各話裏解説・第二部

第二部第1話「イノセント・ワールド」


フィールのプレイヤーのオーダーは「サカロスの教えを街の人々に普及したい」というものでした。


何故にサカロス、というのは少々理由がありまして。


このキャンペーンを開催する前に、ソードワールドを体験してもらおうということでお試しの卓を立てていたのですが、そちらでは「ソード・ワールド2.0」を使用していました。


その時に作成した「サカロスを信仰する酔いどれエルフ」がフィールの原案となっていたのでが、キャンペーン開始時に「ソードワールド2.5」を使用するにあたって、2.5にはサカロスが採用されていなかったのです。


そのため信仰対象は月の女神シーンになっていたのですが、最後はこれを繋ぎ合わせたいということになりまして、


シナリオの結末ではフィールが布教活動のためパーティーを離脱する、というゴールを念頭に置いたうえで


別大陸からの移住者コミュニティや、偽りの宗教活動で私欲を貪る悪党の討伐といった要素でシナリオを構築していきました。


教団の内部崩壊や金瞳の魔女との出会いなど、物語傾向としては重くなっていく様子が増えているのですが、


セッション時に一番盛り上がったのは


「教団に対する陽動として、バル=カソスとシガレット=カルカンスキーが魔動バイクで暴走族を演じる」シーンの表現をしていた時だったような気がします。


TRPGって、そんなものだよね。


ところで、フィールの離脱をきちんと物語の中に組み込もう、ということでそれは一定割合成功したのですが、


実は物語の本筋としてはスノウ=フェリアの顔見せというだけであまり進んでいません。


このツケが後々まで響き、結果的に第三部が一回増えました。月間で3本のシナリオを書くのは、結構大変でした。



第二部第2話「女の形をした刃」


今回はセルゲイ=ゲラシモアを中心に据えています。オーダーは「キルケー=ランカスターと悪いオトナのやり取りを交わしたい」というものでした。


今回から、物語のメインストリームが「聖戦士たちと、彼らが使っていた特別な武器」となることは決めており、その中心としてイオーレ=ナゼルというヒロイン候補を登場させました。


イオは生意気で礼儀知らずだが、快活で天真爛漫、というキーワードを元に描写を行いました。プレイヤーの価値観などで彼女への評価の好悪に差が出ることは、意図して行っています。これはスノウ=フェリアやクリスティーナ=コーサルに関しても同様です。


セルゲイのプレイヤーとはセッション中でも大人の会話を繰り広げた思い出があります。でも「うるせーババァ」の強さの前に、ほとんどのディテールは消え去ってしまいました。


6~7レベルの4人パーティーに助っ人NPC(イオ)までいて、9レベルのドレイクバロンに敗北するのは想定していませんでした。原因は、「ヒーラー・パルフェタが2ラウンド連続で、回復に1ゾロを振って失敗」です。


ソードワールドはシステム上、クリティカル大回転と1ゾロには勝てないんです。


単発セッションなら「ダイスには勝てないね!」とネタにしつつバッドエンドを演出するのも、ゲームマスターとプレイヤーの信頼関係の間でうまく処理することも出来るんですが、


今回は長期キャンペーンなので、「ざんねん!きみたちのぼうけんはここでおわってしまった!」とはならないのが人の情です。ニンジョー。


というわけで唐突に、アドリブに近い形で登場させたのがディード=スレインです。


ディードの正体が1-4「旧世界より」で登場したレイラ伯爵夫人の夫であることは一瞬で見抜かれ、しかもレイラとの歪んだ関係を是正するように説教までされてしまいました。


GM「おおい、ついさっき、お前らの命を救ってやったよなあ?」

PL「描写の都合上、アストを追い払ったのはイオちゃんなので関係ないです!」


この夫婦の関係性は、将来互いに殺し合うことも考慮に入れて設定されていましたが、プレイヤーの反応を見て軌道修正することにしました。


まあ、結局殺しちゃうんだけどね。GMは外道だからね。



第二部第3話「魔女追慕」


タイトルの由来は合唱曲の題名から。


このあたりからGMが自分の好みを隠さなくなってきました。


シガレットのプレイヤーからのオーダーは「生き別れの恋人と再会してカッコ良くハードボイルドに別れるシナリオ」です。


で、出力されたシナリオは「ヒロインは閉鎖された社会で理不尽な境遇に置かれながら、救おうとするともっと酷い悲劇が起こることが予想される」という陰惨なものです。


「メアリーはシガレットの腕の中で死亡、村は焼かれて見捨てられる」

「魔女スノウとアルショニア騎士団が衝突して騎士団は壊滅、政治的失点の挽回のためメアリーは見捨てられる」

「メアリーはスケープゴートとして騎士団に殺害され、怒りのシガレットはアルショニアと全面対決」

「シガレットとスノウは妥協点を見つけられず対決、決闘になりシガレットは勝てないがメアリーが身代わりになって死亡」


など、様々な(酷い)パターンを想定していました。


シガレットは流れに身を任せるつもりだったかもしれませんが、セルゲイのプレイヤーがとても頑張り、上記に挙げた候補よりはかなりマイルドなエンディングに誘導されました。


