第4話
「そろそろこれ着けようか」
帝都から認識されるであろう距離まであと数十キロといったところだ。
ドラゴンならあっという間の距離だ。
最後の準備に取り掛かる。
僕はエシルに仮面を渡した。
この仮面は「十面相」という魔導具だ。
魔導具とは魔力が宿った不思議な道具だ。
ダンジョンなどからとれるものを天然といい、人の手で作るものが人工と言われる。
基本天然のほうが効力が強い。
十面相もダンジョン産の魔導具だ。
ピエロが笑っているかのような見た目をしている。
十面相は着けると種族、身長、体系などを変えられる。
エシルは尻尾がなくなり見た目は仮面とフード付きのコートが相まって怪しい人が完成している。
「だいぶ変えましたね、空様。」
「結構変えてみたけど、どう?」
「とっても似合ってます!」
変えたところは背丈と髪色だけで、僕の格好もエシルと全く同じで当然怪しい人になっていると思うのだが、似合ってるというのは褒められているかな?
エシルは褒めていそうだけど、褒められている感じがしないな。
「こうして視線が合うのも新鮮でいいね。」
今は仮面でなくなっているがエシルの尻尾があったらブンブンとふっている姿が想像できる。
以前より若返らせられて異世界に飛ばされたらしく、子供の姿で飛ばされてしまった。
四年でそこそこ大きくなったがそれでもまだエシルたちには見降ろされている。
「ドラゴンたちにかけた認識阻害の魔導具も大丈夫?」
エシルがきりっとした表情に戻り、大丈夫だと返事を返してくれた。
ドラゴンの大群は目立って仕方ないから認識阻害の魔導具を使っている。
この世界に来てから何度も思ったが、魔導具が便利すぎる。
魔導具というより魔力がなんでもできすぎる。
異世の人々は魔力を魔法の使うための力程度にしか思っていないが、僕は魔力を“なんでもできる”力やエネルギーだと思っている。
大地を割り、天候を変え、死者を蘇らす。
“奇跡”を“当たり前”に墜とす力だ。
異世界で生きるものは全て魔力を持っている。
異世界は皆が奇跡を殺せる世界だった。
こんな世界がつまらないわけがない。
ヒトガタリ @ginkaisyoku
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