二話 再開
一応あの後、無事に帰ることができたユウ達は床で寝転がったりしてくつろいでいた。
コロコロ〜
「家で寝そべってぐーたらするのもたまには良いですね〜」
「おいおい、今日はクエストに行く日だぞ。準備してそろそろ行かないと…」
「まあ良いじゃん、少しぐらい」
「少しぐらいって、もうお昼回ったんですが?」
「お、もうお昼か。飯作るから待っててくれ」
ライキは台所へ行って、料理を始めた。
「やった、お昼休憩ね」
(さっきからずっと休憩してるだろ…あの旅行からもう一ヶ月少し経ってるぞ…)
ピンポーン
「あれ、誰だろう?」
「私、見てきます」
ガチャッ
「こ、こんにちは…えっ」
「お帰り、誰だった?」
「す、凄い人が来ました」
「え?」
「どうぞ、お入りください」
スタスタ…
すると見た目から明らかに実力のある三人だということが分かった。左にはヒーラー、右にはナイト、そして真ん中に…
「ね、姉さん!?」
「ユウ!?」
皆で椅子やソファに座って話を始めた。
「つまらない物だが…」
ライキが少しの菓子類を机に置いた。
「すまない」
「いやあ、まさか魔王軍幹部の討伐に成功したのがまさかの自分の弟だったなんてね〜」
「というか、アオイに弟がいたんですね」
「そうだよ、アリナ。てか、なんでユウが異世界にいるのよ、もしかして死んじゃったの?」
「う、うん」
「ほ〜どんな感じでユウが死んだのか気になるところだが、まだ自己紹介がまだだったね。私はアオイ。職業はアーチャー。エリート三銃士のリーダーよ」
「エリート三銃士?なんだそれ」
「ユウ、知らないんですか?この方達は皆からエリート三銃士と呼ばれている、初めて魔王軍幹部を討伐した凄い方々なんですよ!」
「えっ、姉さんそんなに強いの!?」
「いやあ、運が良かったのもあるんだけどね…」
アオイが過去の記憶を辿る。
【草原〜
「よーし、今から狙撃の練習でもしようかな〜」
「援護なら任せてくださいね」
「ピンチな時、俺が盾役になろう」
「ありがとね。じゃあ、あのムーンウルフでも仕留めておこうかな」
「!ルミナルアロー!」
神速の矢がウルフに向かっていく…いや、外れた。
「えー!なんで外れるのよ!もう一回!
「ルミナルアロー!ルミナルアロー!ルミナルアロー!」
全弾外れた。
『はあ…』
シンとアリナはため息をついた。
「なんで当たらないの…ねえ、シン。ちょっと打ってみてよ」
「ん、俺か?うまく使いこなせるかは分からないが…」
ヒューン
「あれっ」
シンが打った矢も当たらず違う方向へ飛んでいった。
「おかしいな、壊れてないか?」
「そんなはずは…アリナもやってみてよ」
「というか、逆になんでそんなに当たらないんですかね…」
ヒューン
「え、外れたんだけど…ちょっとこの弓矢おかしくないですか!?」
「故障してるのかな…」
そして、外れたその弓矢は…
「ふーん、ふふーん〜」
キラン!
「ん?」
グサッ
「…ウワアアアアアアァァァ!」
「なっ、何!?」
「なんだったんだ、今の叫び声」
「ひとまず、これを修理しに行きましょう」
鍛冶屋〜
「鍛冶屋さん、この弓矢なぜか変な方向に飛んでしまうんです、修理お願いできますか?」
「よっしゃ、任せとけい」
「はあ、武器がないとクエストにも行けないし困ったなあ」
「今日はもう暗くなってきましたし、ご飯でも食べに行きません?クエストは後日武器が直ってからで」
「そうだな、腹減ったし」
ギルド〜
ガチャ
パーン!
