最終話 そして1年後……
あれから、1年経ちました。
1年経って、私は、河内ゆりは14歳になり、中二の年齢になりました。
身長はちょっと伸びましたけど、まだ「ちっちゃい」って状況は変わって無いですね。
まぁ、別にコンプレックスじゃありませんけど。
センパイが去って1年。
あの屈辱の敗北。
思えば、私にも原因があったんです。
逆転の一点のみに気をとられ、仲間全てに事前に根回しをすることを忘れていた私にも。
全員に、実行前に作戦内容を伝えれば、結果は違っていたと思います。
だから、私も悪いんです。
なのに。
全責任を背負って、優子先輩は田舎の支部に左遷されていきました。
申し訳なかったし、悲しかった。
フラれましたけど、大好きな人、最愛の人なのは変わりないですから。
だから、優子先輩にはよりよい人生を歩んで欲しかったんです。
ずっと気にかけていましたよ。
その後のセンパイ、どうなってるんだろう?って。
メールで「その後、どうですか?」って聞きました。
わりと、頻繁に。
「大丈夫だから。気にしないで」
「ここも住めばいいところよ」
……センパイ、強がってませんか?
センパイからの返信の文面を読みながら、私はそう思いました。
鍛えぬいたオーヴァードとしての才能を全く使えず。
何も無い田舎で腐らされているなんて……!
悲しすぎます。
でも、それを私に正直に伝えて、私に心労をかけまいと。
そうですね?そうなんですよね?
センパイの近況を伝えるメールの文面が明るいのを見るたび。
センパイの本心を想ってしまって。
私は涙ぐんでしまいました。
そしてセンパイが左遷されて1年後。
センパイが住む田舎町で、ジャームによる犯罪が起きたという話を、事後で聞きました。
で、支部に人員が足りないので、増援要請が出たとか。
悔しかったです。
そのとき、私は別の任務にかかっていて、手助けできない状況だったから。
もし、そのとき手が空いていたら、増援要請で真っ先に手を上げていたのに。
私の代わりに増援に出向いたのは、腕っぷしだけ、繊細さに欠けると陰口を叩かれている問題児のオーヴァード姉弟「泉姉弟」
まぁ、事件は無事に解決できたらしいので、彼女らを悪く言うのは良くないですね。
仕事はちゃんとしたんですし。
事後で知った後、私はスマホでメールを打ちました。
『センパイ。大変なときに全く手助けできなくてすみません。別任務で忙殺されていたんです。手が空いていれば、真っ先に手助けに駆け付けたんですけど』
しばらくして、返信がありました。
『気にしないで。完全に解決したから。色々悲しいことはあったんだけど、全部解決したから』
『それより聞いて』
次の文面を見たとき、目を疑いました。
『私、彼氏が出来たの!1年越しの恋が実ったの!すごくかっこいい男の子!』
『私、絶対にこの人と結婚する!』
『左遷されて良かった!!田舎バンザイ!』
……センパイが、堕落したーーーーー!!!?
自室の机でそれを読んだとき。
私は崩れ落ちました。
左遷されて良かったなんて言う人じゃ無かったのに!!
センパイは、身の回りのことをするのは苦手な人でしたけど、努力家で、頭良くて、俊敏で、キリっとしてて……
高潔で、かっこいい人だったんです。
それなのに、こんなことを言うなんて!!
どうして!?
……
………
そうか。
男か。
男なのね?
そうなのね?
きっと、恋愛経験がほとんどなくて、耐性の低いセンパイを、男が堕としたんだ……!
ひょっとしたら……
センパイは、男の家に住まわされ、そこでパンツの着用を禁じられて、それでも男に篭絡されているセンパイは笑顔でそれに従って……
男が欲情したらスカートをまくり上げてお尻を突き出す生活を送っているのかも……
で。
ある日、私に動画が送られてくるのよ。
動画の中のセンパイは、満面の笑顔で。
「ゆりちゃん。久しぶり」
「私、とても今幸せ」
「毎日毎日、ご主人様に子宮に熱い精子を注いでもらって」
「今、おなかに赤ちゃんが居るの」
ここで、カメラがセンパイの大きく膨れたお腹に向いて
センパイがマタニティウェアを着ていることもここで分かり
「もうすぐ生まれるの。この子生まれたら、多分またすぐに次の子が入るんだろうなぁ……」
センパイ、異様な狂った笑顔でお腹を撫でまわしながら。
……センパイ!!
自分の想像に、私は今すぐH県T市に出向いて「センパイ!卵子は無事ですか!?」と殴り込みをかけたい衝動に駆られました。
私のセンパイが、違う人になってしまう!!
ちなみに、まだこの想像は良い方です。
私はもっと悪いパターンを考えてしまいました。
休暇をとって久々に会いに行ったら、センパイ、髪の毛を金髪に染めてて。
腕には刺青があり、身体中にピアスをしまくってて。
すごくケバくて露出の多い服を着てて。
私が「センパイ、変わりましたね」とレイプ目で言うと
「あ、これ、彼氏の趣味」
って煙草を吸いながらセンパイに返される。
くっそおおおおおおおおおお!!!
これ以上、センパイを汚すなぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
ぶっ殺してやる!!
そんな真似をしたら、ぶっ殺してやる!!
自分の想像に涙しながら、私は立ち上がります。
泣いてるだけじゃ何も解決しないんです。
こうしちゃいられません。
決断は、早くないと!!
私はその場で、H県T市への異動願を書き始めました。
私がセンパイを守る!!
そして同時進行で、現在H県T市支部の支部長をしている秋月土門を告発する準備をはじめました。
どうせ、叩けば埃が出る人物なのは間違いないです。この際、消えてもらいましょう。
そして、空いたポストに私が座るんです。これで完璧。
私がH県T市支部の支部長になります。
……で、秋月さんの新しい勤務地は、沖ノ鳥島支部なんてどうですかね?
UGN唯一の船上支部。
国境防衛任務も兼任できますし。
きっと、やりがいありますよ?
(了)
私が昔居たチームの話/はじめての旅行 XX @yamakawauminosuke
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