各話裏解説・第一部

第一部第1話「聖戦士の詩」


タイトル由来は特にありません。12人の聖戦士にまつわる物語を展開する予定でいたくらいでしょうか。


このキャンペーンには、強く影響を受けた過去の作品が3つあります。


任天堂より発売されたSFCゲーム「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」


角川スニーカー文庫より発売された、「ルナル・サーガ」(著者はグループSNEの友野詳)


早川SF文庫より発売された、「エルリック・サーガ」(著者はマイケル・ムアコック。1巻のみ、グループSNEの安田均社長が翻訳)


まあ聖戦士の武器などは、あまりに直接的な引用なのですぐネタバレするかなと思いきや、意外と知っているプレイヤーは少数でした。世代間の前提知識の違いを感じた次第です。


ハーヴェス王国から物語をスタートさせたのも、当時読んでいたリプレイ「水の都の夢見る勇者」(富士見書房、河端ジュン一著)の影響で何となく決めただけで、この時点でハーヴェス王国のクーデターといった話は考えていません。


最序盤はキャンペーンの進行システム(※)を整える方に意識が行っていて、シナリオの中身はさほど考えていなかったのが実情です。


(※原則として月2回開催、各部5話構成、3ヵ月に1回はえるしぃがプレイヤーの会を設ける、2卓立てる前提で参加者を振り分け、別卓のゲームマスターは取得経験点の面で少し優遇、メインの物語はセッション終了後にあらすじを作成して共有など)


決めていたのは、聖戦士の碑文。


「魔動機師オルエン」が現代でも生きていること、はじまりの剣ルミエルに何らかの異常が発生していることまでは想定していました。


シナリオとしてはダンジョンアタックでした。どう見ても動き出しそうなガーゴイルを警戒しながら進んだらドアイミテーターに背後から不意打ちを受けたり、2~3レベルでは避けられないレベルの吊り天井の罠に引っ掛かり押しつぶされそうになるも機械トラブルで罠が作動しきらず無事で済んだりなど、古典的(※)な手法を使いました。


(※「トラップ・コレクション」(富士見ドラゴンブック、安田均著)は30年以上前の作品ですが、名著だと思います)



第一部第2話「緋色の魔の手」


タイトル由来は、この回から長くプレイヤーキャラクターのライバルとなるアストの外見的特徴から。


このデザインと名前でピンと来る人とはお友達になれそうです。


今回はいわゆる負けイベント戦です。ソードワールドというシステムの特徴上、プレイヤーキャラクターの装備や特技が充実してくるほど、負けが前提の戦闘を組むのは難しくなると考えていたため、序盤に持ってきました。


もちろん負けても物語はつつがなく進行する予定でした。


当時のシナリオを開くと「35点以上のダメージを与えるか、4ラウンドが経過すると撤退。戦士としての彼女を侮辱すると、PCが全滅するまで戦う」と書いてありますが…まあ多分当時の私が何とかするつもりだったのでしょう。


シナリオとしては、ハック&スラッシュというタイプでしょうか。隠れ里に潜入して蛮族を各個撃破しながら村人を救出し、イベントが進行するという形を取っていました。


3レベルの3人パーティーで6レベルのドレイクと戦うことは、それに特化したビルドでパーティーを組まない限り無謀な戦いとなる想定です。しかしプレイヤーサイドのダイス出目が良く、思ったよりは善戦になりました。


敗北イベントとは難しいもので、ゲームマスター側から押し付けすぎるとプレイヤーの満足度が下がるし、プレイヤー側がカタルシスを感じる展開にしようとしても、このキャンペーンの進行システム上「負けたメンバーと、再戦して勝ったメンバーは異なることがほとんど」のため、効果も微妙だと、振り返って感じます。


これらの反省の結果、負けイベント戦は今後しない方針になります。


しかし想定外の事象によりプレイヤーサイドはこの他に2回の敗北を喫してしまいます。(2-2「女の形をした刃」及び4-3「偽りの太陽に祈りを」)


第一部 第一部第3話「聖剣の護り手」


プレイヤーキャラクターのひとり、ライエル=クラージュの設定を活かして制作したものです。


ライエルは開始当初から特技「二刀流」を取得した複数回攻撃のファイターを目指していましたが、命中率の問題から5レベルまでは片手剣+盾というスタイルで戦闘していました。


