四節 「未来の形」
二十年後。
僕は四十五歳になっていた。
「しおり、美月。着いたよ」
「ふわぁー、着いたの?」
「お母さん寝てたの?」
「ついうとうとしちゃって」
「少し遠かったからね」
「お父さんはお母さんに甘いなあ」
僕たちは星がよく見えると有名な長野に来ていた。
満天の星空の中、降る雪はさぞ美しいだろうと思ったのだ。
僕はあの時の約束を忘れていない。
美月と別れてから数年後、僕は本当に大金を手に入れた。
でもお金に惑わされず、自分を見失わなかった。
それは信じるものが確かに僕の中にあったからだ。
「星を見に来たんじゃなくて、雪を見に来たんだよね?」
美月が僕の隣に来て話しかけてきた。
「うん、そうだよ」
「あの時の約束覚えてくれていたんだ」
「当り前じゃないか」
僕が笑うと、彼女は泣き出した。
「こんな未来が来るなんて、あの時は想像できなかった。お父さんと一緒に居られて本当によかった」
雪がひらりと舞い落ちた。
「あっ、雪」
「本当だ。お母さんにも教えてくるね」
彼女はもう泣き止んでいた。
美しく強さを感じる雪を見ながら、僕のもとに駆け寄ってくるしおりと美月をこれからも大切に守ろうと誓ったのだった。
雪のようなあなた 桃口 優/愛を疑わない者 @momoguti
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