第4話
缶コーヒー片手に、渡は仕事をしていた。
人とは何かに縛られている方が仕事に集中しやすいのかもしれない。
50日振りの休暇の次の日には、仕事が増えた。
ジェフから、eコマースサイトの管理も任されたからだ。
もちろんシステムとしては、仕入れ・販売・出荷・在庫管理といった普通のeコマースサイトだが、取り扱っている商品が違う。
・”観賞用の”有名人の写真
・”観賞用の”拳銃や実弾
・”観賞用の”薬
主に上記の商品を取り扱っており、ジェフの方針で直接人を傷つけるものや、生き物の販売は禁止している。なお、支払いは仮想通貨のみである。
もちろん建前上はというだけで、中にはヒットマンや人身売買に関わる依頼をチケット形式で販売している卸売業者もある。
弊社としては、そういった商品の販売は禁止し、AIを使って見抜いている。
その点は普通のフリマアプリやeコマースサイトと同じである。
ただ上記の販売する際には、運営母体は一緒だが、建前上別の組織が運営している別のサイトを薦めているだけであるので、実際問題需要のある”商品”の販売を止めることはない。
本日は”観賞用の”写真として、一人の少女が売りに出されているのを発見した。
こういった写真は、AIで人身売買の可能性を示す判定になる、卸売業者にはメールでの連絡と共に電話で確認を入れることにした。
その際に出てきた担当者は、日本人ではなかったため、ロンが作成したお手製の自動翻訳システムを利用した通話に切り替えた。
担当者「その子の写真を売っているだけだ」
渡「ですが、写真だけで数百万円の値が付くのは何か理由があるのですか?」
担当者「何か問題があるのか?」
渡「人身売買に利用するのであれば、利用規約違反のため、メールで送付したサイトを利用するようにお願いします。」
担当者「そっちは手数料が高い」
渡「では、あなたのアカウントをロックすることになります。なお当サイトでロックされた場合は、仮想通貨システムのアカウントもロックすることになる規約となっているのですが、よろしいですか?」
担当者「わかった。そっちのサイトにする」
こんな感じのやり取りをする日常だ。正義感の強い人にはできない仕事であることは間違いない。
ジェフも渡を海外に売り飛ばさない理由として、「こういった仕事が躊躇なくできると見込んだからだろう。」と後から思った。
でもやっぱり、胸糞悪いのは事実である。
渡は組織に歯向かうこともせず、ただ仕事に没頭していた。
所詮世の中は「搾取する方か、搾取される方か」であることを、渡はわかっており、自身も心臓の近くに埋め込まれたチップによって、最期まで働かされる人間であるからだ。
何もせず一生を全うするのか、自身の知らない世界をもう少し体験してから最期を迎えるのかでは、渡は後者を選ぶ人間であった。
Cyber Mafia/サイバーマフィア 名無しのタケフミ @fumiken
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Cyber Mafia/サイバーマフィアの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます