talk8 弟子の事
「取り合えずは、創君と結杜君のお手伝いかな」
「まともにお手伝い出来てないからね」と付け足しながら、コーヒーを啜る店長。
「まぁ、そうなるでしょうねぇー、ねぇ結杜」
榛也が同意しながら、こっちを向く。
何かは分からないが、確実に何かの想いが込められていると思える程に目力が強かった。
残念ながら俺はそれ位しか分からなかった。
「何?どした?」
こう言う時の榛也は、聞いても何も言わないか、誤魔化すってって分かってる。
けど、これが俺らのいつものやり取りだ。
「ん-、何も無いけど」
「はーい店長」
雪街が手を挙げて、店長を呼ぶ。
「コーヒーのおかわりかい創君?」
「コーヒーおかわりはそうだけど……結杜は特に何もしなくても良いと思いまーす」
その意見に、菊乃さんも同意する。
「私もその方がいいと思いまーす」
「それは………結杜君は
店長は雪街のおかわりを淹れながら、その真偽を聞く。
「そう言う事です!やるとしたら後でも良いかと……最高の状態で戦いたいし…」
「成る程……それもそうだねー」
「ひょぇ!?」
てっきり絶対に俺と雪街が一緒じゃないといけない理由があって言ってるもんだと思ってたから、ビックリし過ぎて素っ頓狂な声が出た。
榛也も同じことを思っていたらしく、
「……えぇー、納得しちゃったよ」
と、こぼしていた。
「まぁ、結杜君もストーリー進めなきゃいけないし、二度手間になるし、一緒にした方が良いんじゃない?」
「むぅー、確かに……それもそうですね」
この案が一番いいと思ったのだろう。
雪街は、ムムム…と唸って他の案を考え込んでいる。
それを見た店長はコーヒーのおかわりを渡すと同時に、口を開く。
「…それに
「えぇーー!?初耳ですよぉ?!それぇ!!」
あぁ、知らなかったのか、その事。
榛也の方を見ると、肩をすくめている。
どうやら、雪街がどこまでHEBMDSUの事を知っているのか、榛也も把握していないらしい。
まぁ、こんな事は
多分、そもそも知ろうとしない事だろうけど、HEBMDSUで店長に会いに来ているのならば、知っている事だと思ったのだが。
そう言えば、雪街自体もそこまでやってないって言ってたっけ?
俺と一緒に、強くしてもらおうとしてる位だし。
「その事は長くなるから、気になるんだったらまた今度話すね」
「え?長くなるんだったらいいっス」
「あぁ、そう?分かったよ……」
明らかに断られてがっかりしていた店長に対して、榛也は何事もなかったように、コーヒーを求める。
「店長、コーヒー淹れてほしいでーす」
「あー!私もー!」
ん?さっき菊乃さんも雪街に同意してなかったけ?何でだ?
本人に聞こうと口を開いた瞬間、榛也が代わりに聞いてくれた。
「菊乃さんが同意したのはどうしてですか?未知族の事は知ってるでしょ?」
菊乃さんは目を逸らしながら、照れくさそうに答える。
「えぇーっと…、……が欲し…て…」
声が小さくて、聞き取れなかった。
俺と榛也は同時に聞き返すと、逆にちょっとこわばってしまうが、声を振り絞ってもう一回答える。
何だか最近、この人本当にうさぎじゃないのかと思ってしまう。
「で…」
まだ声が出し切れてないのか、一言だけ声に出す。
しかしまぁ、一語だけだと分からないから、突っ込まれるわけで。
「で?」
突っ込まれてびっくりしたのか、声を詰まれせて言う。
「弟子が…欲しくて…」
「弟子?それまた何で?」
「それは、まぁ、何と言いますか…、店長と榛也君、結杜君を見てたらいいなぁと思いまして……」
榛也のコーヒーを淹れ終えた店長も加わる。
加わったのは良いが、
「弟子は良いが、結杜君は僕の弟子だから手は出さないでね」
と、店長が言い出す。
「え?」
ビックリし過ぎて思わず、声が出た。
何言ってんの?この人?
