ep.12

 




「ついたよ、ここが『ブリューケル』。15地区最西端の町さ。」


 そこは山脈の麓に位置する、丘陵に囲まれた田舎町。暖かな色合いの屋根と、丸い石を敷き詰めた石畳が古い歴史を感じさせる、穏和でのどかな町だ。

 長旅で疲労した目で、ノアはその広がる景色を山道から見渡した。


「お嬢さん、着きましたよ」


「…………」


 手網を持った送迎の男が、荷台にいるローズに到着を知らせる。しかし、返事がない。


「ローズ、着いたって」


「………」


「着いたぞ、早く起きろ」


 ノアも後ろの荷台に呼び掛けるが、ローズは一向に出てこようとしない。痺れを切らしたノアが、御者席から降りて荷台の幌をひらけた。


 日光を遮断した幌が、ノアの手先から裂かれるように光を通す。まっすぐな一筋の光の道が導くように差し込み、ローズの口元を通ったところでぐにゃりと曲がった。明るく照らされたその口元は、自分の髪をべたべたと食み、涎が伝っていた。


「ローズ、起きろ!もう十分寝たろ」


「…んー………」


「早くしねぇと次の出荷が遅れんだってよ。ほら、立て…!」


「ううう…」


 ノアがローズの手を掴み引きずろうとする。しかし、脱力しきった人間の身体は容易には動かない。それに、本能で床にしがみついている。

 ノアは愚痴を零しながら荷台の入口に足をかけると、力の限り引っ張った。




 葛藤すること5分。よくやくローズが陽のあたるところに出てきた。ノアはもう、労働を終えた一日の終わりのような顔になっている。


「じゃあ、ありがとうございました。」

「じゃあね」


 ノアが軽く頭を下げ、ローズが欠伸をしながら簡潔な別れを告げる。


「はいはい、気をつけて」


 送迎の男が、そう言いながら片手を上げた。



 馬車を見送り、ノアとローズは町の方へと身体を向ける。


「お腹すいた…」


「どっか飯食いに行くか。ローズはこの町来たことあんだっけか?」


「ううん、私も初めて。全然分かんない。」


「じゃあ取り敢えず人に聞いてみようぜ」


「うん…………あ!」


「なに」


「あそこに人いる。ほら、あの木が立ってる丘の上」


「…え、どこ?」


「いるじゃん。ほら、あれ」


「全然見えねえ……」


「なんで。あの手前の丘だよ?」


「えー…どこにいんの」


 目を細めた間抜けな顔で遠くの丘を見ようとするノアに、ローズが吹き出して笑った。


「もう、早く行こ!お腹空いて死んじゃう」









 丘の緩やかな斜面を、二人してのっしのっしと登って行く。頂上には存在感のある大きな木が生え、色の濃い葉がひしめき合っていた。


 ローズはさっきまでの体たらくから一転し、ノアを軽々と追い越して丘の上を目指している。

 寝起きだろうがなんだろうが、飯の為とあらば生き生きとしだす。それが、この一週間弱を通してノアが掴んだローズという人間である。


 ローズを追うように登っていたノアは、空腹とローズの寝相の悪さによる寝不足とで、頂上に着く頃にはすっかり息が上がっていた。町中にも人はまばらに行き交いしているというのに、なぜわざわざ丘を登る必要が…とノアはこの時になって気付いたが、今更であった。



 木の傍らに、塔をまっすぐ見つめながら絵を描く少年がいた。木漏れ日を身に纏い、迷いのない手つきで白いキャンバスの色を深めていく。言葉にせずとも、その筆に乗った熱が、少年の絵にかける想いを雄弁に語っていた。

 ローズが背後から至近距離でその手元を覗いても、少年は集中していて少しも気づかないようだった。


 ノアが「すみません、」と声を掛けようとしたと同時に、背後からローズがノアの声を遮るように話しかけた。


「こんにちは!」


「え、…うわあああ!!」


 少年はローズの気配に本当に気づいていなかったようで、驚きのあまり椅子から転がり落ちてしまった。収まり良く赤褐色の髪に乗っていたキャスケットが、少年の視界を遮るようにずり落ちる。


