電車が緊急停車したら、俺の恋愛が急発進したんだが、、、             

ブレックファースト

電車が緊急停車したら、俺の恋が急発車したんだが

首都圏の主要都市を結ぶJR東海道線。


 神奈川県の海沿いに位置する藤沢駅のホームで、俺はターゲット右手に持ちながら、朝のひんやりとした空気を感じながら電車を待つ。


寝坊してしまったのだろうか。走ってホームに降りてきて、額の汗をチェック柄のハンカチで拭き取るスーツを着た中年男性。それを見て少し男性との距離を取った女子高生。その男性も頑張っているのだろから、もう少し優しくしてやってくれ女子高校生よ。と思ったりするが、これが当たり前。何も普段と変わらない風景である。


4分ぐらい経っただろうか、シルバーの車体にオレンジと緑のラインを身に纏った首都圏に住んでいる人ならイメージできるであろう車両がホームに入ってきた。座れるかもしれないと1mmぐらいの希望を持って、目を凝らして電車の中の混雑具合を見る。


満員。


でもこれはいつものことであって、別に残念に思うことはない。

 俺、坂本浩介の地元は神奈川県の海の近くに位置する藤沢市だ。

そして俺が通っている高校は、通学時間が1時間半もかかる。

東京都港区に位置する私立照星高校。自由、自主性を謳っていて、校則はない。強いて言うとすれば法律を破るな。本当にこれだけなのだ。どこのヤンキー高だよと初めて校則を見た時に思ったが、ここは頭がいい。偏差値は70近くある。

そんなギャップに惹かれて、猛勉強の末になんとか滑り込んだのが2年前。


やっぱり先生もいい人ばかりだし、いい場所に立ってるから治安もすごくいいのだが1つ問題があった。それは陽キャラ率の高さだ。その数値は驚異の90%越え。髪を茶髪に染めているクラスメイト、お化粧バッチリのjkばかりだ。


元々静かな性格の俺はどうなったと思う?語るのはなかなか辛いので予想してくれ。1+1より簡単に答えが求められると思う。



そんな俺には、めでたく スマホとお友達の生活が始まった。



藤沢駅から学校の最寄り駅品川駅までは、一時間ちょっとかかる。俺はギリギリで高校に滑り込んだ身なので授業についていくためには、隙間時間の勉強は必須になる。


でも隙間時間にできるものは単語練習ぐらいなので、今日も今日とてターゲットをめぐる手を休めることはしない。もう少しで1500も卒業だなと、手の中にあるボロボロになった本を見ている。


 電車は次の停車駅の戸塚駅に到着した。

電車内の混雑はマシになるどころか、ホームから人を飲み込んで、車内はいわゆる超満員と言える状態になっていく。


誰の物かもわからない革製の硬いバックに押されてドアの近くから中の方まで来てしまう。ドアの近くなら楽に電車から降りることが出来るのにと。ため息を吐きたくなったが、おばあちゃんから

「ため息を吐くと幸せが逃げてしまうよ。」とありがたい言葉を聞いたのを思い出し、ギリギリで飲み込んだ。そんな事を教えてくれたおばあちゃんも3年前にはこの世を去ってしまった。おばあちゃん子だった俺は相当泣いた。迷った時はおばあちゃんの教えを頭に浮かべていたりもする。


そんな超満員の電車は、戸塚駅を出て8分程走っただろう。変わらない日常が一番の幸せ。それはおばあちゃんが死んだ時に初めて感じた感情。絶対に忘れない感情だ。





そんな、日常は5秒後に失われた。



「電車が緊急停車いたします。

お近くの手すり、つり革におつかまりください。電車急停車します。」


車掌さんの早口なアナウンスを聞いた後には、俺の体は傾きはじめていた。


「わっ、、 ヤバい」

思わず口に出してしまうぐらい、焦っている。これは下手したら転んでしまうだろう。

ターゲットをめくる右手を素早く移動させて、頭より少し上の位置にあるつり革にしがみつこうとする。


よし!掴んだ。


と思った。完全に油断していた。停車した時の戻る方の反動を受け体は、イナバウアーみたいな感じで仰け反ってしまった。これは近くの人に迷惑をかけてしまうな。もう転ぶ事は避けられなそうだ。どう謝るかに思考をシフトさせて、来るであろう衝撃を待つ。

さぁ 来い。  準備は整ってるぞ!




「ぱふぅ」


へぇ?何だこれ。

クッションみたいな物が俺の頭を優しく包んでいる。あぁ柔らかい。そして意外と弾力もあって、、、、、、、、、、、、、、、、、




あ  これは、、まずい


全てを理解した俺は、恐る恐る顔を持ち上げて上を見る。


そこには絶世の美少女がいた。


場違いな感情だとは思っていたが、彼女は美しい。アイドルのようなキラキラとした可愛さじゃなくて、品のある美しさだ。


くっきりとした綺麗な二重、しなやか伸びているまつ毛。品を感じさせる赤い唇。そして誰も足を踏み入れてない雪原のような。白くて、綺麗な肌をもっている。そして綺麗なロング髪の上には年相応の緑色のリボン。そして現在進行形で俺の顔を受け止めている豊かな胸。あまり女子に興味のない俺でも分かるパーフェクトだ。


ほんの2秒間に起こった出来事に低スペックであろう俺の脳はキャパオーバーだ。体全体の力が抜けて、、、、、、、、あぁ倒れそう。


「おっと  大丈夫ですか?」

そう言いつつ彼女は、俺の軽いとは言えないであろう体を丁寧に持ち上げて、真っ直ぐに起き上がらせてくれる。なんだ、この人はナイチンゲールかなんかだろうか?


「えーっと そんなに見つめられると恥ずかしいというか、なんというかです。ということなので、今すぐどいてくれると助かります」


「すみませんでした」

人生で一番気持ちのこもった謝罪をした。これで許してくれというのはずうずうしいのかもしれないが、今の俺にはこれ以外、手はない。数秒待っても返事は返ってこない。だよなー だって知らない男の顔が胸に飛び込んできたんだ。それだけで充分怖いし、嫌な気分になる。やっぱりお金とか必要なのかもしれないな。とりあえずもう一度謝ろう。


「すみま、」


「ありがとうございました」


へぇ? ありがとうございました?すごく小さかったけど確かに、ありがとうございましたって言ったよね。


俺の頭の中は、お花畑に変わっていて、何も考えられない。とりあえず、長年で培ってきたテンプレ返しで切り抜けよう。


「どういたしまして」


あれ、何この会話おかしい。

絶対におかしいだろ。相手もウンウン頷いてるし。まぁ いっか。許して貰えたぽいし。


この後、2人は反対側を向いて品川駅まで、乗っていた。


「品川〜 品川〜

お忘れ物なさいませんようにお手回り品ご確認ください」



ゾロゾロとスーツをきたホームに降りてきたサラリーマンの中には、



      2人もいた。






ブレックファーストです。

カクヨム甲子園出場作品として書いています。

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電車が緊急停車したら、俺の恋愛が急発進したんだが、、、              ブレックファースト @00709018

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