塩の決断
カタオニクス
後戻りする気は無い
砂糖「嘘だろ?冗談はよせよ。」
塩「いや、もう決めたんだ。」
砂糖「なんで黙ってたんだよ!相談くらいしろよ!」
塩「相談…できるかよ…。いいよな、お前は。みんなに人気があって…。」
砂糖「…。」
塩「…ごめん。そういうつもりで言ったわけじゃないんだ…。」
砂糖「お前だって必要とされてるだろ!俺はただ甘いだけの、栄養素としては特に不可欠というわけでもないんだぜ?」
塩「…。」
砂糖「でもお前は違う!塩分がなきゃ、人は生きていけないんだ!お前は必要なんだよ!」
塩「でも、摂りすぎはよくない。…ちょっと前から気になってたんだ、味噌汁も醤油も、どんどん減塩になってきてる。」
砂糖「だからって…だからってお前まで減塩になる必要ないだろ!…そうだ!人間たちがお前を使う量を普段から意識して減らせばいいんじゃないのか?そしたらお前も減塩になんてならずにすむんじゃないのか!?」
塩「お前は昔っから甘いやつだな…。砂糖だけに、ってか?」
砂糖「…茶化すなよ。」
塩「このまえ、魚の塩焼きの仕事があってな。どうなったと思う?」
砂糖「…。」
塩「皮だけ残されたよ…。あの時の気持ちは俺自身以上にしょっぱかったなぁ…。」
砂糖「だ…だから、最初から控えめにしてたら、皮まで美味しく食べてもらえたはずだろ?」
塩「そうかもしれないし…そうじゃないかもしれない。」
砂糖「なんだよ…それ。」
塩「…化粧塩って知ってるか?」
砂糖「化粧…塩?」
塩「俺は味付け以外に焼き魚を美しく見せるって仕事もあるんだ。その俺が少なくなって、化粧塩の仕事を放棄したら、せっかくの焼き魚も食べてもらえないかもしれない。」
砂糖「そんなの…人間たちの勝手だろ…!」
塩「その勝手に、答えたいんだよ。俺は…。」
砂糖「なんで…なんでお前が犠牲にならなきゃいけないんだ…!」
塩「犠牲だなんて思ってないさ。お前が俺のことそんなに心配してくれてるなんてな。俺の人生もそこまでしょっぱくなかったな…。」
砂糖「おい…おい、待てよ!お前が減塩にならずに済むように何かいい方法を考えるから!」
塩「…お前はその甘さを大切にしろよ…。じゃあな…。」
砂糖「おい…塩!……塩ぉーーー!!」
塩(なんでかな…今日の涙はいつもよりしょっぺぇや…。)
了
塩の決断 カタオニクス @furukikkk
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