「すんません!驚かせちゃって。大丈夫ですか?」


 ノアが駆け寄って手を差し出すと、少年はずれてしまった帽子を直しながら、その手を握って立ち上がった。


「え、あ、いえ…!僕の方こそすみません、気付かなくて。」


「いやいや、急に話しかけたローズが悪いんで…ローズもほら、ちゃんとあやまりな」


 そう言ってローズの方を向くと、当の本人はこちらを気にかけるでもなく、少年のキャンバスをまじまじと見つめていた。表情からして、ノアの言葉など全く耳に入っていないようだった。


「絵上手いねー、本当にそこに本物の塔が在るみたい」


「え…」


 ローズのその言葉に、少年が少し驚いた顔をして声を漏らした。


 ノアもローズの傍に近付いて、同じようにキャンバスの絵を覗く。


「うわすっげえ!なにこれ、どうやって描いてんの?」


「そ…そんな、褒めすぎだよ。僕の絵なんて全然大したことないのに…」


「え〜〜〜私が上手いって言ってるのに?」


「ローズはなんでいつもそう自分が中心でいられるんだ。」


 絵を見ながら賑やかに騒ぎ立てる二人を見て、強ばっていた少年の頬がわずかに緩む。


「…ええと…ありがとう。そう言ってもらえると描いた甲斐があるよ。僕の名前はバジル。よろしくね」


「ローズ」「ノアだ。よろしくな」


「毎日ここで描いてるの?」


 ローズが好奇心旺盛に尋ねる。


「うん。……でも塔を描くのは国から禁止されていて……出来ればここで僕が描いてたことは内緒にしてて欲しい…」


「えっ、そうなのか」


 ノアが驚いた声を上げる。


「うん…僕、人の絵を描こうとしても描けなくて…ずっと塔の絵を描いてるんだ。変だよね、規制されてるのに。」


「かっこいいじゃん、貫いてて!」


 ローズが食い気味に、バジルに言い放った。


 ローズのその答えは思いもよらなかったのか、バジルは呆気にとられたままま、目をぱちくりしている。

 そんなバジルの反応に気付かぬノアが、町の方を向いて呑気な声で尋ねた。


「あ、そうだ。俺たち朝食もまだ取ってなくてさ、飯屋探してんだけど、なんかいい店あったりします?」


「…あ、えっと…もし良ければ案内するよ。僕も丁度お昼食べようと思ってたから」


「本当に!?じゃ、案内よろしくお願いします」


 バジルはノアの言葉に頷いてから、柔らかい笑みを零した。










「え、それじゃあ2人はついこの間知り合ったばかりなのに、一緒に塔を目指してるの?」


 これから客で混み入るであろう昼前に入店した三人は、カウンター席を抜けた先にある店奥のソファー席に通されていた。壁に設えられた大窓が日光をふんだんに取り込み、窓側に座るノアとバジルの顔を遠慮なく照らしている。

 バジルに案内されたこの店は、地域に根ざした小料理店で、薄暗い店内のカウンターでは常連客が新聞紙を広げながらコーヒーを啜っていた。


「いやそうなんだよ。てか言葉にされるとやっぱ変だよな、俺ら……。」


 ノアは、「あー」とか「うーん」とかなんとか零しながら、両手で前髪をくしゃくしゃさせている。そして、手が止まったかと思うと、今度は意を決したように隣に座るローズの方へと顔を向け、重力に逆らった前髪のまま口を開いた。


「……なあローズ、俺ずっと思ってたんだけど、俺らこの町で解散しねえ?ローズはあれだろ、なんか珍しい食いもん食えればそれでいいんだろ?俺は塔を目指してんだからそれだと一緒にいる意味なくないか…?」


