16部隊と「魔獣」戦


「あはは……あれこそ魔獣って奴か」


第二形態と化した「魔獣」を前にして俺は呟いた。

第一形態は猪と熊の間の子みたいなまだ何かの突然変異であり得そうだったのだが。


第二形態はもう、地球上の生物とは言えない、名状しがたい『何か』であった。


……これこそ「魔獣」って感じだな。


全く、初めてのボスが第二形態持ちなんておかしいと思わないか?


初めのボスなんだし……ほら……HP500くらいのドラ●エで言うとレベル3くらいで頑張ったら簡単に倒せるボス想像しちゃうでしょ普通。


恵まれてない異世界主人公だねぇ、俺は。



「初任務なのに……運が悪いですね……。こんなまで凶悪な任務になってしまうとは」


アカリさんはますます自分を責める。


何故か反射的にそれを否定してしまう。


「お気になさらず! こんなこと慣れたら楽しそうだからね」


こうゆうの、俺のキャラじゃないんだが。


「まだ終わって無いですよ? 敵さんもなんか察して全く攻撃してこないし……」


流石、物語のお約束。お話中は攻撃禁止ってことだな。

the・ご都合主義って感じ。


なんか「魔獣」が可哀想になってきた。

ごめんな、置き去りにしてて。


もうすぐ楽にしてやるからな。

「い…行きましょう……『シレットソード』」


アカリの左に魔法陣が描かれる。


そこから剣が飛び出る。


よし…….俺は……


「魔獣」からの攻撃を両腕でいなし続ける。


防具の耐久が尽きるまで何回でも使える為、ここで皆を庇うことにした。

「これで空きをかなり稼げる筈……ってあいつらどこ行った?」


「クリアランス」で回復しておいた隊員がいない。


まさか全員やられたとか無いよな。


俺はいつもの癖で最悪の状態を想像してしまう。


「どこ行った……あいつら……」


「あ……さっきから姿が見えませんね。逃げてしまったのでしょうか……」


生首とかは転がってないし逃げたと考えるか。え?ちょっと待て。


敵前逃亡? 普通処刑か獄門か極刑だぞ……


まぁ下手に相手に突っ込んでダメージ受ける(もしくは死ぬ)より遥かにマシなんだが。


しかし、今ここにはアカリさんと俺しかいない。


俺が想像していた展開では無いが、いかんせん不利には変わらない。

俺は今の「魔獣」相手にまともな攻撃があんまり無い。


新しいスキルを習得しない限りは完全にアカリさん頼りになってしまう。


そしてアカリさんのSPはいつ底をつくか分からない。


いい火力を期待してた隊員達もいない。


作戦を遵守とかもうしそうに無い。


どうしよう。やばい。

「畜生。 作戦が根本から潰れた。どうしよう」


こんな世界では無かったら今頃「魔獣」圧倒してるだろうな……。


ならば、俺にできそうなことは……


アカリさんをひたすら守って新技に賭けるか、アカリさんの攻撃を待つか。


本来ならとっとと首をはねて終わらせたいところだが、仮に攻撃をしたところであの硬い装甲があるからなぁ……


そう考えていた矢先、「魔獣」の攻撃がくる。


しかし、技はもう見切れた。


「今だ!『霧隠れ』!『跳躍』!」


俺は「魔獣」の不意をつき、首元に迫る。


ーー貰った!


剣を縦持ちに切り替えて「魔獣」の首を落と…………せなかった。


「こいつ、装甲硬すぎだろ……。」


ダメージは入っただろうが、切り落とすには至らなかった。


「オリジナルスキル習得『暗殺』」


物騒だな。だが俺にはもってこいのスキルだ!


