『彷徨い流星姫譚』九重 ゆめさん

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(尾崎ゆうじの)

『第6回小説の「続きが気になる度」を評価してみた!』


 評価シート


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作者さんへ……このたびは企画にご参加いただきありがとうございます。

読者さんへ……本ページにお越しいただきありがとうございます。「この作品良さそう」と思ったら作者さん並びに尾崎のフォローをお願い致します。



1 作品タイトル『彷徨い流星姫譚』

  作者名: 九重 ゆめさん

  作品リンクhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054934660065

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2 本作のキャッチコピーとあらすじ引用(抜粋)

 

(キャッチコピー引用)

妖蛇舞う霧深き怪しい都を、ワケありの旅の少女が駆け回り謎を解く!


(あらすじ引用)

――西暦1915年、大正時代。巨大隕石が飛来した事を機に、世界は蒸気機関を主な動力源として用い歴史は改変される。


それから約200年後。


極東の島国にある、無限の呪いがかけられたと云われる山間の城壁都市「蛇籠」。


訳ありの旅の少女ウルカは、旅の途中、霧のあやかし「妖霧」に襲われ、大切な母の形見を奪われ、この都に落ちてしまう。


形見を取り戻すため、美青年二人が営む便利屋に成行きで入所するも、要人の殺人事件を始めとし、持ち込まれる怪事件の数々。それらは過去の因果と、都の存亡を左右する大きな陰謀に繋がっていた。


次第に、青年の一人と心通わせながらも、彼は何か隠しているようで……。


果たして彼女は謎を解き、失くし物を見つけ、この謎深き怪しげな都を脱出することができるのか。和風スチームパンク風味のサスペンス・ミステリー。


(以上、引用でした)

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3 尾崎が作品を読んだ日: 


 2020年 12月 9日 



4 各項目の評価・採点(各最高20ポイント、⑥のみ10ポイント(総計最大110ポイント)):


 ・評価モード……ハード

 

 ・作者さんから要望……20~30代向けの読者をターゲットにしている。応募した新人賞で『キャラクターに興味が引かれない』と指摘があった。リライトしたけど、判断できず。キャラクターについて感じた素直な感想を聞かせてほしい。とのことでした!


 ・はじめにひとこと……なんか舞台設定がすごいというか、コンセプトが良さそうと思って読み始めたのですが、けっこう読むのに時間がかかってしまい、2話目の途中まで読んで終わってしまいました。残念……。


※評価モード・採点基準について知りたい方はこちら

https://kakuyomu.jp/works/1177354054914254604/episodes/1177354055062357768

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※〇→おもに小説・物語制作における基礎力に係る項目

 ●→おもに物語を面白く・魅力的にするための創造力に係る項目

(細目のpt=5…とてもよくできている。4…できている。3…どちらとも言えない。2…あまりできていない。1…できていない) 

 


①[タイトルやあらすじ・掴み…… 14pt/20pt]


 〇興味を引くあらすじか、作品を読みたくなるか…4pt

 〇本文冒頭は読者の関心を掴みそうか…4pt

 ●ストーリーに対し適切で魅力あるタイトルか…3pt

 ●キャッチコピー等の内容は読者の関心に刺さりそうか…3pt


②[キャラクター…… 13pt/20pt]

 

 〇人物の感情描写が適切で、共感できるか…4pt

 ●登場人物は魅力的か…3pt

 ●台詞や行動で人物の本質が描かれているか…3pt

 ●登場人物たちの関係性が上手く描けているか…3pt

 

 

③[ストーリー…… 12pt/20pt]

 

 〇物語の方向性がはっきりしているか…3pt

 〇あらすじから想像するに適切な書き出しになってるか…2pt

 〇登場人物の設定がストーリーに生きてるか…4pt

 ●読者を楽しませようと工夫しているか…3pt


④[文章力…… 13pt/20pt]


 〇読みやすく、書きこなれた文章か…3pt

 〇用字用語に誤りがなく適切か…3pt

 〇会話や台詞に同時代性はあるか…4pt

 ●内容に対し文体は魅力的か、ふさわしいか…3pt


⑤[世界観、オリジナリティ…… 14pt/20pt]


 〇世界観や設定に矛盾はないか…4pt

 〇フィクションなりのリアリティを演出できているか…4pt

 ●想定読者の興味、関心を引きつけられるテーマか…3pt

 ●アイディアが斬新か…3pt

 


+[続きが気になる度!…… 6pt/10pt]


 ●特有の魅力、売りがある…4pt

 ●続きが気になった!!…2pt

 (実際に時間外で読んだ5/気になった4/どちらとも3/あまり2/気にならない1)


[おさらい]

・タイトルやあらすじ・掴み……14pt

・キャラクター……13pt

・ストーリー……12pt

・文章力……13pt

・世界観、オリジナリティ……14pt

・続きが気になる度……6pt

(〇基礎力系……39pt/55pt、●創造力系……33pt/55pt)


5 総合得点は──


( 72 )pt! 