 ローズと行動すると面倒事に巻き込まれそう。という本音を飲み込んで、でも嘘ではない言葉を選んで聞いたのだが、次の瞬間にはあっさりと切り捨てられることになる。


「それはあるよ」


 歯切れの悪いノアを一刀両断するかのように、ローズがストレートに答えた。


「確かに、一番の目的は美味しいもの食べることだよ。でも二番目の目的は、私も同じだもん。私も塔を目指したい。」


「じゃあ、ローズが塔に行きたい理由は」


「それは……わからない……」


 急に視線を落としたローズの言葉の続きを、二人はじっと待つ。


「なんて言えばいいんだろ…2週間前くらいから、なぜか急に塔のところまで行かなきゃって、そう思う気持ちが増していったんだよね。うまく言えないんだけど。…ノアは?なんで塔にこだわるの?」


「…………俺は、…俺も、そう。説明出来ない。塔が光ってから、なんでか分かんねえけど、早く行かねぇとって。急に塔の存在が自分の中ででかくなった。」


「おんなじだ」



「…僕も塔の魅力に惹かれて絵を描いているけど、それとはまた違う感覚なのかい?」


 バジルが二人の話を聞いて、遠慮がちに訊ねる。


「んーー、難しいんだよな。魅力に惹かれるとかそういうんじゃなくて、なんだろな…あの場所まで行かねえとって焦燥感に駆られる感覚?うまく説明出来ねえけど、なんかそんな感じなんだよ。ローズは?」


「うーん…私もそう。今まで塔なんか興味なかったのに、なぜか最近になって急に気になってきた。なんでか分かんないけど…」


「一言で言うと、「「気持ち悪い」」よなあ」「よねえ」


 二人同時に同じ言葉が出たタイミングで、ウェイトレスが三人の注文した料理をワゴンに乗せて運んできた。


「そういえば、一ヶ月程前からこんな噂話をよく耳にするんだけど、知っているかい?」


 バジルがふと、そんな風に切り出した。


 途端に、三人の交差する視線がウェイトレスの影で遮られる。ウェイトレスの手によって、シチリアーナがバジルの前に、トマトクリームパスタがローズの前に、そして特大のペスカトーレが、ノアの前に鈍い音を立てて置かれていく。


 ウェイトレスが伝票に印を付けている間に、ノアがローズの方へと特大の皿を移動させると、ローズから通常サイズの皿を受け取る。


「噂話って、どんな?」


 ノアがフォークを手にしながら、バジルの方を見て訊ねる。

 伝票から顔を上げたウェイトレスはテーブルを見て少し目を見開いたが、素早く切り替えて微笑むと、次の持ち場へと向かっていった。


「それが、奇妙な話なんだけどね、隣町で目撃情報が相次いでいるらしいんだ」


「何の…?」


「それが……………」


 バジルがパスタを飲み込んでから、たっぷりと間を取り、言った。


「『竜』、の」


「「りゅう……?」」


 二人して、素っ頓狂な声で聞き返した。


「作り話なんかじゃないよ、本当に出たんだ。目撃情報だけじゃなく、人が襲われた事例も出ている。今はもう町中がその話で持ち切りさ。」


「だはは、そんなもんいるわけねえだろ〜?この町の人らは相当ひまなんだなぁ」


 ノアが笑いながら食べ進める。


「それ多分、巨大コウモリだよ。私もたまに森で見たもん。まあコウモリは人を襲わないけど」


 ローズも口の端にソースを付けながら笑っている。


「違うよ、本当に出るんだよ…!コウモリなんかじゃなく、本物の、竜が!」


 バジルが熱く語り掛ける。


「その目撃された竜というのが、太古に絶滅したとされる竜とそっくりなんだ。僕も昔図書館でその史伝を見たことがあるんだけどね、目撃者の言う特徴とほぼ合致している。これはもう、蘇ったとしかいいようがないんだよ。