クラッカーの音だ。
『おめでとう!』
皆がお祝いをしてくれている。
「なっ、何!?私なんかしたっけ!?」
「何をしたも何も…アオイさん、魔王軍幹部を討伐したんですよね!?」
「え…?」
「先程、近くに幹部の遺体が見つかったみたいでそこに光速の矢が大量に刺さってたみたいなんです」
「それって…」
『うん』
シンもアリナも理解しているらしい。
「その遺体ってまだありますか?」
「勿論、保存してありますよ」
「なら、見せていただいても良いですか?」
「ありがとうございます」
「これですね」
「どれどれ…うわっ!」
そこには赤々しい見た目の竜人だった。】
「ってなことがあったのよね」
「姉さん、相変わらず不器用なんだな。何で器用さが必要なアーチャーになったんだよ」
「それは、日頃よく狩りに行ってたからいけるかなって思って…」
「でも、姉さんがいたことが不思議。奇遇だな」
「私はアリナです。エリート三銃士のヒーラーを生業としています。あそこで寝ている、ソニアと同級生です」
「へ〜、そうなんですね。ソニアとは違ってしっかりしてますね」
「いやいや、ソニアの方が意外に私よりしっかりしてますよ。私のほうが色々と変わってますから」
「まあ、確かにアリナは変わってるわね。普通の人とは違った物を好む傾向があるから…」
「え、このカエルとか可愛くないですか?」
とあるカエルの写真を見せてきた。
「私にはどこが可愛いのか分からないけど…皆はどう?」
『うーん…』
「私は可愛いと思います」
カナが答えた。
「やっぱり、そうですよね!分かる人がいて良かった〜」
「あら、アリナじゃない」
ソニアが起きてきた。
「おはようソニア。良い夢見れた?」
「夢なんて見る程寝てないわよ。てか、急ね。アタシ達荷何か用があるの?」
「そんな重大なことではないんだけど…やっと魔王軍幹部を討伐した人が出てきたから気になって訪問してみたの」
「何せ、魔王軍幹部の討伐に成功したの私達が初めてだからね。その後に成功する人が全く見当たらなくてさ〜それで今日、その情報を聞いて飛んできたって訳。てか、シン。自己紹介したっけ?」
「いや、まだだ」
「なら、さっと済ませちゃってよ」
「俺はシン。職はナイト。皆を守る盾役だ」
「すげー筋肉。オイラもその筋肉欲しい!」
「まあ、日々鍛えてるからな」
「どんな感じになったらそんなムキムキになるんだ?鍛え方を教えてくれ〜」
「身長とかで支えるのは厳しいと思うんだが…」
ライキが目を輝かせたままずっとシンの方を見ている。
「…なら木登りで対決しよう。勝ったら教えよう」
「やったぜ、木登りならお安い御用だ!」
ノリ気のライキ。
「あらら…」
「本当は、私達とクエストに行って欲しいから頼みに来たのが本当なんだけどね。まっ、その話は二人の木登り対決を見てから言うわ」
「じゃあ、この庭に生えてる二本の木で対決してもらう」
「ユウ、ちょっと長さが違うと思うんだけど平等じゃなくない?」
「大丈夫だよ姉さん。カナ、任せた」
「分かりました」
「!イヴネス!」
すると、木の長さが姿、形全てが全く同じになった。
「凄いわね、その子。なんでも出来るじゃないの」
「そうなんだよ、姉さん」
(ソンナコトナイ。ソンナコトナイ)
首を横に振りながら優秀ではないと謙遜するカナ。
「あっ、まだ自己紹介がまだだった、俺はユウ。職業は忍。こっちの魔法使いがカナ、そんで、鬼のライキ、そしてハンターのソニア」
「よろしくお願いします」
「よろしくだぜ」
「いつもアリナがお世話になってます」
「へ〜、ユウって忍になったのね〜てっきり冒険者職じゃなくて働くのかと思ってたよ。それでユウ、髪型とかかなり変わったわね…ついに、これ…来ちゃった感じかな?」
アオイが明らかに厨二心をくすぐるようなポーズをし、聞いてきた。
「ち、違うし、これには訳があって…」
「はいはい、そんな誤魔化さなくても分かってるから大丈夫」
(ギクッ)
「どうやら当たりみたいね」
「おーい、そろそろ始めないか?」
シンが木の下から呼んでいる。
「分かった〜さっ、始めよっか」
「おうおう、なんか楽しそうなことしてるじゃんか!」
「お、カーマどうした?」
「この人らは?」
「あ〜ウチの姉さんのパーティーだよ」
「ユウ、さっきから誰と話してるの?やっぱり厨二病なの?」
(そうだった、カーマは姉さんらには見えないんだった)
「いや、だから厨二病じゃないから!」
「それじゃ、行くわよ。準備は良い?」
「おう!」
「こっちは大丈夫だ」
「行くよ〜、よーい…ドン!」
順調に登っていく二人。
「ライキくんやるわね〜シン、負けないでよ〜」
「ッ、分かってる」
「ライキ、後少しよ〜」
「ちょっと、シン!抜かされてるって!」
「何っ!?…うわっ!」
ドテッ!