師匠ポジションにあたるNPCの設定があったので、ヴィオラ=カルティを今後のストーリーにも絡めることを前提に、「ライエルが二刀流を会得するまでの物語」という流れになるように、物語を膨らませています。


このキャンペーンにおいては、当時11人いたプレイヤー全員に「キャラクターの設定を活かしたシナリオを、出来れば全員1回はやりたいと考えています。適宜打ち合わせしましょう」と宣言していました。


自らが創作したキャラクターが物語の中で一定の役割を果たし、自分の分身たるキャラクターがカッコ良く活躍することを楽しむのが、TRPGの面白さの一部であることは、多くの人が同意するところだと思います。


今回は長期キャンペーンのため、


「キャラクターの設定が物語に組み込まれること」


「キャラクターの数値的ではない成長を表現すること」


この2点を念頭において、キャラクターのためのシナリオを作っていきました。


なるべく不公平感が出ないように、「今回は誰のためのシナリオである」ことは事前に告知し、全員にその機会を与えることをあらかじめ宣言していました。


今回のシナリオは、全員に向けたプレゼンテーションの場でもありました。



第一部第4話「旧世界より」


たくさんのNPCを設定した回でした。実はあらすじに出ていないNPCも含めると20人近い演技描写をした記憶があります。


また、この回の直前に、パルフェタ=ムールのプレイヤーに対して


「あなたは聖戦士の末裔ということにします。あんまり多くいても困るので、このパーティーではあなただけが聖戦士に連なる直系になる予定です。それを前提に設定を組んでください」と伝えました。これが活かされるのはもう少し先(※)です。


(※)3-2「白日と青月」でこの伏線は回収されます。


プレイヤーたちの護衛対象であったレイラ=シャイターン伯爵夫人は「まともな貴族」として描写していた一方で、冒険者の視点とは相容れない点も多く、PC側と対立軸がある構造でしたが、一部のプレイヤーに特に人気を博したため、どこかで再登場させる想定となりました。


NPCの活用というものはなかなか難しいものですが、このキャンペーンにおいては


プレイヤーサイドの提案がNPCの結末に影響を与えたこと、


NPCの言動がプレイヤーサイドの物語選択に影響を与えたこと、


その両方のケースが出現したため、双方向性の物語であるTRPGにとって好ましい形になったなと感じています。


ゲームシステム的に言うと、本物と偽物を見分けるために使用された魔法「ディテクト・フェイス」は「抵抗:消滅」なのですが、うまい使い方だと率直に感じたために効果を発揮することにしました。


戦闘にはさほど使えない魔法を、物語の中で役割を与えられるように適切に使用する機会が好きで、多少甘いマスタリングをしたくなるのが個人的人情ですね。


大体このあたりの頃に、第二部終了までの大まかな流れを決定したため、ある程度キャンペーン全体の情報を流すことにしていきました。



第一部最終話「しろがねの姫を討て」


第一部最終話。1度敗れた相手と再戦して打ち破る、王道ストーリーです。


このキャンペーンは、「TRPGが初めて」「ソードワールドは初めて」「ハイ・ファンタジーの世界は初めて」というプレイヤーがいらしたので、特に第一部の間は理解しやすい王道の物語展開を心がけていました。


私自身はダークファンタジーが好きなので、第三部から本気を出すと決めていました。


キャンペーンの期間を1年間と定め、月2回の稼働で全24回。


そのうち、4回は自身がプレイヤーとして参加することにしたため、この物語は全20回。


起承転結を意識して、


第一部が「起」


第二部が「承」


第三部が「転」


最終部が「結」


という想定のもとで、各部5回ずつ。


第三部だけ6話構成になった理由は第二部にあるので、そちらで言及します。


最終戦闘ですが、既にとても硬かったドラコ=マーティンに対して、アンドロスコルピオが銃攻撃をすることで崩してやろう、というプランを立てていたのですが、


シガレット=カルカンスキーの「スモーク・ボム」で射線が通らなくなり、ゲームマスターの目論見があっさり瓦解したのを覚えています。


第二部からは、各プレイヤーのオーダーに沿ったシナリオを展開していくことにしていました。


既にフィールのプレイヤーがプライベートの理由で次回を最後にキャンペーンを離脱することが決まっており、最初は彼女と打ち合わせをすることにしました。


第二部へ続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る