僕とあの子と紫陽花と

hana

第1話

#ショートショート #紫陽花


ぼくとあの子は小さい頃からの幼なじみです。


おとなり同士、家族ぐるみで仲が良く互いの親が互いの子どもであるかのように

ときにはよろこび、

ときにはしかられもしました。


ある日、

あの子の両親がやって来て、

「あの子はもう長くないかもしれない」

と伝えてきました。


ぼくとあの子の両親はずっと話をしていました。

『あの子がいなくなる』

というさみしさやつらさよりも、

長く生きることができやしないかと思い、

話を聞くと治る見込みがあるとのことで、

方法はぼくには分からなかったけど、

あの子の両親があの子に

その方法で救えるとのことでした。


そのときに思い出したのが、

ちょうどこの時期に咲く紫陽花に

ペットのように話しかけたあの子でした。


話もそこそこに、

すぐにその場所に行くと

あの子を思い出して泣きそうになります。


「そこの少年?何を悲しんでいるのかい?」


驚いたぼくは周りを見回したけど、空耳だと納得しようとしたそのとき、


「目の前の紫陽花だよ、さっき青色がしゃべったけど、声が違うの分かるかい?」


確かに、

さっきは赤紫がしゃべっていて、今度は白色が

「どうしたんだい?」

と、聞いてきました。

そこでぼくは、

ここに来ていたあの子がもう長くないことを伝えました。


そのとたん、

大雨に遭い、紫陽花たちも泣いていましたが、

「僕たちのそれぞれの色の紫陽花を一本ずつ切ってあの子に持っていって!」

「あの子は晴れのときも雨のときも、春も夏も秋も冬も僕らに君たちやあの子のいろいろなことを聞いていたんだ」

「雨をふくんだ紫陽花を切って持っていくと

素敵なことが起こるから!」

と、言うとだまり込んでしまいました。



早速、

ぼくの両親からあの子のいる病院へ行って、

あの子のもとへ行くと、

そこには

普通のあの子がベッドに座っていました。


「どうしたの?」

「「どうしたの?」はこっちのせりふ!」


あの子は、

急に来たぼくに


ぼくは、

普通の元気に見えるあの子にそれぞれ驚いて、

その驚きで

忘れそうになりかけたものを渡しました。


「あの紫陽花たちに逢いたいのかなぁって」

「気になってた!今年も元気に咲いたのね!」


その出来事から数日であの子が元気に退院したのです。


あの子の親もぼくの親も

お医者さんも信じられないと驚くばかり。


不治の病で

ほぼ手のほどこしようがなかったのですから。



それからは、

元気になったあの子と

その紫陽花の場所で水をあげたり、

話しかけたりするのでした。


もう

紫陽花はしゃべることはありませんでしたが、

そこにいるみんなが幸せでした。

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