慌てて木から落ちてしまった。そうしているうちに…
「やったー!辿り着いたぞ〜」
「やるじゃないか、ライキ!」
スルスル…
ライキが木から降りてきた。
「まさか負けてしまうだなんてな」
「ふん、どんなもんだい!」
「それなら、俺のような筋肉は必要ないだろう」
「ええっ、なんでだよ〜」
「君のような、俊敏な動きを持っているならばそれを活かすべきだ。新しいことを取り入れるよりも、その元々の力を極める方が強くなれる。何かが欠けているからこそ、それぞれ違った個性が出る。個性があるからこそ、今みたいな仲間ができてお互い支え合える。そう思わないか?」
「そ、それはそうなんだけどさ…」
気持ちは断りたくなさそうなライキ。
「ま、まあ、早い方が動けるしさ。ライキはそのままの方が良い」
「そうよ、ライキはそのままの方が良いわ!逆に、ムキムキになってしまったら体の大きさとバランスが合わないし、変に見えるわよ」
ちょっと強めにソニアが言った。
「まあ、皆がそう言うなら…」
「ま、それよりアオイが待ってるし、クエストの準備をするぞ」
ギルド内〜
「こんにちは〜」
「こんにちは〜皆さん。クエストに出かけられるんですか?」
「そうです、うちの姉がどうしても行きたいとのことで…」
「えっ、ユウさんってアオイさんの弟だったんですか!?だからそんな実力が…」
「あー、それはアオイさんが間違って打ったやつが当たっt…フグッ!」
ライキが言いかけたのでシンに口を塞がれた。
「で、何か良いクエストってありませんか?」
「エリートの二組が行かれるのであればこれを…」
「何ですか、これ」
「少し難しいクエストがありまして…ここのバツ印が描いてあるここの山が最近禿げ山になってしまいまして、未だに原因が分からないんですよ。この付近の調査をお願いしたいんですけど…」
「え、それって簡単じゃない?周辺をサーチしてくれば良いんでしょ?」
「ソ、ソニア!そんな美味しいクエストなんかあったら誰でも参加するって!これは何か原因があるのよ」
「まあ、その時は俺が盾になろう」
「心強いっす、シン兄貴!」
「なっ、何故その呼び方を!?」
「ライキくんに気に入られたみたいね。シン兄貴」
「あ、アオイまで…」
「シン兄貴!シン兄貴!」
『シン兄貴!シン兄貴!』
ギルドにいる人が一斉に連呼した。
「シン兄貴、頑張ります」
「シン兄貴〜!シン兄貴〜!」
聞いたことのある声が聞こえた…カーマだ。まるで自分達のメンバーではないかのように椅子に座ってギルドの皆と一緒にシンの名前を連呼している。
「姉さんちょっと待ってて、用事ができた」
「分かった〜」
スタスタ…
「何やってるんだよ、カーマも一緒に行くぞ」
「え〜、なんで〜面倒くさ…イテテテテ!」
耳を引っ張って無理矢理連れて行こうとした。
「イタタタタ!分かった、分かった、行くから!」
「お待たせ」
「待ってたわよ」
「フフッ」
カーマの赤くなった耳を見て何があったのかを察したのか、カナが少し笑った。
「さて、行きますか〜グリーンカントリーに!」
グリーンカントリー〜
「うわ〜一面緑だ〜」
一面建物が少なくほぼ民家しかない。水田はあちこちにあり、まるで日本に戻ってきた気分だ。
「穏やかですね〜」
「う〜ん!空気が美味しい〜」
「本当ですね〜良い感じに吹くこのそよ風も中々…」
「ハッ、緑に見惚れている場合じゃなかった。禿げ山の調査に来たんだった…」
「そうだった。久しぶりの田舎に来て故郷を思い出してしまったぜ〜」
「そうだった。ライキの家、山の近くだもんな」
「緑が欠けている場所がある山は…あっ、あれだわ!」
視力の良いソニアが見つけた。
「よく見つけたわね、ソニアは目が良いのね」
「一応視力5.0ありますから」
「5.0!?なんでも見えるじゃない」
「てか、皆は見えた?あそこの天辺の緑が欠けているのよ」
「…本当だ、よく見ると一部が枯れて無くなっている。というか、焼けたのか?」
「それなら何かしらの原因があるはずですよ。例えば、火属性のモンスターの仕業だとか」
「そうね、カナの言う通りだわ」
「ひとまず、あの山を登らないとな。登るだけで体力が削られそうだ」