【コメント】


(良かったところ)


・アイディアが独特ですね。といっても、あらすじの段階での想像と、主人公が用いる小道具などでそう判断したのですが……。大正ロマン的な感じかな。あの時代って本当に雰囲気ありますよね。


・和服のイメージや、カンラン石(漢字出すのが大変なので、カタカナですみません)だとかの設定が、ディティールなどの隅々まで作られている感じで、よく頑張ったなと思います。


・キャラに共感できるかどうか、という点ですが、リライトの前がどうだったか不明ではあるものの、方向性としては間違っていないと思います。要するに妖霧を処分する=人間を助けることになるのだけど、ろくに感謝されることなく、むしろ人外(?)である自分は忌避され続けている。嫌いだ、でも母の遺言があり、それに従っている(これにプラスして、その選択に迷っている→本当は人間って助けるべきなのか、だとしたらどうして助けなきゃいけないのか……? といった葛藤が後々入ってくると、より共感できるかも)という構図は、共感を誘えていると思いますよ。


 ちなみに身銭を稼げるから、という動機も良いですが、本作の主人公の場合は、あんまり似つかわしくない気がします。そもそも「結局は金のためかい」というのを日本人は嫌う傾向にあると思うので……。そういう露骨な銭ゲバ系でも共感できる主人公はいますが、本作はそっちの路線ではないでしょう。

 たしかにお金にもなるだろうけど、そこは前面に出さず、のちのち紹介する程度で良いのかなと感じます。


 母のぬくもりを感じるところとかは、いいですね。味方が今まで母しかおらず、その母が亡くなったことがきっかけだとは思いますが、巣立たねばならなくなったとか、そういうことで今に至るというのは、わかりやすいです。



(指摘・提案事項)


・先に指摘してしまいましたが、今回は全然読み進められた感覚がなくて、全体的なストーリーや構成などについて、いろいろ把握しきれていないところがあります。でも、指摘事項は充分に並べることができてしまうという、あんまり良い結果ではないです……。


 ちなみに採点に関しては、きちんとした点数とは呼べないので、あまり気にしないでください。いちおう4000字~5000字くらいは読めたことになるんですけど……。ストーリーやキャラの関係性など、判断できる範囲まで到達できなかったので……。


・決して間違った文章を書いているわけではなく、内容が伝わるのは伝わっているのですが、そもそもの世界設定がファンタジックで、さらに漢字が多用され複雑な情景の描写も散見されるので、時間的制約のある企画との相性はとても悪かったような。ぱっと読んでイメージがしづらく、「これはどんな情景を表現しているのか?」といった、余計なことがちょこちょこ気になったりしました。


 それに加えて、どうも想像する感じにモノローグが進んでいかないことも原因かと。主人公の思考があちこちに飛んでいる感じがして、でもぎりぎりなんとか繋いでいるような。読んでいてすごく負荷が高い状態です。あらすじとの繋がりもあまり無くて、この乗合バスのシーンからスタートして良いのだろうか……と疑問に思いました。


 仮に、うわーっと読めてしまう冒頭をバスの運行に喩えるのなら、するーっと進行して高速道路に乗って加速し、良い景色がすぐにパッと見えたり、乗客が面白かったり、興味深いうわさ話を始めたりする感じでしょうか。


 本作の冒頭の現状は、するっと加速するものの、高速に乗るまえのインターチェンジで給油したり、ちょっと進んだと思ったら、「コースを間違えたかもしれないけど大丈夫でした!」と言ったアクシデントもどきがあったりするような、そういうイメージです。結局高速じゃなくて下道を通っている可能性すらある。


 率直に言うと、もっとストーリーの本筋に足を踏み入れるところから始めた方が良いと思いますが、今後のため、現時点でのちょっと違和感があったところを挙げていきます。


・『ぐらり、とバスが再び大きく揺れ、鋭角に向きを換える。途端、大量の水が流れ落ちる瀑布の轟音が、動力エンジン音を蹂躙し車内に満ちた。』という部分ですが、このまま読むと、何か落下的なアクシデントが起きたのではないかと読めます。でも結局はただ山道を進んでいて、何だったのかな、という印象です。


