★『狂人の正論、あるいは、常人の極論』尾頭いるかさん

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(尾崎ゆうじの)

『第6回小説の「続きが気になる度」を評価してみた!』


 評価シート


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作者さんへ……このたびは企画にご参加いただきありがとうございます。

読者さんへ……本ページにお越しいただきありがとうございます。「この作品良さそう」と思ったら作者さん並びに尾崎のフォローをお願い致します。



1 作品タイトル『狂人の正論、あるいは、常人の極論』

作者名: 尾頭いるかさん

  作品リンクhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054921002702

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2 本作のキャッチコピーとあらすじ引用(抜粋)

 

(キャッチコピー引用)

2回死に損ねて3度目の正直を目指す女の子の心内を知りたい人いらっしゃい


(あらすじ引用)

御礼!! 2日連続(ぎりぎり……)コンテスト、ランキング100入り。

本編完結。そして外伝へ。物語は過去へ遡(さかのぼ)る…… 

新ジャンル「精神障害」ラブコメ(?)

死ぬまで治療継続(手帳2級、かなり重症)の作者が描く、精神障害者のボーイミーツガール!!

感謝!! 月間36日連続(11/3~12/8)ランク入り。


 ある日、かかりつけの精神科病院で、少年は同じ大学の先輩とばったり出会ってしまう。

 通院の事実を恥じる彼は、秘密を握った彼女の「人質」となって、行動を共にすることを強いられる。

 これは壊れている世界で心を病んでしまった、一組の男女のくだらない軌跡。

 そして「人質」はいつしか「共犯者」になり、しかしついには「恋人」にはなれなかった道のりの馴れの果て。


(以上、引用でした)

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3 尾崎が作品を読んだ日: 


 2020年 12月 9日 



4 各項目の評価・採点(各最高20ポイント、⑥のみ10ポイント(総計最大110ポイント)):


 ・評価モード……ハード

 

 ・作者さんから要望……企画要項にあるとおり、序盤から読んでOK。


 ・はじめにひとこと……うーん、興味深い作品です。冒頭から偏見で申し訳ないのですが「あなたは本当に障害があるのですか?」と問いたくなるような客観性が、充分に作中に見られます。精神障害って、何なんですかね……。


 すごく独特な文章と、テーマ性に惹かれて、久しぶりに「気になるどー」しました。つまりは指定時間外でちょっと読んだという意味で、時間内だと『邂逅2』の途中まででしたが、結果、第一章を全部読むに至りました。「もうちょっと読みたいかなあ」という気持ちと「あんまりイチャイチャした恋愛ものって好きじゃないんだよなあ」という気持ちと、あとは「別の作者さんの作品も読まねば」という思いがせめぎあった感じです。


※評価モード・採点基準について知りたい方はこちら

https://kakuyomu.jp/works/1177354054914254604/episodes/1177354055062357768

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※〇→おもに小説・物語制作における基礎力に係る項目

 ●→おもに物語を面白く・魅力的にするための創造力に係る項目

(細目のpt=5…とてもよくできている。4…できている。3…どちらとも言えない。2…あまりできていない。1…できていない) 

 


①[タイトルやあらすじ・掴み…… 16pt/20pt]


 〇興味を引くあらすじか、作品を読みたくなるか…4pt(終わりまで書きすぎ?)

 〇本文冒頭は読者の関心を掴みそうか…4pt

 ●ストーリーに対し適切で魅力あるタイトルか…5pt

 ●キャッチコピー等の内容は読者の関心に刺さりそうか…3pt


②[キャラクター…… 19pt/20pt]

 

 〇人物の感情描写が適切で、共感できるか…4pt

 ●登場人物は魅力的か…5pt

 ●台詞や行動で人物の本質が描かれているか…5pt

 ●登場人物たちの関係性が上手く描けているか…5pt

 

 

③[ストーリー…… 18pt/20pt]

 