「それなら大丈夫です、ユウがいますからね」
そう言って俺の方を向く皆。
「あ、ああ。そうだな」
「ユウ、なんか魔法でもあるの?」
「まあ、一旦俺に掴まってよ。話は後で」
「…分かった。はい、掴まったわよ」
「皆、掴まった?なら…」
ビューン
禿げ山頂上〜
「わっ、凄い。もう頂上!?」
「ユウさんって瞬間移動が使えるんですね〜」
「でも、一日三回までですけどね」
「こっ、焦げ臭っ!!なんか焦げ臭くないか?」
ライキが突然臭いに気づいた。
「そうか?」
「ああ、こっちだ」
真っ先にライキが森の中へ入っていく。
「あ、ちょ、ライキ!アタシ、見てくるね!」
「ちょ、ソニアまで…俺らも先を急ごう」
そこそこ進んだが、ライキらを見失ってしまった。
「ライキ〜!ソニア〜!どこだ〜!?」
「ライキくーん!ソニア〜!どこ行ったんだろう…」
「いなくなってしまったな。これじゃ、団体行動しないと、また誰かが居なくなってしまう」
「そうだな…ってか、カナは?アリナさんは?」
「え…」
アオイが周りを見渡した。
「マジか…」
「どうする、どうする…大変だよ!このままでは皆居なくなって仕舞いには…」
「ええぇ!」
何が起こるか過大に想像してしまい、腰が抜けてしまった。
「ちょ、脅かすなよ…背中が凍りついたじゃないか!」
「ライキとソニア、カナにアリナ。大変なことになったな…」
一方、ライキとソニアはというと…
「ライキ〜、おかしいな。こっちの方に行ったはずなんだけど…」
小走りしながら、ライキを探すソニア。
「ん?あ、いた。ライキ〜!」
「ん?」
遠くから声がしたので止まって振り返ってみた。
「ちょちょちょ、止まらないでよ!」
ドーン!
『痛った(て)ー!!』
勢い余ってぶつかった。
「どうしたんだよ、そんなに勢い余って」
「先にすぐ行くから、後を追いかけたのよ…あれっ、ユウ達は!?」
「まずい、オイラ達迷子か?」
「ライキ、ここからは一緒に行動するわよ。離れ離れになったら後がないからね」
「そうだな、なんとかして合流しないとなあ…」
そして、カナ達はというと…
「アリナさーん!」
「あら、カナさん。どうしました?」
「皆とはぐれました…」
恐怖と心配の顔を足して二で割ったような顔をしてアリナの元へやってきた。
「え、私も皆とはぐれちゃったみたいで…」
「えっ、アリナさんも!?皆、同じ方向に向かって進んだはずなのにはぐれてしまうだなんて…」
「私達だけでも離れないように、私にくっついていてくださいね」
「あ、ありがとうございます」
ドッガーン!
『!!?』
「すごい音がしましたね。何かの爆破音のような…」
「やっぱり、禿山はモンスターか何かの仕業なんでしょうか?」
「行ってみないと分からないですね。アリナさん、ここから手を繋ぎながら進みましょう」
「はい」
???「さあ、行っておいで」
スタッ
「キエーーーア!!」
「なっ、何!?」
「邪悪なゴブリンです!この辺りではいないはずなのですが。しかも、二体…ここは私に任せて、アリナさんは支援をお願いします!」
「わ、分かりました!」
「シェーーア!!」
「!サイクロンカッター!」
ズバッ!ズバッ!
「確定必中の技を使えば、すばしっこいモンスターでも、ダメージを与えられるはず…」
「す、凄い。こんな大きな風魔法を…こんなに凄い魔法使いなら、親御さんもきっと凄い魔法使いなんじゃ…」
シュー…
「キー…」
「確実に効いていますね、この調子なら!ウッ…」
カナが倒れ込んでしまった。
「どうしたんですか!?カナさ…」
「辞めて!来るなっ!」
「えっ…」
何かにうなされているようだった。
「ウ、嗚呼!」
カナの背中から二つの管のようなものが出てきた。
ザシン!
「キエ〜…」
その管は二体のゴブリンを串刺しにし、討伐した。
「はあ、はあ、はあ…」
バタッ…
カナはその場で気を失ってしまった。
「ちょっと、カナさん!カナさーん!」
??? 「ふーん、あの娘やるわね。益々興味が湧いてきたわ」
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