5話 黒猫と夜鴉


『それではぁ、ご要望の通りにまず宇宙母艦〈つくよみ〉からご案内いたしまぁす』


 案内係りの女性と共に、6人を乗せたエレベーターガレージが下の階層へと降りていく……。


 セイラはレジーナと他愛のない会話をしていて、シモンは案内係りの女性と施設内についての情報を聞き出しているようだ。他の2人は1人ずつ一定の距離を置き、各々で考え事にふけっている。


 尊敬していたベルスロートとも一度話しをしてみたい思いはあったが、先にサトシが声をかけたのは……。


「お久しぶりです……バール中佐」


 彼が話しかけたのは、ガレージ内の壁に1人背中を持たれ掛け腕を組んでいたバルカン半島の英雄、バール・グラントである。

 お互いに旧知の間柄のようであった2人の会話は、他には聞こえない距離だ。


 ちなみにバルカン半島があった地域は、異常気象による環境の変化によって海面が上昇したことで、地中海と黒海(トルコとロシアの中間に位置する湖)がほぼ繋がり今や海峡のようになっているが、その上空に建設された陸路によって新たな街が築かれている。


「キミか。あれからちょうど2年ぶりになるかな……機動偵察部隊〈黒猫ブラックキャッツ〉。民間人と戦闘員の区別もつかなかったあの戦場で、環境テロリストたちの配置場所を見事特定し奴らを壊滅することができたのも、キミがいたあの部隊抜きでは成し遂げられなかっただろう。ブライトン少尉……特にキミの抜きん出た運転技術のセンスには、あの時から目を見張るものがあった」



【機動偵察部隊〈黒猫ブラックキャッツ〉】

 正式な名称は、空軍陸戦隊所属機動偵察部隊〈黒猫ブラックキャッツ〉である。

 隠密偵察から破壊工作まで。メンバーはたった10人ほどの分隊編成ではあるものの、各々に与えられている得意な役割(索敵・妨害・破壊工作など)を、各自が1人で最後まで完遂するという方式で、専門分野ごとに個人が特化した少数部隊。使用する航空機は主に偵察機や小型機。



 そう、今は閑職に追いやられ事務員をしている劣性の身のサトシがかつて籍を置いていた部署というのは、空軍の中でも陸上戦をも想定された陸戦部隊……それも一介の兵士ではなく、選抜された精鋭部隊出身なのだった。


 ちなみにこの時代に至っては、本当の意味での陸地や海は環境汚染によってすでに活動不可能となっているため、陸軍はおろか海軍という組織も完全に廃止されている。

 したがって事実上各国が保有している軍事組織(警察や諜報機関などは除く)は、伝統的にその名前だけが残された【空軍】のみである。


「いえ、そんな大したものじゃ……俺なんて索敵目的の偵察はできたって、戦闘技術の方はからっきしダメで総合でもD判定なんです。〈ナイトレイブン〉……中佐が率いていたあの特殊強襲部隊のような真似は、俺には到底できません」



【特殊強襲部隊〈夜鴉ナイトレイブンズ〉】

 正式名称を、空軍司令部直轄特殊強襲部隊〈夜鴉ナイトレイブンズ〉と言う。

 戦闘機の中でもよりステルス性レベルが高い機体と、精密かつ限定的な火力兵器を用いて作戦範囲外の対象物を無益に汚染、または破壊し過ぎないことを目的とした特殊戦闘部隊。

 メンバーは数十人からなる小隊と言われているが詳細は定かではない。戦闘機や爆撃機を使用することもあるが、陸戦までも幅広くこなす。



「あそこは本当に恐ろしい戦場だった……何せ、足元もおぼつかない老人の持つ杖が火を吹き、幼気な少女が抱える花束からは携行式地対空ミサイルが放たれて来たんだ。今思い返してもぞっとする……」



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当時を回顧する描写



 サトシ、この作戦……必ず成功させようなっ。


 あははっ……もたもたしてると置いてっちまうぞ。


 ど……どうなってんだよこれ、計器がめちゃめちゃに狂ってて制御が全く効かねぇ。


 す、すま……ねぇ、サ……シ。

 後を頼――わああぁぁぁ……ザザザ、ピーーーー。




『1番機、ロスト。1番機、ロスト……』


*******************






「おい、見えてきたぞ……あれだろ? 宇宙母艦〈つくよみ〉って、あのデカいシートに覆われてる奴」


 この建物に入り、エレベーターでブリーフィングルームに着くまでの間に見えた――今目の前の格納庫にある代物を指差して、シモンが案内係りの女性に尋ねた。


「くっくっく、こいつは笑える。冗談のつもりなのかい君は。こんな小ささ・・・で惑星探査ができると思っているなんてね」


 シモンを鼻にかけるように笑ったのは、ベルスロートである。


『はぁい、その通りです。これは〈つくよみ〉ではありません。小型偵察挺〈かぐや〉でございまぁす』


「「「なん……だって?」」」


 エレベーターシャフトが停止し、広い格納庫内に被されていた大きなシートが、庫内にいる職員の手によって取り払われる――。


 皆の予想は大きく外れ、しかも案内係りの女性はこの三角形の形の白い紙飛行機を更に折り畳んだような機体を小型・・偵察挺と説明した。


「どういうこったよ、じゃあ〈つくよみ〉は一体どこにあるってんだ姉ちゃん……あぁん?」


 辛抱堪らずシモンが案内係りの女性に詰め寄る。


『うふふ、もう皆さんずっと前からご覧いただいてますよぉ。』


「「「??????」」」


 きょとんとした顔で3人の目が案内係りの女性に集まる。

 ベルスロートは1人理解したようで、片手を額にあてがい嘆くようにため息をついた。


「まったく、これだから凡人共は……冷静に考えたら分かるようなことだろう」


 とてもその言動からは、あの非合法NGO団体【国境なき孤児院】の代表をしていたとは思えない。


「ま、まさか……この建物自体かっ?」

「ようやく分かったかい、艦長」


 ッ――!?


『はぁい、半分正解でぇす。その全長は旧世代の原子力空母より少し小型の200m、今は横幅になりますが高さは50m。あ、もちろん外からも見える外壁だけ・・は、この〈つくよみ〉を外から隠蔽するための単なる覆工板(矢板とも)のような物になりますぅ。ちなみにぃ、重力変化にも対応していますのでぇ、室内のあらゆる器具は大気圏を抜ける頃には、きちんとした角度で再設置されることになりまぁす』




南沙諸島は中華連合の軍事的圧力から逃れる為に庇護を求めて来たことで、半世紀くらい前から旧日本国と合併しジパング諸島共和国となった。



操縦することだけ・・に関して言えば、誰にも負けない優秀なエースパイロット



晩餐会でみんなと話し、メンバーの性格などを把握する。


前夜にFFみたいなふれあい





すまなかった、お母さんのこと

それは、もういいのよ。

私折り入って、あなたに言わなくてはいけないことがあるの……言えず。



翌朝、脱走を計ろうとしたシモンへの戒めとして、急遽7人目のルクストリアが拉致され緊急参加。



→翌朝ルクスが合流してシモン、サトシ、セイラが仲良くしているのを見て疑問に思い、セイラに本性を尋ねつつ早目に打ち明けるよう指摘。





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俺たちはあのモフモフを忘れない 三田のぶてぃえる @mita_nobtiel

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