方言バトル企画入賞レビュー「都会の女と田舎の少年」


 都会からフラっとやってきた「ワケありの女性」に地元の不良少年が恋をする。
 ありがちな設定なのにこの作品が輝いているのは、少年ではなく都会の女を主人公にして訪問者の視点で物語を紡いでいる所でしょう。まず女性の事情を知らしめておき「どうもこの恋は成就しそうもないぞ」と読者に予見させておきながら、これでもかこれでもかと幸せそうなエピソードや恋の試練を投げかけてくる構成は実に意地悪です。
 しかし、だからこそ読者は逆に引き付けられるのでしょう。

 かなわぬ恋であればあるほどそれは燃え上がり、貪欲なまでに求め合ってしまうものですから。二転三転する田舎の人間関係や、徐々にヒートアップしていく恋心は、約束された破滅と合わさってどのような終焉がもたらされるのか貴方の好奇心をとらえて離しません。
 そして、この設定から誰もが予測する結末を大きく裏切る形で物語は幕を閉じるのです。手法としてはミステリーですが、その実態は優れた恋愛娯楽作品。

 客観的に見れば魔女の来訪によって平穏が乱された形ですが、少年にとってのそれは違うのです。変化も希望も乏しいよどんだ日々に突如としてもたらされた鮮烈な感情。それは短いながらも青春そのものであり、命を燃やし尽くすに値する恋心なのでした。
 それをどう感じるかは読み手である貴方次第。
 パッと燃え上がる花火のような恋愛譚をお求めの貴方へ、おススメです。