あの人みたいになれなくて
「ねえ、結局あのときにした願い事って何だったの?」
「もういいだろ。秘密だって」
熱い日差しの中、真っ白な日傘を差した望海が俺の顔を覗き込む。
「ずるーい!私はあのとき教えたのに」
唇を尖らせた彼女はケラケラと笑うと、肩まで伸ばした髪を揺らして前を向いた。
あの流星群から5年。俺たちは喧嘩を何回かしたけれど別れることなくこうして、二人で地元へ帰ってきた。
お盆だからか、普段よりも人が多い霊園で俺たちは並んで両手を合わせる。
「先輩、よろこんでくれるかな」
「あの人なら、きっと、な」
俺たちは結婚することに決めた。
今日は、お互いの両親に挨拶をするために地元へ帰ってきたが、せっかくだからということで裕臣先輩の墓参りをすることになったのだ。
あの流星群の日、俺が願ったのはただ一つ。
彼女と俺が一緒にずっと居られますように。
まだ願いが叶うかはわからない。
もう先輩が死んでから8年も経つのに、追いついた気は全然しない。
それでも、俺は俺のままでいいと彼女が言ってくれたから、無理をしないでありのままの俺でいようと思います。
顔を上げて、隣にいる彼女を見る。
彼女の瞳は少しだけ潤んでいるようだった。
そっと望海の手を引いて、俺たちは先輩の墓を後にした。
星が降る夜に 小紫-こむらさきー @violetsnake206
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