そして断るならなぜ聞いた、この人。
さらに、いつ俺はあの人の弟子になった。
今日は俺がツッコミ担当の日かもしれない。
「い、良いじゃないですか!結杜君貰っても!!店長には榛也君がいるでしょ?!」
「残念だけど、榛也君は友人であって、弟子じゃないんだ」
思っても無い方向に行ってしまった。
これどうしよ。どう止めたらいいんだ?そもそも止めていいのか?
助けてくれ!榛也!俺はどうしたらいい?!
榛也の方を向くと、コーヒーを飲みながら雪街と一緒にけたけたと笑っていた。
いや、笑ってないで止めてくれよ。俺どうしたら良いか分かんないじゃん。
「何ですかそれ!意味わかんないですが?!結杜君が駄目なら創君でもいいです!下さい!いや、貰います!!」
「創君も僕の弟子なんだ」
「何なんですか?!創君も駄目なんですか?!我儘じゃないですか?!片方ぐらいくれても良いじゃないですか!!」
店長と菊乃さんはまだ言い合いしている。
とばっちりを受けた雪街が、
「え?!ちょっと待って!"でも良い"ってどういうこと?!"でも良い"って!!」
と、ショックと怒りを同時に訴える。
終わんないどころか広がっちゃったよ、これ。
「それにしても、この二人が喧嘩するの珍しい気がする」
ついさっきまでの怒りとショックはどこ行ったのかって位、雪街が平然と言う。
何、コイツ?コロッと変わり過ぎじゃない?
「そうか?あぁ、仕事の時はたまに言い合いしてる」
榛也もコーヒーを飲みながら、平然と言う。
「へぇー、そうなんだ、全然想像できない」
「まぁ、そうかもねぇ~」
何でこんな平然なの、こいつら?
それどころか、何か和んでないか?
大の大人の喧嘩に和む要素があるか?
止めなくてもいいのかこれ?
色んな意味で、凄く不安なんだが?
「あぁ、別にほっといても問題ないよ」
久々に榛也に心を読まれた気がする。
本当にほっといても、大丈夫なのか?
雪街も続けざまに言う。
「榛也が大丈夫って言ってるんだし良いんじゃない?喧嘩する程、仲が良いって事でしょ、知らんけど」
「いや、知らんのかい!」
余りにも無責任な発言に、思わず突っ込んでしまった。
突っ込まれた当人は、キャッキャ、キャッキャ言ってる。
お前は女子か、こら。
「今の綺麗に行ったねぇ~」
「ねぇ~、良いツッコミだった」
「ふざけんな、何が"良いツッコミだった"だ」
とか言いながらも、諦めて一緒にコーヒーを飲む事にする。
「ぶふっ、結局一緒にコーヒー飲んでんじゃん」
雪街が笑いを堪えながら言う。
言い返したいが、その通りだから何も言えない。
「分かりました、それで納得はできませんが、割り切ります」
菊乃さんがふてくされながら、そんな事を言っている。
どうやら終わったらしい。
「店長ー!」
雪街が店長の方に走っていく。
俺も聞きたい事があるから、雪街に付いていく。
「いつの間にか店長の弟子になってたのですが何故?」
雪街が迫る。顔が笑っていないだけで圧がすごい。
気にせず店長は答えた。
「創君も結杜君もだけど、
店長の良く分からない発言に、後ろでコーヒーを飲んでいた榛也が吹き出した。
そのまま気管に入ったのか、ケホケホとせき込みながら笑っている。
雪街はさっきとは180度回って呆れかえっている。
「それは極論過ぎと言うか、もう意味わかんないよ……」
ついさっき迄言い合っていた菊乃さんも呆れきっている。
「私も分かんない」
「そっか、誰も聞いてない」
呆れながらも、菊乃さんに対して辛辣な返しをする雪街。
「さて、そんな冗談は置いておいて、ストーリーを終わらせに行くかい?我が弟子よ」
「店長、冗談置け切れてないですよ、代わりにカップ置いときますね」
そんな事を言いながら、コーヒーを飲み切った榛也は、優しくカップを置いて席を立つ。
何だよ。冗談の代わりにカップ置くって。意味わからん。
同じ事を思ってたのか、雪街が突っ込む。
「いや…全く置ききれてないよ……行くんだったら早く行こうよ」
雪街のその言葉でスイッチが入ったのか、店長と榛也は重たく腰を上げ、奥に行って準備を始める。
「菊乃さんは準備しなくて良いんですか?」
あの二人は準備しているのに対し、菊乃さんは全く動こうとしないから、気になってしまった。
「大丈夫!私、
自信満々のドヤ顔で答える菊乃さん。
何でまだ何もして無いのにドヤ顔なのか、何処にその自信があるのか、そして
何か便利な物でもあるのか?