プレイヤーの努力によって提案される展開は、なるべく叶えるようにした方が全体的な満足度が高くなると考えています。


ゲームマスターも参加者の1人ではありますが、プレイヤーと対立することなく、互いに妥協点を見つけて落としどころを探していく、という方法はTRPGの楽しいポイントの1つだと思っています。


また、戦闘の敵を弱くしています。10レベルとはいえラグナカング1体だけではこのクラスのパーティーにはさしたる脅威足りえません。これは「物語でのストレスを戦闘で解消する」ことを狙いとしています。それまで苦労した分、クライマックス戦闘では気持ちよく勝ってもらおうと。


この後も登場する魔女スノウ=フェリアは「敵か味方か良くわからない」「強すぎる舞台装置」としての役割を与えられています。ルーヴの担当プレイヤーは彼女に好印象を持ち、それはラストのルート分岐にも影響していきます。



第二部第4話「出来損ないの英雄」


ドラコの担当プレイヤーのオーダーは「アンデッド化した肉親との対決」でした。


物語としては第三の勢力の可視化と、キャンペーンの中核を走る伏線(はじまりの剣ルミエルのロスト)の提示がメインとなります。


今回は島の探索パート時にボードゲームの「カタン」のコンポーネントを利用しました。裏返した数字チップと資源タイルをシャッフルし、数字とタイルの組み合わせでイベントが起こっていく、という手法を取りました。


シナリオが次のステップに進む条件は「鉄の資源タイル全てと、赤い数字チップ1つのイベントを回収すること」としており、ある程度プレイヤー側のリソースが減った状態で戦うことを想定していました。


が、ドラコのプレイヤーは聡明ですぐに法則を見破り、ほとんど最短距離で突破されてしまいました。うーむ。


プレイヤー側が100%のリソースを使える状態だと、やや戦闘バランスがヌルいと感じたためディード=スレインを無理やり離脱させて調整しましたが、それでもプレイヤー側の戦力は十分あり、本来はバッファ役のドラコ=マーティンが攻撃魔法でクエルヴを倒せるほど余裕がありました。


が、ほとんどGMの負け惜しみで放ったシモンの《ペトロ・クラウド》で6ゾロが発生し、前衛陣は石化してしまいます。どうするサフラン!


蛮族たちと正面から対決すると勝てないため、GMから「適当に説得すれば彼らは撤退するから何とかしてね」とサフランのプレイヤーに伝えたつもりでしたが、サフランのプレイヤーは半ばパニックに陥ってしまい、上手く台詞を導き出せず。


他のプレイヤーや、ゲームマスターも助言の上、本文のような形で穏便に済ませることになりました。サフランのプレイヤーは「もうちょっと落ち着いていれば違ったことも言えたのに、悔しかったなぁ」と後に振り返っていた記憶があります。


でもまあ、TRPGの物語って卓の全員で作り出すものなので、そういうこともありますよね。




第二部最終話「遥か雲路の果て」


物語としては起承転結の「承」が終わり「転」となるタイミングです。


イオの死と復活と記憶喪失、スノウの裏切り、ヴィオラの脱落はシナリオ内で決まっていました。ディード(シン)のみ、共に脱出して生存またはプレイヤーを庇って脱落、という選択が有りうる想定でいました。


ゲーム部分としてはイオ、ディード、ヴィオラ、スノウの4人のうちフェロー同行者を2名選び、その組み合わせによって謎解きや探索部分のヒントや難易度が変わり、複数のイベントを順にクリアしていく形でした。プレイヤーが選んだのはイオとスノウでした。


スノウのフェロー行動表は、技能構成を隠蔽する意味で達成値が必要な行動を記入しておらず、それが却ってプレイヤーサイドの興味を惹いたようです。


スノウことオルエンが裏切るイベントは、ある程度はプレイヤーたちの頭の中にあったようです。怪しすぎるもんね。GM「飛空艇が故障中で…」PL「故障なわけないんだよなぁ」


ただ、セッション中でヴィオラとの一騎討ちイベントの表現時「聖剣を抜いたか…クラウゼの足手まといが、偉くなったものね」の台詞を発した時に数名のプレイヤーが「あ、コイツ聖戦士の生き残りか!」と驚いた表情を見せてくれた(気がする)のはちょっと楽しかったです。


今回の参加者は自分含め7名で、普段であれば2卓に分けるのですが、今回は物語の転換点ということもあり、6名1卓で進行しました。


無印ソードワールド時代は、6名パーティーは普通の感覚でしたが、ソードワールド2.5の6名パーティーは強すぎてバランス取るのが難しいですね。


負けたらディードを犠牲にして脱出という展開でいいか、ということで結構思い切ってたくさんのエネミーを出現させたつもりでした。


プレイヤーサイドが8~9レベルなのに対して11レベルのレイルウェイカノン、10レベルのドレイクバロン、11レベルのディアボロルテナント、それに加えて倒しても無限に沸くモブ増援といった要素があってなお、順当に撃破されました。


そして第三部へ。ここまでの流れは一部終了時くらいに既に書き上げており、第三部でどのくらいGMの好みを出すかどうかは、2-3「魔女追慕」や今回のような陰惨な展開が含まれるシナリオへの反応を見て決めるつもりでしたが、さほど拒否反応が確認できなかったこともあり、GMはどんどん自重しなくなります。


第三部へ続く

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ソードワールド2.5キャンペーン 黒い月と星の雪を巡りて えるしぃ @elelsy

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