 〇物語の方向性がはっきりしているか…4pt

 〇あらすじから想像するに適切な書き出しになってるか…4pt

 〇登場人物の設定がストーリーに生きてるか…5pt

 ●読者を楽しませようと工夫しているか…5pt


④[文章力…… 18pt/20pt]


 〇読みやすく、書きこなれた文章か…5pt

 〇用字用語に誤りがなく適切か…4pt

 〇会話や台詞に同時代性はあるか…4t

 ●内容に対し文体は魅力的か、ふさわしいか…5pt


⑤[世界観、オリジナリティ…… 19pt/20pt]


 〇世界観や設定に矛盾はないか…5pt

 〇フィクションなりのリアリティを演出できているか…5pt

 ●想定読者の興味、関心を引きつけられるテーマか…5pt

 ●アイディアが斬新か…4pt

 


+[続きが気になる度!…… 10pt/10pt]


 ●特有の魅力、売りがある…5pt

 ●続きが気になった!!…5pt

 (実際に時間外で読んだ5/気になった4/どちらとも3/あまり2/気にならない1)


[おさらい]

・タイトルやあらすじ・掴み……16pt

・キャラクター……19pt

・ストーリー……18pt

・文章力……18pt

・世界観、オリジナリティ……19pt

・続きが気になる度……10pt

(〇基礎力系……48pt/55pt、●創造力系……52pt/55pt)


5 総合得点は──


( 100 )pt!(うわ、ちょうど!) 


【コメント】


(良かったところ)


・良かった!


 面白くて、引き付けられました。企画的な感覚で先を読んだというよりは、単純に主人公と留年さんが、どういう経緯をたどって「終わり」へ向かっていくのか、気になって読みました。すごいです。


・文体が妙な匂いを放っていて、若干くどめかなとは思うのですが、「いや、ちまたの恋愛小説って、けっこうこんな感じじゃない?」という結論に至りました。そう考えると、上手いんだろうなあ、と正直に感じました。すごいです。


・今までこの企画をやってきて「でたよ尾崎の趣味……」と言われそうな気もしますが、さりげなく、専門的というか、クローズドな知識が盛り込まれていて、それがストーリーを邪魔せず適切に紹介されているのが嬉しいです。ほんと上手いなあと思います。すごいです。


・プロローグでの2人のモノローグがめちゃくちゃ上手いですね。特に『Fragment.0』での彼女のモノローグが巧妙です。あとの『1.0』も、考察が深いというか、雰囲気がとてもあります。ちょっと後で指摘はあるけど……。


 このあたりの、男女どちらの主観もしっかり読者が理解できるように書けているところが『本当に障害あるのですか?』という偏見丸出しの感想を抱かせた原因です。ごめんなさい。『上手い』の上位互換だと受け取ってください。すごいです。



(指摘・提案事項)


・では、ここから指摘です。『回想(彼女の噂話』の冒頭は、きちんと『講義室でのシーン』だと記述しておいた方が無難かと思います。病院での僕の台詞と、あと本話の冒頭で、昼休みのことや食事のことが書いてあったので、完全に『学食かどこかでの一幕』なのだと思って読んでました。「あ、あれ? 講義室なん?」と思って読み直しをしないとならないので、シーンの指定は大切です。


・邂逅1~邂逅2の始めまでの間で、留年さんがが弱いです。できれば回想の段階にて、大学内で『彼女と目が合う』程度には、認識されていることが紹介されてないと、納得感が出ないかも。

 

 あるいは、「何でこの人、僕のこと知ってるんだよ?」という疑問を、ふがふがさせる前に主人公が抱かないと不自然ですね。どちらか選択した方が良いです。


・若干、2人の『お喋り』がくどめかなあとは思いました。もう少しだけ磨いて、タイトにしてあげる方が、私は好きです。でも「いや、ちまたの恋愛小説って、けっこうこんな感じじゃない?」という感もあるので、ここではちょっとどちらとも言えないのかも。一章を全部読んだうえでは、という感想です。


