゃないの!」
「姉さんは、ライキの料理が食べたいだけだろうに…」
「そ、そんな訳!…まあ、食べてみたいっちゃあ食べてみたいけど…そ、れ、に、アンタが体調崩してた時、誰が看病してたっていうの」
食べたい本心を隠そうとしながら説得する。
「うう…過去に激マズ薬草を飲まされたのを思い出す」
???「あちゃー、ちょっと自然じゃなさすぎたわね。ここに出現するモンスターを調べとくべきだった。今日は帰ろー」
〜ユウ達の家〜
帰宅後まず、カナをベッドに寝かせ、ライキは夕食を作る準備をし、ソニアはそれの手伝い。姉さんとアリナさんはカナの看病。俺とシン兄貴は看病を試みたが、男が入ってはいけないと言われて部屋から追い出され、風呂掃除をしている。
「なんで俺が風呂掃除しているんだ」
「仕方がないでしょ兄貴、女って怖いからあんまり言い返さない方がいいんだよ。特にうちの人達は面倒だから」
「じー」
「ソ、ソニア!?」
「今休憩中だから様子を見に来たら嫌味!?ちょっと貸しなさい!」
ソニアがブラシを取り上げた。
「おりゃおりゃおりゃー!」
3分後…
「ざっとこんなもんよ」
音速の力で一瞬にして風呂場をピカピカにした。
『おー…』
パチパチパチ…
思わず拍手した。
「兄貴、分かった?こうやれば、俺たちは楽になるから」
なんとなくで言った。
「お、そうだな」
「うわっ。アタシとしたことが、まんまとやられたわ…」
「おーいソニア〜そろそろ出番だ〜」
ライキの呼ぶ声だ。
「了解、今行く!」
「俺らもそろそろ行くか」
「なら、俺は姉さん達を呼んでくる」
「分かった」
コンコン
「姉さん達、もうご飯できるってよ」
「分かった、カナちゃんも話せるほどまでは回復したよ。今から取りに行くわね」
「了解、じゃあ、下で待っとくぞ〜」
一度ダイニングに戻った。
「どう、立てる?」
「立てないことはないですけど、まだ微妙に違和感が…」
「ていうか、カナさんの魔力非常に高いですよね。どこからやってきたんですか?」
「私ですか?私の出身は魔法使いの街の…」
「えっ!もしかして、カルウィン出身!?」
「そ、そうです。よく分かりましたね」
「そこは有名都市だから私でも分かるわよ、かなり魔法が発展してて良い街だと思うけど…」
「私はそうは思いません、何故なら…」
カナのカルウィンでの記憶が頭の中をよぎる。
「ま、また体調が悪くなってきました…」
「だ、大丈夫?」
「な、何とか」
顔色が悪いカナ。
「とりあえず、今日はゆっくり休んでください」
「私、ご飯持ってくるわ〜」
「お、お願いします」
「ユウ〜ご飯できた〜?」
二階から姉が呼ぶ声が聞こえる。
「今出来たところだから、取りに来てくれ〜」
スタスタ…
「えっ。こ、これ全部一人で作ったの!?」
「ああ。まあ、ソニアに少し手伝ってもらったけど」
「お、美味しそう…」
「ライキ、本日のメニューは?」
「今日はカナが体調が悪いというのも含めて飲み込みやすいものばかりを使ってみたぜ、食物繊維の多いレタスと、体調を治す薬草とハーブ3種ずつ使ってソースを作ってシャケベイの切り身を焼いてみたぜ。シャケベイの身は脂身が少なめで体調が悪くても食べやすいんだ。それとご飯と野菜スープだな」
「玉ねぎ苦手なアタシでも飲めるから本当にライキは料理上手なのよね」
「こんな沢山のメニュー、ライキ君はどこで覚えたの?」
「ああ、こういった薬草などの種類は父さんから教えてもらったんだ、このメニューは自己流だぜ」
「わあ…ううん。じゃ、これ届けて来るね。私たちは上で食べるから」
「分かった」
今すぐ食べたいという気持ちを抑えつつ、姉さんは二階に行った。
「さあて、いただきますか」
「ちょっといい?」
「どうした、ソニア」
「さっき後で言うって言ったことなんだけど、聞いてくれる?」
「うん、それがどうしたんだ?」
「これはシンさん達にも知っておいて欲しいんだけど、カナってカルウィン出身なの」
『えっ!?』
俺以外が驚いた。
「なんだ、その街」
「知らないのか?有名な街だぞ」
「すまん、俺が教えるのを忘れていたな。いいか。カルウィンという街は昔ながら魔法に関してはずば抜けて発展している街だ。冒険者の界隈では結構有名だぜ」
カーマが説明してくれた。流石は神。なんでも知ってるな
「なるほど、それと何か関係があるのか?」
「アタシが初めてカナに会った時の話なんだけどね…」
と言って、過去を話し始めた。
【「アタシ達、修行で家族とカルウィンに行ってたんだけど、しばらくの間自由時間をくれて市場の屋台を色々cを回ってた。その時アタシは12歳だね」
「ハイ、これで今日の修行は終わり!」
「はあ〜疲れた〜お母さん、飲み物ちょうだい」
「これで、市場で買っておいで。一人だと危ないから。イヴィ、お願いできる?」
「えっ、しょーがないな。ま、ちょうど喉乾いてたし。ソニア、行くよ」
「ま、待ってよ〜」
「なんだかんだ、仲が良いな。あの二人」
「そうね、時々喧嘩もするけどそれも姉妹らしくて良いわよね」
市場〜
「いらっしゃーい!安いよ安いよ!」
「今ならお買い得だよ〜!」
市場は大変賑わっている。
「これこれ!これが飲みたかったのよね〜」
「ソニア、それ好きだよな。まあ、私も好きだけど。これ二つください」
「はーい、200Gだよ」
「これで」
「はい、丁度ね。また来てちょうだい」
「また来ます。はい、ソニア」
「ありがとう〜」
プシュッ
「……ぷはぁ!美味しい…ん?」
建物に影に視線を感じた。
「…っ!」
「あっ」
「どうした?ソニア」
「さっき、誰かがこっちを見ていたような…」
「…気のせいだろ。行くぞ、そろそろ休憩時間も終わる。早くしないと置いてくぞ」
と言うと、小走りにしてはとてつもない速さで行ってしまった。
「ま、待ってよ〜!置いてかないで〜!」
置いてかれてしまったソニアは、途中で追いかけるのを諦め、屋台周りをうろうろしていた。
「置いてかれちゃった…どうしよ…ん?」
また視線を感じた。
「…ッ!」
目が合った瞬間またどこかへ走って行ってしまった。
「あ、待って!」
追いかけることにした。
「さて、着いた。てかソニア来るの遅いな…アッ…あの子、まだ音速術使えないんだった。置いてきたなんて親にバレたら…」
「アンタって子は!初めて来た街に一人にするなんて」
「そうだそうだ」
「罰として、今月のお小遣い無しだからね」
「そうだそうだ」
「もちろん、アナタの分もね」
「えっ!なんで!」
「先月使いすぎだから節約ついでに」
「はあ!?なあ、頼むよ。言うこと聞いてやってくれ。さもないと俺の小遣いが」
「って、結局小遣い優先かーい!」
異世界生活?なんやそれ。 優輝 @yuisekai
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