三鴨

部族

 きみは別れのあいさつにぼくの尻をもんできた。

抱き合ったとききみの手のところにちょうどぼくの尻がとどくのだ。ぼくがきみの尻をひかえめにたたくと、きみも僕の尻をたたいた。きみの尻よりずっと大きな音がした。どこの部族のあいさつかと思ったけれど、なんだか表現が差別的だと思ったので、「ど」だけ言ったあと、首をひねった。


 ぼくが言いたかったのは尻のあいさつが原始的で野蛮だということではなくて、とてもそのまんまなもので、そのそのまんまなことに、とてもびっくりしたのだ。そのそのまんまが、ほんとうにびっくりで、そのびっくりを、びっくりにびっくりするのを、ぼくはなんとかきみに伝えたかった。

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三鴨 @kousetu

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