「下がって!」


アカリさんがスキルを使うようだ。


俺は『高速転移』で木陰に隠れる。


「行きます!『覇炎斬』っ! いっけぇぇ!」


彼女はそう叫ぶと、脇目も振らず「魔獣」に切りかかる。


そして。


切っ尖から魔炎が飛び出して、「魔獣」を襲う。


そしてその炎は周りの木々も焼き尽くし天へと消える。


それを影から見ていた俺は

「やっぱりあの人に逆らったら命はないな」

と苦笑いしながら言った。


「そして。 気になる「魔獣」の方はと言うと……」



グァァァァアッ。


まだ生きてたか。

いや……よく見ると……


「アカギさん…… 今がチャンスです!」

アカリさんは動いてない。

多分さっきの反動だろう。


「魔獣」の硬かった装甲が剥がれ落ちた。

これはチャンス。


「よーし。これなら……『加速』!」


こーやって左に注意を引き付けて……


「今だ!『高速転移』!『霧隠れ』!」


フェイントの効果は絶大で、「魔獣」はまだ俺が左側にいると錯覚している。


「オリジナルスキル習得『悪夢襲来』」

あ……スキルの確認は後でで。


「隙だらけだぜ……坊や……なんちゃって〜 そんじゃ『暗殺』ウゥゥ!!」


この技、気に入った。


俺の刃は「魔獣」の首を……確かに切り取った!


「手応え……アリ!」


俺はやっと「魔獣」の首をはねた。


「魔獣」の鮮血を避けながら「魔獣」の首を手に掲げた。


「やった!」

アカリさんの顔が明るくなる。


俺たちは勝利を確信した。


しかし、戦いはまだ終わっていなかった。


頭とさよならした胴体が俺に向かって攻撃を再開し始めたのだ。


空中に投げ出された俺の体はろくに防御姿勢をとれず、攻撃をモロに食らってしまった。


「がっ……」


生憎、俺はVITが壊滅的。


一撃でHPの3分の4は持ってかれた。


「ク……『クリアランス』!……」


何が起こっているか分からずも、アカリは俺の回復をした。


「あいつ……なんで首ないのに動いてんだよ!」



「してやられたね〜。 まさか首チョンパされても生きてるなんて」


アカリさんの『クリアランス』の魔方陣の中で情け無いように呟いた。


「えーと……「魔獣」の類のモンスターは身体の何処かにある『核』を壊さないと永久に動き続けるです……すみません……教えてなくて……」


力のない声で答える。


「う〜ん、こういうのは出来るだけ早く教えてくれませんですか? そうしてたら首斬りつけなかったのに……」


かなり痛かった。


「分かりました……気をつけます……」


アカリさんも相当こたえているだろう。


俺の初任務で瀕死の重傷(しかしすぐ回復)を負わせたのだから。


「よし! 全回復できました!」


アカリさんはこくりとうなづき、魔方陣を解いた。


因みに、『クリアランス』で回復中は魔方陣の中の人間は外からの干渉を受け付けない。(ただし、空気、地面を除く)


現に「魔獣」の攻撃を何度か塞いでいる。


だからかなりのSPを必要とする筈。


それを二回も使えるなんで……何者だよ……。


そんな事を考えながら、俺はさっきの陣形に戻す。


不意を取られなければダメージを受ける心配は無い。


一方、魔獣の方はと、俺は「魔獣」の動く胴体を観察してみる。


「ふむふむ……目はなさそうだが俺の居場所は分かっているのか……。嗅覚か聴覚か……はたまた温度器官か……。 調べ甲斐がありそうだ!」


そうだ、この状態で雷打つとどうなるのだろう。


俺はふと気になった。


気になったからには早速やってみよう。


「『落雷』」


雷が「魔獣」に直撃。


これで普通の生物なら心不全で死ぬ筈だ。


しかしながら、麻痺はしたものの、即死には至らなかった。

首があるときとそんなに変わっていない。


「首の切り口から心臓狙ったんだが……失敗か……? なら!アカリさん!良いですか?」


今「魔獣」は麻痺で動けない。


「分かりました!「コスモバスター」!」


「また新しいスキルかよ。本当にどうなってんだ。」


彼女の手に魔力の剣が現れる。


無論、「魔獣」にはなす術はない。


ドゴォォォーン!


