第5話 終章

「あやと付き合うの無理してるだろ? あの文化祭で、ギャラリーの前で告ったら断れないのわかってて言ったんだよ」

 本当は断りたかった。昔から暴言暴力と。自分が断れない性格というのもあるけど。

「――それにてっちゃんと付き合っていればあやの外面の良さはバレないからね。だからね」

 そうなんだ、俺はあやにとって身内なんだ。

 だからあんなことが平気でできる。

「あやはね、見栄の塊なの。本当は自分に自信ないの。だから身内以外で外面いい子で自分を抑えているの。自分の人気のためなら身内の犠牲はいとわないタイプ」

りなねえの話にたーにーは「ほんとそれ」と言わんばかりに頷く。

「・・・おれ、元々あやが苦手だったんです。気が強くて、俺の意見は真っ向から無視。意味もなく殴りかかってくる。もう、彼女に疲れました・・・」

 と俺の足の力が抜けた。

「あやにはお灸を据えないと。てっちゃん、あやへの想いと称して洗いざらい自己主張の時に話したらいいんだよ」

「うん、それ賛成。証拠を集めてみんなの前で披露するのよ」

 と菅原兄と姉がノリノリで言い出した。

 あぁ、その手があったわ。やっぱりあやの言うとおり馬鹿なのかな、俺。

「あやみたいなタイプって人前で恥かかされるのを超嫌がるからね。ダメージは大きいよ」



 りなねえの言うとおり、あやへのダメージはかなり大きかった。

「元はあたしを怒らせるてっちゃんが悪いのよ! 恥かいたじゃない!」と騒いでた。

 りなねえとたーにーに報告すると「よかったね! 効果があったわ」と満足げ。

 ギャラリーの前であんなに証拠を出されたんだから多少は反省すると思っていた。

文化祭の後すぐに「ごめんねぇ、もうしないから」としおらしくわざわざ俺の教室まで来て、クラスメイトがいる前で俺に謝ってきた。しかし謝罪のやり方が演技っぽい。

「もうおまえ女優目指せよ。アカデミー賞総なめだぞ」と俺は皮肉を投げた。

 クラスメイト達がクスクスと笑う。

 あやは顔を真っ赤にして「あとで覚えてなさい!」と教室をあとにした。

 あの自己主張の一件で俺は吹っ切れた。あやに対して言い返すようになった。

 徐々に俺はあやと距離を置くようになり気づいたら自然消滅してた。

 周りはあやが話しかけても必要最低限しか返さなくなってきた。

 あやは「いじめだ!」と担任にチクってたが、担任からは「君は渋谷くんにしてたことが返ってきてるんだよ。どの口でいってんだか」と一蹴されたそうな。



 卒業式であやは写真をクラスメイト達と撮ってもらおうとしたがことごとく断られたという。

 俺も言われたが断った。何をいまさら。

 ああそうそう、俺は無事に第一志望の大学に決まった。

 たーにーと同じ大学だ。

 あやは大学は遠方にしたそうな。有名どこの。


 自分の過去を知らない人のもとにしたんだろう。わざわざ遠方にしたのは。

 

 ――菅原あやの外面の良さはアカデミー賞ものである。

 今度は誰があやの演技に騙されるのだろうか。


 すくなくとも俺はもう関係ないんだから。

 




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外面いい彼女に疲れたので、もう別れていいっすか? 月見里ゆずる(やまなしゆずる) @nassyhato

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