 夢があるとは思わないかい?絶滅したはずの竜が、時を超えて僕達と同じ時代に姿を現したなんて!」


 バジルの熱量に気圧されて、ノアがパスタを口に運ぼうとした手を止める。


「うーん…まあ確かに本当だったらすげぇよ?でもなあ…いまいち信憑性にかけるっていうかなんていうか…まあ、実在しなくても疑うより信じた方が夢はあるよなあ。」


「いるんだってば…!」


「え〜〜ほんとにぃ〜?」と茶化しながらノアが言うので、バジルが若干むっとした表情になる。


「…じゃあ、この話は知ってる?竜がいたとされる時代に、何の戦闘方法が取り入れられていたのか。」


「…それも知らねぇなあ……」


「………『魔法』、なんだよ」


 バジルの言葉に、ノアは口の中のものを飲み込んでから表情を変えずに言う。


「それもあれだろ、作り話。」


「あはは。うん、まぁ。流石に僕もそこは信じてはないんだけどね。でも昔見た本に書いてあったんだ。昔人間は魔法を武器に、竜と渡り合っていたって。

 その本によるとね、魔法を使える人間は、舌にね、模様が刻まれるんだって。」


「ここに」とバジルが舌を出し、フォークで示した。


 ノアもグラスの水を飲み、「なんで舌?」と言いながら舌を出す。


「あるか?」


「ないねえ……僕の方は?」


「ないな」


 一拍置いて、二人の間に馬鹿馬鹿しい空気が漂う。二人して肩を震わせて笑い合うと、ノアはローズの方へ意識を向けた。


「ローズはどうだ?」


「ん?」


 ローズが口を開いてべっと舌を出す。


「うわ!きったねえ!!!!ちゃんと飲み込んでから口開けよ…!!」


 ローズが口をモグモグとさせながら「うるさいなあ」とぼやいた。そしてごくんと音を立てて飲み込むと、再度口を開く。


「どう?」


 ローズはこの時、このくだらない一連のノリに乗っかったつもりで聞いていた。魔法が使えるなど創作の中の話であって、現実で有り得るはずがないのだから。


 しかしいくら待っても予想していた反応が一向に返って来ようとしない。疑問を感じたローズは、舌を引っ込めてもう一度聞き直す。


「ねえどうした?」


 二人して口を半開きで見つめてくるのがおかしくて、ローズは息を吐くように笑いを零した。


「二人とも、今すっごい間抜けな顔してるよ?」


 ローズは、牧場にこんな顔する羊いたなあと思い出して、吹き出しそうになるのを堪える。


「ローズ……もっかい舌見せてみろ」


 そんなに舌を見せて何があるというのか。その模様とやらがあるわけでもないし。そんなことを思いながら、ローズは面倒くさそうにノアの言葉に従う。


「ローズちゃん…最近身の回りで何か変わったことはなかった……?」


「ははったはほ?(変わったこと……?)

 はははなへえへほ(何もないけど)」


「じゃ、じゃあ、変わった花を見たりしなかった?」


「花……?」


 舌を引っ込めたローズがそう聞き返すと、バジルは頷いてから、鞄の中のスケッチブックを勢い良く取り出し、凄まじい速さでペンを走らせていった。


「花弁が透明の、こんな花に見覚えはない?」


 スケッチブックに描かれていたのは、凛と咲き誇る、華やかさこの上ない一輪咲きの花。花冠かかんは「花の女王」と呼ばれる薔薇の系統、ハイブリッド・ティーに似た形をしているが、その花弁の先端部分は、まるでレースのような、繊細で優美な透かし模様が刻まれている。本来ならば青々しく花の色を際立たせる小葉は、飴細工のような糸状へと変貌を遂げ、螺旋のように花全体を包み込んでいる。そして本来雄しべとなる部分には、美しい輝きを放つ小さな宝石に似たものが散りばめられ、その美しさと毒々しさのアンバランスさが危うげで魅惑的な唯一無二の存在感を放っていた。薔薇のようであって、薔薇ではない。花と呼ぶにはあまりにも艶めかしく、そして神秘的で非現実的な花であった。