・カンラン石というのを口に放り込む描写は、その狙いがこの部分における『食えるんだ!?』という『驚き』を生むことにあるのだとすると、それが『通常は食べられる物でない』旨を表記する必要はありそうです。逆に普通に食べられるものだとしたら、今その小ネタを披露しなくてもいいような……。


・『金を稼ぐつての『妖霧』』というのは、ここで説明しなくてもよいかな。『現れたな、妖霧!』みたいな感じでもいいと思います。このままこの台詞を使っても、説明口調っぽいですけどね。わかりやすく書くとそういうことです、という意味です。


・バスが停車したかどうかは、描写しておいた方がよいかもです。運転手が運転中に立ち上がったのかと思いました。あるいは未来設定ということで、自動運転なのかな……それはそれで紹介しておかないと、イメージに齟齬が生じますよー。


 こんな感じで、けっこういろいろと設定の紹介などもしてくれているのですが、そこかしこで誤読するポイントが出てきますので、ご注意を。おそらく、『キャラの共感』にフォーカスしたことで、他の部分はとりあえず置いておくことにしたのだと思います。冒頭のシーンを乗合バスから始めるかどうか、という選択から、また改めていろいろ考えていくとよいと思います。


・あらすじに書いてある世界の設定ですが、読んだ範囲だけだと、『200年後』というのは必要ないような……。妖霧が出る時点で、というか言っちゃえば、主人公が人間じゃないという時点で、普通の日本とは異なるわけですから、純粋に『そういう世界』としてファンタジックに見せてくれたらよいんじゃないかと思います。具体的に200年後と書かれて、逆に全然想像できないなと感じてしまいました。


 特殊な蒸気機関が発見されたことで、異なった技術発展を遂げた世界……みたいな感じでもよいような。


・読者を共感させようとか、はらはらさせて繋げようという気持ちはわかりますが、あまりストーリー進行と関係のないところで尺を取っても、いまいち効果が薄いと考えられます。書き出しの部分では、いかに読者を掴んでストーリーラインにのせるかに注力しないと、すぐに離れちゃうと思いますよ。


※作者さんへ……指摘や提案は、あくまで読んだ範囲における尾崎の見解です。ピンとこなければ、無視していただくことを推奨します。


(終わりにまとめ)


・この世界観を、もっと良い感じに味わってみたかったなあという気持ちになりました。率直に言ってしまうと、本当に申し訳ないですが、現状では私が想像したような世界がまだ始まる前の段階にて、あれこれやっている印象です。(私自身もよくやります)


 軸となるテーマはきっと、『人間って、母が言うように守らなきゃいけない存在なの?』みたいな葛藤にあると思うんですよね(違うかな)。その火種が顕現するのは、もうすこし後でも良いというか、とりあえず前半は、さっさと都市に入り、そのどこかで人間を事務的に助けて、嫌な目に遭って「こんなことは慣れてる」と言いつつ、心の奥ではふつふつと迷ってる──みたいに、ストーリーに足を突っ込みながら、大事なことを優先的に説明していってほしいなと思いました。


 ちょっと趣は違いますが、大正ロマンとフィクションを組み合わせつつ共感を呼ぶ世界観の紹介法として参考になるとしたら、『私の幸せな結婚』などおすすめかもです。何かヒントになれば幸いです。


 どかすかといろいろと指摘しましたが、とにかく共感についての方向性は間違ってないので、今度は次の課題をクリアしていくと良いでしょう! メインのストーリーを早く読みたかったな、という残念さも、今回の評価には多分にございます。ぜひまた磨き上げて読ませてほしいです。


6 読者のみなさまへ:


 → たぶん、ひとつひとつ課題を乗り越えていくタイプの作者さんだと思います。もし読んでみてメインのストーリーは面白いと感じた方がおりましたら、その旨はぜひお伝えください!


 以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!

 気になった方は、ぜひ↓のリンクからこの作品を読んでみてくださいね!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054934660065



 では、次の作品紹介をお楽しみに! 

 


創作コーチ

尾崎ゆうじ

(note※フル読み) https://note.com/ozaki_yuji


(youtube) https://www.youtube.com/channel/UCu54sC6pviWQUC1eA6dqDKg/featured?view_as=subscriber 

 ※初級者向けの『ゼロから講座』は、主にyoutubeとカクヨムにて実施しています!


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