その剣は「魔獣」を突き刺し、内部で爆破した。


その爆煙はさながら宇宙の様であった。


「さーて? これでどうなる?」


この展開に既視感を思い出した読者の皆様へ。


大正解!!


まだ終わりませんでした!!


まだまだ続きますよ〜



どうやら「魔獣」の装甲が復活して猛威を防いだ様だ。


まるで人間の如き戦略。


脳が無いはずなのにどうやって。


『ふぅ。 障壁が無かったら危なかったな。』


そんな感じの会話が脳裏をよぎる。


「まだ続くのか……いい加減諦めたらどうだ?」


まぁ、話が通じる相手とは思ってないけど。



「奥の手……の様ですね……。きっと何回もは出来ないかな……」


アカリさんはこの旨を知っていた様だ。


「じゃあ、またさっきのスキルまた使って装甲を剥がしましょう!」


俺はアカリさんに提案した。


「む……無理です無理です! あんな強いスキルぽんぽんとなんて出せません!」


割と強めに却下された。


「はぁ……仕方ない……。 俺がいい作戦考えるまでそこでSPでも貯めてて下さい……」


SPは時間経過で回復する。


俺はそう言ってまた「魔獣」の元に戻り、防衛を再開した。


そして暫くたって相手の傾向が分かってきた。

「やはり、ある程度此方の場所が分かっているけど、百発百中って訳ではないみたいだな」


俺は腕で攻撃をいなしながら考える。


正直なところ『アームスティック』の耐久値が後どれほどか分かっていない。


しかしもうすぐ壊れる。それは分かってる。


俺は考える。


こんな時、戦略ゲームだったらどうするだろう。


こんな時に戦略ゲームを持ち出すのもどうかと思うんだけど。


「戦略ゲーム歴20年舐めんなよ」


俺は戦略ゲームなら右に出るものは2〜3人くらいだった。(学生の頃、家でひたすらやっていた)


「『閃光弾』」


光で「魔獣」の目を欺いた。


「今のうちに……」


早速俺はアカリに作戦をつたえた。


「分かりました。それで必ず倒せるんですね?」


すぐにに分かってくれた。流石こっちの人間。


「ああ。ぬかりはない。」


俺はすぐさま「魔獣」に取り掛かり、攻撃を加え、注意を引く。


勿論反撃がやって来る。


俺はまた腕で防ぐ。


俺の読みが正しければ、後何発かで……


ガン!


壊れた。


それじゃ……


「今だ! 行け!」


「はい!『腐敗の斬撃』!」


なるほど。さすがはアカリさんだ。


『俺の作戦はこうだ。 まず隊長が攻撃して装甲に傷をつけてくれ。一箇所でいい。そうしたら俺が電撃波で核を撃ち抜く。俺の腕で決まるが、どうか信じてほしい』


「魔獣」の装甲が一部分剥がれ、肌が見えてきた。


「よし。今度は俺の番だ」


俺は指を銃の形にする。


最大出力……一点集中……チャージ……


1mmでもズレたら効果はほぼ無い。

プレッシャーが押し寄せる。


「これで……決める……」


狙いを定めて……チャージ完了!


「『雷の弾丸』ッッ! いっけええぇぇぇぇえっっ!!」


『落雷』の雷を一点に収めて圧縮して打ち込んだ。


それはさながらレーザーの様であった。


そしてそのレーザーは「魔獣」の体を撃ち抜いた。


そして、核を貫く。

そんな感じがした。


動力源を失った「魔獣」は最後の足掻きを見せるも、それは無駄であった。


そして「魔獣」は、今度こそ二度と動かなくなった。


「やったぞぉぉぉぉぉぉお‼︎‼︎‼︎‼︎!」


珍しく大声でを出してしまった。


柄でも無い……


まさにこれは『必殺技』だな。


「お疲れ様でした……貴方が居ないと今頃どうなっていたか……」


「いや、隊長の協力あってこその勝利だ。ありがとう。そして、お疲れ様でした」


こうして、森林における激闘は幕を降ろした。

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バカしかいない異世界で最強軍師になってみた 鉄道の人 @tetsudo-hokuetsu681

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