第2話
「・・・お・・・き・・・r・・・・・・おき・・・・・r・・・・・・・起きろ!」
耳元で叫ばれながらたたき起こされて目を覚ますと意識が朦朧としているせいでまともに立てず、まるでウオッカを一気飲みして外に放り出されたような足のふらつき方をしていた。
(あー、ヘリが攻撃されて墜ちたのか)
やっと、意識を失うまでの状況を思い出すと意識が幾らかはっきりし始めると周囲へ目を向けられるようになった。
燃え盛る輸送ヘリ
そこらに散らばっているどこの部位か分からない肉片と血
絶え間ない銃声と叫び
死ぬ直前まで「母さん」とか「父さん」とかを求めて手を伸ばそうとしている負傷者
目の前に見える丘から聞こえる銃声と罵声に近い雄叫び
銃を目の前にして泣きじゃくる隊員
ヤケクソで撃ちまくり、弾切れに気が付けない隊員
どうにか周りを鼓舞して状況を立て直そうとする隊員
時折、近くで着弾するロケット弾
冷静に実況している場合ではなかったが、身体を動かすことが出来ず、ただ意識だけがはっきりとしてきていた。
「起きろ!しっかりしろ!」
同期が必死に俺の胸倉を掴んで揺らして、やっと身体が起きた。
「やっと、起きたか。状況は最悪中の最悪だ。無線機で救難信号を発信しているが到着予定時刻は最低でも30分以上だそうだ。敵は確認できているだけで30名以上、重装備、我々は現在員は25名、内4名死亡、2名重症、15名軽傷、お前と残り3名のみ無傷だ。装備は言わなくても分かるな」
説明の時点でかなり不利な状況になっており、小銃が最大の火器という時点で弾幕を張れずロケットランチャーの発射を牽制すらできない。
「現時点でここの最先任者はお前だ」
語学幹部という都合上で階級がパイロットを除く同期たちがまだ少尉という中で中尉である俺、そして察するに
初期幹部課程では一応、指揮と統率の一環でシュミレーターで小隊を動かした程度のことしかやっていない。
だが、そう言ってられないし、このまま只々殺されることを待つのはごめんだ。
「明野少尉、積載物の中身を確認してつけるものがあれば使用しろ!責任問題は気にするな。そして射撃を単発のみとし、弾薬の節約に努めよ。ただし、惜しみすぎるな!」
「了解!」
ホルスターから拳銃を出して、等しく分けられた4方向の戦力で少なそうなところに敵に向けながらも加勢し、戦士した隊員から64式小銃と弾薬を拝借してRPGをなるべく黙らせる努力をした。
やはり、64式小銃の扱いにくさと日本人向きに作られてしまったことが災いし、嘲笑うかのように次々と撃ち込まれるロケット弾と銃弾が我々を疲弊されていった。
発砲時にスライドが開き切って機関部が外部に晒される面積が大きく、そこに砂がよく入ってしまうせいで、送弾不良を高確率で引き起こすことと、低発射レートも相まって牽制することが難しい。
ダダダ、ダダダ、ダダダとリズムを刻むような発砲音が聞こえ、相手の勢いが少し弱まった。
「貨物からM240を4丁と7.62mm弾のアモカンが8個、交換用銃身が8本と携行キット、M72 LAWが6本、あとは食料と医療品だ。
なんでこんな貨物なのかは知りたいが、今はとりあえず30分持たせることに集中しよう。
勝手使うことは怒られるだろうが、まあ状況が状況だから許してくれるだろう。
ただ、弾はやはり増えても心許ないのは変わらない。
アモカン8つと言っても1600発しかないし、軽機関銃使うからすぐになくなる。
M72は集中しているエリアに1発お返しとして撃ち込もうか。
「M72の使い方は分かるか?」
「すまない」
この一言だけで察したが、やはり我が国の兵器体系は貧弱すぎる。
「俺が兵器マニアで良かったな」
冗談を言って、携行用のカバーを外して後端を最大まで引っ張って照星と照門を立てて、あとは安全装置を外して撃つだけの状態にして渡した。
「あとは照門の近くにある四角形やつを引っ張って、黒いゴム部分を押すだけだ。あと、バックブラストは左右30°と後ろ40mだから注意しろよ」
「あとは分かるがやはり1,000mしかないのはキツいぞ。やるだけやってくる」
そう、当たらなくても良いのだ。
あくまで、向こうにこっちは武器があるぞという脅しをするためにやっている。
軽機関銃だってそのために撃っているし、当たればラッキー程度の世界だからな。
これで少しは状況が打開できればと思っていた。
しかし、明野が撃とうとしたその瞬間に私、いや我々は何が起きたかが理解出来なかった。
続く
平凡な一日 @alphadead
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