「あぁー、
←REAL←
「………」
どうしても、結杜の事が気になってしまう。
……
懐かしく、同時に思い出したく無い程に憎ましくもある、その名前。
もういやになってでてき「取り合えずは、創君と結杜君のお手伝いかな」
「まともにお手伝い出来てないからね」と付け足しながら、コーヒーを啜る店長。
「まぁ、そうなるでしょうねぇー、ねぇ結杜」
榛也が同意しながら、こっちを向く。
何かは分からないが、確実に何かの想いが込められていると思える程に目力が強かった。
残念ながら俺はそれ位しか分からなかった。
「何?どした?」
こう言う時の榛也は、聞いても何も言わないか、誤魔化すってって分かってる。
けど、これが俺らのいつものやり取りだ。
「ん-、何も無いけど」
「はーい店長」
雪街が手を挙げて、店長を呼ぶ。
「コーヒーのおかわりかい創君?」
「コーヒーおかわりはそうだけど……結杜は特に何もしなくても良いと思いまーす」
その意見に、菊乃さんも同意する。
「私もその方がいいと思いまーす」
「それは………結杜君は
店長は雪街のおかわりを淹れながら、その真偽を聞く。
「そう言う事です!やるとしたら後でも良いかと……最高の状態で戦いたいし…」
「成る程……それもそうだねー」
「ひょぇ!?」
てっきり絶対に俺と雪街が一緒じゃないといけない理由があって言ってるもんだと思ってたから、ビックリし過ぎて素っ頓狂な声が出た。
榛也も同じことを思っていたらしく、
「……えぇー、納得しちゃったよ」
と、こぼしていた。
「まぁ、結杜君もストーリー進めなきゃいけないし、二度手間になるし、一緒にした方が良いんじゃない?」
「むぅー、確かに……それもそうですね」
この案が一番いいと思ったのだろう。
雪街は、ムムム…と唸って他の案を考え込んでいる。
それを見た店長はコーヒーのおかわりを渡すと同時に、口を開く。
「…それに
「えぇーー!?初耳ですよぉ?!それぇ!!」
あぁ、知らなかったのか、その事。
榛也の方を見ると、肩をすくめている。
どうやら、雪街がどこまでHEBMDSUの事を知っているのか、榛也も把握していないらしい。
まぁ、こんな事は
多分、そもそも知ろうとしない事だろうけど、HEBMDSUで店長に会いに来ているのならば、知っている事だと思ったのだが。
そう言えば、雪街自体もそこまでやってないって言ってたっけ?
俺と一緒に、強くしてもらおうとしてる位だし。
「その事は長くなるから、気になるんだったらまた今度話すね」
「え?長くなるんだったらいいっス」
「あぁ、そう?分かったよ……」
明らかに断られてがっかりしていた店長に対して、榛也は何事もなかったように、コーヒーを求める。
「店長、コーヒー淹れてほしいでーす」
「あー!私もー!」
ん?さっき菊乃さんも雪街に同意してなかったけ?何でだ?