・『1.0』での留年さんは、ちょっと語りすぎかなあと思いました。前半はまあ、たぶん良いと思うんですけど、主に後半かなあ。「心境の変化があったところに、初めて可愛いと思える男の子を見つけた」という主旨で、さらっと次に行ってくれた方が、より興味を持ちやすそうだし、キャラに合ってる気がするんですよねぇ……。少なくとも私は「なんか、こんな赤裸々でうぶな感じ、あんまりやだな……」と感じて、『一章』でストップさせた印象もあります。セ、セクシーのところとか、かなぁ……。主人公は『僕』なので、ヒロインの方の心の内は、謎めいている方が効果的じゃないかと。


・あらすじもちょっと最後の方を書きすぎなきらいがありますね。末尾一文を削るだけでも、一話目に進む可能性が高まりそうな気がします。「なんだ、そういう結末なのか」という「訳知り感」が出てしまうので、結局興味を持っても読まなそうな気がしてもったいないです。プロローグで描いている『結末匂わせ』とはまた別の話なので。カクヨムコンの規定とか、関係あるのかな?



※作者さんへ……指摘や提案は、あくまで読んだ範囲における尾崎の見解です。ピンとこなければ、無視していただくことを推奨します。


(終わりにまとめ)


・あとは私の完全なる個人的意見です。


 本作、本当に魅力的ではあるんですけど、どの年代の層の読者に届けたいかは絞った方が良さそうというか、ターゲットを見誤っている、あるいはアプローチ法がずれてる感じがするんですよね。『テーマが重めだけどライトに書いてますよ』という認識だと思うのですが、文体というか、特に台詞などが「少しライトすぎるかな」という印象です。


 プロローグからの印象からすると、想定読者は大学生以上の女性(必然的に恋愛小説の需要が女性に寄る傾向がある(偏見かも)ので、結局は女性)だと思ったので、その感覚で読んでいくと、いわゆる『ラブコメ調』は、やや軽すぎるかなと思ったりします。ご自身が『ラブコメ?』と称するとおり、現状はラブコメを好む層に届ける設定・世界観ではないのかも。


 『●●病でもうすぐ死ぬかもしれないけど、懸命に恋愛して、本音では生きたい……!』という感じの、ティーンの男の子が読んでもわかるような、シンプルなお話ではないですし、主人公も大学生ですから。


 さらにヒロインは、自ら死に行こうと胸中に秘めているわけで、その感覚を、例えば私が男子中高生だった時に、理解できるかな、共感できるかな、と考えたら微妙な気がするんですよね。少なくとも、友達との話題には上がりそうにない。あくまで想像で申し訳ないですが、『市場に本作を出すとしたら?』と編集者さんが考える際も、同じ状況を思い描くと思うんですよね。


 取り上げるテーマの今日性も、リアリティもあるし、そしてそれを魅力的に綴る文章力も持っていると思うので、ちょっと真剣に考えてみてほしいかもです。全体像を見ないことには何とも言えないですけど……このままプロローグのとおりに、結末までちゃんとまとまっていると想像したならば、本作はどちらかというと、カクヨムコンよりも、ライト文芸や、それよりも上の文学系ジャンルのコンテストに送ったほうが、正しく評価されるんじゃないかなと思うんですよね。作者さんが望むなら、ですけど。その場合は、上記の理由から『ライトすぎ』感を少し和らげる必要はあると感じます。


 総じて何を申し上げたいかというと、「ライトすぎる台詞とかは少し好みじゃないけれど、確実に32歳既婚の男性読者(やや草食)には刺さってますよー」というお話でした。


 すごいです。



6 読者のみなさまへ:


 → すごいです。


 以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!

 気になった方は、ぜひ↓のリンクからこの作品を読んでみてくださいね!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054921002702



 では、次の作品紹介をお楽しみに! 

 


創作コーチ

尾崎ゆうじ

(note※フル読み) https://note.com/ozaki_yuji


(youtube) https://www.youtube.com/channel/UCu54sC6pviWQUC1eA6dqDKg/featured?view_as=subscriber 

 ※初級者向けの『ゼロから講座』は、主にyoutubeとカクヨムにて実施しています!


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