 ものの五分で描き切ったバジルのその絵をローズは食い入るように見つめていたかと思うと、突如「ああぁ!!」と大きな声を発した。


「それ!!」


「見た事あるのかい!?」


「うん!この間、ちょうど昼寝をしようとした時にね、生えてたよ、森に!珍しい花だなーと思ってそのすぐ隣で寝たんだけど、起きたらなんの気配もなくぽっかり消えちゃってた。何だったんだろ、あれ。」


「それは本当!?本当に、この花が生えてたのかい!?」


「うん。ちゃんと覚えてるもん、間違いない。にしても上手いねー、そっくりそのままだったよ。」


「嘘だろう、本当にこんなことが起こっているなんて…!!」


「え?」


「ローズちゃん!」


 バジルが斜め向かいに座るローズへと熱の篭った眼差しを向ける。


「お、おう…」


「もしかすると……ローズちゃんは、魔法が使えるかもしれない」


「……………そんなのに騙されるほど私馬鹿じゃないけど。」


 ローズが呆れたように目力を弱めて答える。


「驚かないで聞いて欲しい。

 …ローズちゃんの舌にね、あるんだよ。……その模様が」


「まっさかあ」


「見てみなよ、ほら」


 バジルがローズにスプーンを差し出す。興奮から来ているのだろう震えが、スプーンにまで伝わっている。ローズは右手でそれをすっと受け取ると、反射して映る自分の顔を見つめた。


「…………なんだこれ」


 舌を出したまま、何度も角度を変えてスプーンを不思議そうに見る。


「これが、本に載ってた模様?」


 ローズが怪訝そうにたずねた。自分の知らぬ間に、身体に異変が起きていたのが不快だとでも言わんばかりに。


「そう…僕が見たのと全く同じものだ」


 バジルが重々しく頷く。


 それは、揺らめく太陽を描いたような、緻密な線の集合体。強い光を表現したようなうねりが中心から遠ざかるように先を伸ばし、ラウンド・ブリリアントカットの図面にも似た、一寸の狂いなく計算され尽くした線が中心を取り囲んでいる。そしてその中心に構えるのは、八枚の尖った花弁を華麗に咲かせる星。

 装飾的でありながら神聖さをも思わせる、そんな魅力がこの模様にはあった。そしてこれだけの線がありながら、ひとつも欠けてはならぬその左右対称の完璧さは、人の目を惹き付けることで存在価値を見出しているかのようであった。


「んなまさか。舌に模様があったからって魔法がどうだとか、ある訳ないだろそんな話。ローズもどうせ舌に彫ってるとかそんなんだろ?そうでもないと腑に落ちねぇよ」


 ノアがテーブルに肘をつき、吐き捨てるように言った。こんなバカバカしい話に付き合っていられるか、と身体全体で語っているかのようである。


 当のローズは、自らの左手をじっと見つめている。かと思うと、唐突にノアの顔面目掛けてその手を突き出した。


「うぉわァッッッ」


 ノアの後頭部がソファへと強打する。


「信じてるんじゃん…!」


 ローズが馬鹿にしたようにげらげらと笑った。


「信じてねぇし!」


 言い返してほんのり赤くなった頬が、さらにローズの笑いを誘う。


「誰だっていきなり顔の前に手を出されたらびっくりするだろ…!」


「ふっ…っふふ…だとしても、そこまで驚かないよ。というか食べることが生きがいの私がそんなことする訳ないじゃん。

 …それで、その本には何したら魔法が使えるようになるって書いてあったの?」


 くすくすと声を震わせながらローズがそう問うと、柔らかかったバジルの顔が徐々に強ばっていった。


「それは……」


 急に口が重くなったバジルの周りでは、窓からの強い光によって輝くほこりがキラキラと浮遊していた。








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マジェスティック・フロレゾン 飴山 @ameyama

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