本人に聞こうと口を開いた瞬間、榛也が代わりに聞いてくれた。
「菊乃さんが同意したのはどうしてですか?未知族の事は知ってるでしょ?」
菊乃さんは目を逸らしながら、照れくさそうに答える。
「えぇーっと…、……が欲し…て…」
声が小さくて、聞き取れなかった。
俺と榛也は同時に聞き返すと、逆にちょっとこわばってしまうが、声を振り絞ってもう一回答える。
何だか最近、この人本当にうさぎじゃないのかと思ってしまう。
「で…」
まだ声が出し切れてないのか、一言だけ声に出す。
しかしまぁ、一語だけだと分からないから、突っ込まれるわけで。
「で?」
突っ込まれてびっくりしたのか、声を詰まれせて言う。
「弟子が…欲しくて…」
「弟子?それまた何で?」
「それは、まぁ、何と言いますか…、店長と榛也君、結杜君を見てたらいいなぁと思いまして……」
榛也のコーヒーを淹れ終えた店長も加わる。
加わったのは良いが、
「弟子は良いが、結杜君は僕の弟子だから手は出さないでね」
と、店長が言い出す。
「え?」
ビックリし過ぎて思わず、声が出た。
何言ってんの?この人?
そして断るならなぜ聞いた、この人。
さらに、いつ俺はあの人の弟子になった。
今日は俺がツッコミ担当の日かもしれない。
「い、良いじゃないですか!結杜君貰っても!!店長には榛也君がいるでしょ?!」
「残念だけど、榛也君は友人であって、弟子じゃないんだ」
思っても無い方向に行ってしまった。
これどうしよ。どう止めたらいいんだ?そもそも止めていいのか?
助けてくれ!榛也!俺はどうしたらいい?!
榛也の方を向くと、コーヒーを飲みながら雪街と一緒にけたけたと笑っていた。
いや、笑ってないで止めてくれよ。俺どうしたら良いか分かんないじゃん。
「何ですかそれ!意味わかんないですが?!結杜君が駄目なら創君でもいいです!下さい!いや、貰います!!」
「創君も僕の弟子なんだ」
「何なんですか?!創君も駄目なんですか?!我儘じゃないですか?!片方ぐらいくれても良いじゃないですか!!」
店長と菊乃さんはまだ言い合いしている。
とばっちりを受けた雪街が、
「え?!ちょっと待って!"でも良い"ってどういうこと?!"でも良い"って!!」
と、ショックと怒りを同時に訴える。
終わんないどころか広がっちゃったよ、これ。
「それにしても、この二人が喧嘩するの珍しい気がする」
ついさっきまでの怒りとショックはどこ行ったのかって位、雪街が平然と言う。
何、コイツ?コロッと変わり過ぎじゃない?
「そうか?あぁ、仕事の時はたまに言い合いしてる」
榛也もコーヒーを飲みながら、平然と言う。
「へぇー、そうなんだ、全然想像できない」
「まぁ、そうかもねぇ~」
何でこんな平然なの、こいつら?
それどころか、何か和んでないか?
大の大人の喧嘩に和む要素があるか?
止めなくてもいいのかこれ?
色んな意味で、凄く不安なんだが?
「あぁ、別にほっといても問題ないよ」
久々に榛也に心を読まれた気がする。
本当にほっといても、大丈夫なのか?
雪街も続けざまに言う。
「榛也が大丈夫って言ってるんだし良いんじゃない?喧嘩する程、仲が良いって事でしょ、知らんけど」
「いや、知らんのかい!」
余りにも無責任な発言に、思わず突っ込んでしまった。
突っ込まれた当人は、キャッキャ、キャッキャ言ってる。
お前は女子か、こら。
「今の綺麗に行ったねぇ~」
「ねぇ~、良いツッコミだった」
「ふざけんな、何が"良いツッコミだった"だ」
とか言いながらも、諦めて一緒にコーヒーを飲む事にする。
「ぶふっ、結局一緒にコーヒー飲んでんじゃん」
雪街が笑いを堪えながら言う。
言い返したいが、その通りだから何も言えない。
「分かりました、それで納得はできませんが、割り切ります」
菊乃さんがふてくされながら、そんな事を言っている。
どうやら終わったらしい。
こんな人達が強いとは、
案外世の中そう言う物なのかもしれない。
HEBMDSU @Kyurus_131
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。HEBMDSUの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます